第9話 ゲイの見分け方とは
温泉旅行から戻った時、遥はまだぼんやりとしていた。彼の隣を歩いている理人は、まるで逆のように、まだ興奮している様子だった。
「初めての温泉はどうだ?」
理人は遥の肩に腕を置きながら、楽しげに問いかけた。
遥は唇を噛んで黙ったままだった。
理人はその沈黙を気にせず、肩に手を置いたまま歩き続ける。まるで食べ終わった猫のように、満足そうな姿。
「次はいつ行く?」
理人が軽く尋ねた。
遥は少し沈黙してから、軽く首を横に振った。今日の出来事をきちんと整理しない限り、また理人と一緒に温泉に行くわけがない。
「理人、あんたは自分が何をしているか、わかってる?」
遥が思い切って問いかけた。
「どうしたんだ?」
理人は平然と答えると、遥の顔を一瞬見つめ、その後、悪戯っぽく笑って遥の手を繋いだ。
「これがどうしたと言うの? 俺たちは親友だろ?」
**********
夜、遥はひとりでベッドに横たわり、深く考え込んでいた。
(これは一体何のノンケ特有の思考回路だ……?)
以前、遥がゲイでなかった頃にも、似たような話は耳にしたことがあった。しかし、そのときはまったく気にも留めなかった。
他の人がどう思おうと関係ない、自分は絶対友達とはそんなことしないと考えていた。
しかし、ゲイになった今、その事実を受け入れざるを得なかった。問題は、理人だ。
理人はあんなにゲイが嫌いなのに、どうしてこんなことができるのか?
それは単に、理人がピュアなノンケだから、全く気づいていないからなのか、それとも……まだ自覚していないゲイなのか?
長年の付き合いだけど、考え方の違いがあまりにも大きくて、遥は理人の行動をすべて理解することができなかった。考えれば考えるほど、遥は頭を布団に埋め、スマホを取り出し、Googleに頼ることにした。
検索を始めた遥は、すぐに似たような疑問を抱いている人たちを見つけた。
【好きなノンケの友達は○○をしてくれた! みんな分かってるよね!とても嬉しかったの、彼てもしかしてノンケ?】
それに対するコメントも多かった。
【こんにちは、もし彼はあなたがゲイであることを知っていれば、それは間違えなく誘惑してる。もしそうでなければ、多分向こうは何も考えていない。】
【はぁ?ノンケって言ってるけど、これ明らかにノンケだと装っているじゃん。ぶっちゃけ、お前とあいつの顔に一発入れてやりて。】
【どうだろうな、隠れゲイの可能性もあるかも。単に自分がゲイだと気づいていない可能性もある。ちょっと試したらどう?例えば、ゲイバーに誘って彼の反応を見るなど。】
【……ノンケ?何のかの間違いじゃない?】
遥はしばらく考え込んだ。
理人をゲイバーに連れて行くのは絶対に無理でしょう。遥自身も行きたくないし、まして理人をあんな場所に連れて行くなんて、どう考えてもおかしすぎる。
でも、他にもっと良い方法で試してみるのも悪くないかもしれない。例えば、最近公開された映画に誘ってみるとか。その映画には、互いに好意を抱いている二人の親友のゲイが登場するけど、最後一緒になれず、すれ違ってしまうというサブストーリーがある。
こういった物語り、理人がどのくらい受け入れられるのか、試してみる価値はありそうだ。理人が受け入れるかどうかは分からないけど。
理人がゲイのことが好きではないのは知っているけど、同性カップルに対してどんな反応を示すのか、実際に見たことがなかった。
その理由は簡単だった、出会ってからというもの、理人が関わった男性は、誰もかも理人に好意を寄せていたか、あるいは遥に好意を寄せていた。そのため、理人はそれらに対し嫌な気持ちでい続けていた。同性カップルも、理人には近づこうとしないから……
(明日、理人と映画を見に行こう。)
(もし理人がゲイだったら、もしかして僕は……)
遥は唇を軽く噛んで、スマホを閉じ、頭の上にかけていた布団を引き剥がした。すると、暗闇の中で、誰かが彼のことを見つめている気配を感じた。
遥は眉間にしわを寄せることなく、その顔を少し押しのけた。
「ここで驚かせるつもりだったのか?」
遥が冷静に尋ねた。
「驚かせるなんてするわけないだろ。お前、今夜ひとりで静かに過ごしたいって言ってたからな。そして、俺は気を使って、音を立てずに近くにいたんだぞ。」
理人は遥の手を握りしめ、にやりと笑って答えた。
そう、遥は今夜一人でベッドに寝ることになった。最近刺激が強すぎて、少し一人で静かにしたいと言ったから。
明日は週末で、健太と洋介はネットカフェに行って夜通しゲームをすると言っていたから、騒いでも他の人に迷惑をかけることはない。
「暗いところでスマホを見るのは良くないぞ、目に悪いから。もし見たいなら俺が電気をつけるようか?」
理人はからかうような口調を収めると、遥の手をしっかりと握った。温かさが伝わり、遥はその温もりに軽く返事した。
「ちょっと資料を調べたかっただけ、もう見ないよ。」
理人はどうやら満足したようで、遥のまぶたに手を置き、目元をマッサージしながらぶつぶつ言い始めた。
「お前も考えろよ。もし高齢者になって、人の顔が分けられなくなっつて、他の爺さんを俺だと思って家に連れて帰ったらどうすんだ?俺はあいつと喧嘩しに行くのか?そんな年寄り同士、よろしくないだろ。」
「……」
遥は一瞬黙った。
「認知症でもないから、顔を間違えたりしない。せいぜいあんたと、あんたの息子を間違えるくらいだ。」
理人は動きを止め、遥の頬をつねった。
「ふん~お前にそんな機会を与えるわけがない。」
さっきまでの優しい声が急に冷たくなった。
「俺と一緒に寝てないから、すぐでたらめな話をするんだな。いいだろ、今夜も俺と一緒に寝ろ。」
理人は手の動きを止め、身を起こすと顔を上げて言った。
遥が反対しようもなく、理人と一緒にシングルベッドで寝る羽目になった。
遥は再び慣れ親しんだ腕の中に抱かれ、すべてがいつも通りのように感じた。まるで、このベッドは最初から二人で寝るべきものだったかのように。
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