21話 ガスタン防衛戦・四
【キース】
「お前ら合わせろ!【身体強化】!」
目の前から剣を構えた男4人がこちらに向かって駆けてきやがる。
【身体強化】は身体能力を倍率で底上げするスキルでゼノバースともなると一般兵でも最低2倍は底上げしてくる。
けど関係ねぇ。
「お前らみてぇなど雑魚じゃ話になんねぇよ!格がちげぇなぁおぉい!」
魔力は婆ちゃんの回復で全部使っちまったがそんなことはお構いなしに駆ける。
正面から2人、左右に1人ずつ分かれて襲いかかってくる。
そりゃ悪手ってもんだ。
「おめえらみてえなカスがわざわざ数的不利を作るたぁ甘く見られたもんだなぁおい!」
「なっ!?」
左にいた敵に対して一瞬で近づき拳を繰り出す。
それに意表を突かれた敵は反応すらできずに心臓を破壊されて死ぬ。
そのままのスピードを維持して正面の2人と右にいたやつも秒殺する。
その場の安全を確保した俺はガキ共に近づく。
それに対して少しビクッと体を震わせるガキ共。
そりゃ、敵だと思ってた人間が近づいてきたら怖いよな……
「…ありがとうお兄ちゃん!ばぁばをなおしてくれて!かっこよかった!」
「お婆ちゃんを回復してくれてありがとうございます!」
「ばぁばをありがとう!かっこよかった!」
「お、おう。お前らが無事でよかったわ。とりあえず安全な場所があるかわかんねぇが、逃げれるか?」
「兄ちゃんはついてきてくれないの?一緒に行こうよ。」
「すまねぇな、兄ちゃんはちょっと無理っぽいんだわ。3人でちゃんといけるか?」
「そっか……はい!僕がしっかり2人を守ります!」
「よっしゃ!長男ならそうこなくちゃな!ほら、早く逃げろ。」
「バイバイお兄ちゃん!」
「かっこよかったよお兄ちゃん!」
「婆ちゃんと弟達は任せてください!」
そう言って手を振りながら去っていく3人と担がれた婆ちゃん。
それに苦笑しながら手を振りかえすがそんな空気をぶち壊すように耳障りな声が響く。
「貴様!何をしている!魔人共と話をしていたな!?しかも5人も遺体がありながら!何をしていた!」
そう話ながら近づいてきたのは斧を構えた巨漢と後ろには視界いっぱいの似たような斧を構えたやつら。
恐らく500はいるであろうそれは戦斧陣の奴らだろう。
「どうもこうもねぇよ。分かってんだろうが、早くかかってこいよ、ど雑魚共。」
「貴様ぁぁぁぁ!!!」
そう言って襲いかかってくる戦斧陣。
はっ、いいじゃねえか、こうなりゃとことんだ。
全部潰してやんよ、あのガキ共のためにも。
俺様の命に変えても、な。
【ハンス】
開戦して1時間が経った頃、状況は変化した。
「ハンス団長!ゼノバース軍とは真反対の方角に武王ゾイドが出現しました!今はうちの老兵達が抑えていますが、どうしましょう!」
「…そうくるか、分かった。私がいく、スルガ副団長。」
「はっ、なんでしょうか。」
「姫様と共に連携しゼノバースの奴らに対処しろ。それから急ぎ和人の元に連絡しろ。魔人の精鋭を使っても構わん。あいつの力が必要だ。」
「……分かりました、団長もご武運を。」
「お前もな。」
スルガに他の奴らの対応を任せて俺はゾイドのところに向かう。
あいつは人間の身でありながら魔人である俺相手に互角以上に渡り合うやつだ。
俺自身数々の修羅場は潜ってきたが、やつがどれほどの修羅場を潜ってきたか想像がつかない。
それでも俺が勝つ。
何をしても、俺は勝たなければならない。
ゼノバース軍がいる方角とは真反対の方角の街壁上に辿り着き、離れた荒野にやつは立っていた。
筋骨隆々な巨漢に額に目立つ古傷を負ったやつが武王ゾイドだ。
周りにはうちの老兵連中だったものが無惨に打ち果てている。
意識がある者は全くおらず、その最後の一人ももうすぐ生命活動を終えようとしている。
「がふっ……ハンス団長、わしらは、団長が来るまで耐え抜きましたぞ……あとは、頼みました……。」
「あぁ、しかと受け継いだ。あとは任せてゆっくり眠ってくれ。」
そうして最後の老兵が意識を失い、目の前からゾイドが歩み寄ってくる。
「久しいな、ハンスよ。ワシは待ちくたびれたぞ。待ちくたびれすぎて先程から額の傷が疼いてしゃあないわい。」
「武王ゾイド、今度こそ俺はお前の命を断ち切る。お前の命もここまでだ。」
「悲しいことを言うのぉハンスよぉ。悲しすぎて………殺したくなるじゃろうがい!!!」
そうして拳を構えて襲いくるゾイド。
それを躱してバックステップで距離を取ったがやつは気にせずそのまま地面を叩きつける。
それだけで周りの地面が陥没し土が宙を舞う。
相変わらずの馬鹿げた膂力にスピード、技に衰えはなく寧ろ前回よりも磨かれたそれはその男が未だ成長中であることを示している。
だが俺も成長している。
剣を構え近づき風魔法も駆使して全方位から斬りつける。
俺の風魔法は魔力のコントロールによってものを動かすことに特化させている。
だから剣のようなものだったらいくらでも自分の手で操るように扱える。
自身の剣で突き、振り下ろし、振り上げ、斬り返し、次々と斬撃を繰り出すがその度に拳に跳ね返される。
一進一退の勝負が続くが未だどちらにも衰えは見えない。
それどころか更にヒートアップしていきどんどんと加速していく。
そうして1時間が経過したころお互い示し合わせたかのように距離を取りギアを1段階上げる。
『幻想回帰・獣ノ戯』
俺の体から数々の獣の特徴が次々と現れる。
鳥の翼に肉食獣の牙に爪、虫の甲殻にとそれぞれの生物の強みをかき集めた姿へと生まれ変わり、それを見たやつは表情を獰猛な笑みへと変化させる。
「はっ!懐かしいものを見よったわい!悍ましい姿をしおってからに!」
「御託はいい、いくぞ。」
「お主はつまらんやつじゃのぉ。魔人に求めるのが間違いじゃな……『闘神の乱舞』」
俺が飛び出すと同時にゾイドは踊るように動き始める。
やつの巨体には全く似合わないその踊りは荒れ狂う嵐を思わせる。
しかしそれでいて今の俺の動きについて来れるのだからふざけた力だ。
拳が飛んできて翼を使い包むようにして力をいなす。
そうして空いた手で抉るように振るうがそれを舞い散る花のようにひらひらと躱すゾイド。
脚で蹴り飛ばすがその力をいなされて綺麗に着地され、今度は自分の番だと言わんばかりに独特なステップで拳と脚の連打を繰り出してくる。
それを翼で、手で、脚でいなしていく。
お互いが決定機を作り出せずにただただ時間だけが過ぎていく。
正直早く勝負を決めたいが、それを許してくれるような相手じゃない。
スルガ達を信じて、今は目の前のこいつに集中するべきだ。
まだ戦闘は始まったばかりなのだから。
☆☆☆☆☆
誕生日なんでね、あと筆が乗りまして。
本日1話目です。
21時にも投稿します。
それからタイトルとか紹介文変更しました。
旧「戦闘狂魔人ナ俺、人類ニ叛逆ス」です。
よろしくお願いします。
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