僕等にはエロスが足りない
お米うまい
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夏の海で『俺』が見たかった物を全力で挙げろというのなら、多分そんな感じの言葉の前に『美人』とか『女性』とか、そういう単語を付ければいい。
決してクラゲ塗れで人が居ない海を見たかった訳でも、今にも雨雲に隠されそうな癖に自己主張の激しい太陽が見えるという微妙な空模様が見たかった訳でもない。
流れ続ける汗に地球の温暖化は止まらない事を確信しながら、そういえば物価もぐんぐん上がっていくよね、なんて上がり繋がりでどうでもいい事を思い浮かべる。
(さて、そろそろ現実を直視しよう)
人っ子一人居ない、このクラゲだけが友達とか言えそうな浜辺で、『僕』は自分が見たかった物というか、それ以上の物に遭遇しています。
「ねえ、女の子の身体に興味無い?」
マッパです。
マッハの進化系とかじゃなくて素っ裸の女性です。
しかも、モザイク無しの映像だとか魔が差してやってしまった覗きとか、そんなレベルじゃなくて、明らかに僕を認識してモーション掛けてきている女性です。
ただ、問題が一つあります。
そう、この浜辺。
僕こと、無銘奈々氏むめいななしを除けば人っ子一人居ないんです。
目を凝らせば海にはゴミみたいに見えるクラゲ、浜辺に蟹っぽい何かが見える程度。
くどいかもしれませんが、『人』は居ないんです。
「もし私の事を本気で愛してくれるなら、何でもしてあげるし何してくれてもいいよ」
囁ささやく声の主を直視し、そのエロ過ぎ、もとい女性経験どころか最後に女性と話したのはいつだっけ、みたいなシャイボーイには眩し過ぎる身体に鼻血が噴出す。
けれど、そんな事よりも噴出した鼻血が掛かった女性の姿に、僕は逸らそうとしていた現実を目にしています。
……何か服とか下着じゃなくて、身体そのものがスケスケで鼻血が貫通する挙句――
一メートル程地面から浮いちゃってるという、どう考えても僕の知ってる人間の常識を超えた女性の姿を。
「その代わり、身体を頂戴」
どこか媚びを売るように微笑むその艶やかな笑顔と甘い声を、僕はズボンの下以外では素直に楽しむ事が出来ない。
その囁かれた言葉の意味が、血が抜けて冷静になりつつある僕の頭では理解出来てしまっていたから。
普段は格好付けていたい大学二年生、無銘奈々氏。
夏真っ盛りの怪談の季節。
どうやら僕は、気付かない内に、ホラーの押し売りにでも引っ掛かっていたらしいです。
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僕等にはエロスが足りない お米うまい @okazukure
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