第3話 ランの悩みと富豪のパーティー その①
「朝ご飯ができました故、早く起きてくださいませ?」
僕はそんな一言を耳元にダイレクトで囁かれ、少しくすぐったいせいで顔を布団の中に引っ込めた。
「あらら。そんなにわたくしの事が嫌いですの?ええ。いいでしょう。無理やりにでも起こして見せますわ。」
ベットの側に立つロングヘアーの女性。
毛先まで手入れの届いた紫色の髪は撫でたくなるようなほど綺麗に整っており、ベットの中からでもその女の子特有の良い香りが鼻の奥にやってくる。
そして、瞳の見えない瞑ったままの細い目は少し笑いを浮かべているように見えた。
「出てこないのであれば強行手段ですわ。」
彼女はそう言うと、ベットの布団を無理やり僕から引き剥がし、まだ眠たいままの僕の上半身を起こした。
まるで老人を労るように上半身を起こすと、目を擦る僕に「おはようですわ。」と耳元で呟く。
優しい言葉と吐息が掛かって少しむず痒い。
「まだ眠いよぉ…」
僕がそう言うと、彼女は手で口元を押さえて、少し笑いながら
「一瞬で目を覚まさせる方法がありますが…やってみますの?」
「んん…やって「むちゅ…」
完全に言い切る前に既に彼女の唇は僕の唇と触れていた。
「ん!?」
そして一瞬で目が覚める。
僕は、顔を赤くしながらも、そのまま20秒ほどその場で全く動けない状態のまま、口付けをしていると、急に、彼女は僕の唇を離した。
「すいませんの…まだ昨日のが残っていました故…もう一度させて貰いますわ。」
あ、これ拒否権とかない奴だ。
「んちゅ。」
今度は、彼女が身を乗り出して、僕のことをベットへと倒して口付けをする。
そして、枕に頭がつくと同時くらいに、唇の中に何かが侵入し始めた。
少し乾いた唇に、何かザラザラとした生暖かい感触が伝わる。
どうやらそれは舌のようだ。
そして彼女の舌は唇を舐めるだけではなく、僕の口内へと進軍。
ついには僕の舌に触れた。
「んん!!!!!んん!!!!!!」
朝のメタルガールズ支部には僕の少し羞恥を含めた悲鳴が轟いた。
「はぁ〜朝からなかなかお腹いっぱいですわ〜」
「ぼ、僕は…寸前まで搾り取られてシナシナだよぉ…」
朝ごはんを食べる僕は、目の前に座っている細目の少女と向かい合って彼女の作ったパンを口の中に放り込む。
彼女、エリナの朝ごはんは元から用意されていなかったようだ。
「エリナって…僕を食べるからって自分の朝食用意しなかったの…?」
僕は恐る恐る聞いてみる。
すると、
「もちろんですわよ。お腹いっぱいになるまで食べる予定でした故ね。」
とその細目の少女は俺を見ながら言った。
はは…どれもこれも計算作ってことか…
僕は頬を引き攣らせて朝食を口の中へと放り込む。
そして牛乳を喉の中に流した。
そしてそれを見た紫髪の少女は言う。
「最近はどうも牛乳だけでは味気なくて…今日はいっぱい飲まさせてもらいましたわ。」
と、なんの躊躇いもなく、その少女は口を押さえながら、高貴に笑った。
僕は頬を引き攣らせた。
「それじゃあ、しばらくは大丈夫かな…?」
僕が言うと、エリナは頷きつつ、「ええ。おかげさまで。」と返す。
そしてエリナはボソッと…しかし、僕には聞こえるくらいの声で、
「でも、上の口だけですわ…」と呟いた。
とりあえずは僕は一旦スルーして目の前のパンを食べ進める。
「結局、昨晩はキスしかされずに相手にされなかった故、わたくしの秘裂はあなたを欲して止みませんでしたわ」
…!!!!!
「そ、そうなんだね!!!!!そんなことよりも!!!ご、ご馳走様!!!おいしかったよ!!!あ!!!!エリナ大変!!!!もうちょっとでホームルームだよ!!!!!!!」
僕はあえてわざとらしく大きく声を張りながら言って見せた。
「ですがわたくしは、あなたとの性行が…」
「わ…わかったから!!!!と、とりあえず学校行かないと遅刻しちゃうよ!!!!!」
僕が言葉を遮り、出口の方へと指差すと、怒ったように少しだけ眉を中心に集めてぷくーっと頬を膨らませた。
くっそ可愛いいいいいイイイイイイイイイ!!!!!!!!!!!!!!
と、内心叫びながら、僕は、反対に座るエリナを立ち上がらせて、制服を着させたあと(もちろん更衣室で)、学校へと送ろうとした。
が、階段を登る所で、僕が彼女の背中を押していると急に、彼女が振り向いて、僕を抱きしめた。
「そういえば、今夜、私パーティーに行きますの。」
と、階段の段数の関係上、頭を両腕で囲まれながら、耳元で呟かれる。
「そ、そうなんだ!!!いってらっしゃい!!!」
本音をいえば、今ここで理性が保たれているのは本当に奇跡中の奇跡。
僕じゃなかったら今頃、即落ち2コマと同じような展開になっているハズ。
「それで…あなたを今夜独占させていただきますわ。」
「へ…?」
「それでは。」
すると、エリナは僕のおでこにキスをして、地上へと続く階段を登った。
ここで彼女が行ったことを脳内が勝手にまとめてくれた。
限界までの僕の精力を搾り取り、朝の朝食を作ってくれて女子力をアピールしながらも、女としても意識させて、最後には独占宣言…
「あ…鼻血が…」
と、次の瞬間、萌によって僕は背後へと倒れた。
こんなに積極的な人はなかなか居ない。
居たとしても、リョウコさんと、コノハと、セラと、エリカだけだ。
ちなみに、僕はいっつも大体このレギュラー4人組に気絶させられている。
今回もそうだ。
しばらくは起き上がれないんだろうな。
ウチはスマホを弄りながら、頬杖を突いて机の上で先生が来るまで待機していた。
ちょっと派手目な金髪と、これでもかという風に塗られたネイル(貼り付け式)は、自分で言うのも少しアレだけど、ウチのギャルレベルを表していると思っている。
「おはよー!!ラン!」
すると、赤髪の少女が私に近づいて、挨拶をする。
ウチは、机から飛び出して、「おはよー!!」と言いながら、その少女の腕の中に飛び込んだ。
ちなみにこれがウチの基本形な挨拶の仕方。
まあ、女子だけなんだけどね。
「昨日のイウリス見た!!」
(イウリスとは最近流行ってるSNSのこと)
「え?あ!!ウチのメタルガールズの奴!?」
「そうそう!!!いつもランってあんなのと戦ってるの!?すごいねー!!!!」
「えへへ〜もっと褒めて〜!!」
と、言った風にこれがウチらの日常。
ネットで見たことや、最近の喫茶店や、美容室のことや、アイドルのこと、それらを軒並み話すのが、ウチらの2年3組のギャルたちの日常だ。
「あら、ご機嫌ようですわ。ランさん。ミララさん。」
「おっはよー!!!はなちゃーん!!!!!!」
そう言ってウチは、はなちゃんこと、同学年、同クラスのエリナに飛びついた。
「うふふ…ランさんは相変わらず良い匂いがするのですね。」
はなちゃんとは、いつもは基本的にべったりだ。
いっつも一緒にいるし、昼食だっていっつも一緒に食べる。
そして、よく二人でする話といえば、香水の話で、はなちゃんからはいっつも違う香りがする。
例えば、今日は…
ってあれ…?
「はなちゃん…なんか今日ご機嫌?」
「えー?そうなのー?」
そういえば、声のトーンだって、いつもは大体「ラ」くらいだけど、今日はなんか、声のトーンが「高いド」位な気がする…
それに匂いだって…ん?
これ、どこかで…
「あれ…?なんか…リュウくんの濃い匂いがするような…?」
「あ…!え…な、なんのことかしらー…?」
急に額に汗を浮かべて、目を泳がせる。
ウチはこの時に、一瞬で悟った。
あ、これ何かやってきたんだ…と。
「リュウくんってのは…?」
と、赤髪の少女こと、ミララが問いかける。
「んっとね…平たく言ってメタルガールズの男の管理者!!めっちゃ顔可愛いんだよー!ウチと同じくらい身長高いけど」
「可愛いの!?!?」
と、ここでミララが身を乗り出して、聞き返す。
が、「わたくしのですのでそう簡単にやすやすと渡しませんよ?」と、はなちゃんが、眼光を鋭く輝かせだ。
まるで縄張りに入った敵を睨む狼のようだ。
「あ…ご、ごめんなさい…」
すると、ミララまるで子犬のように怯える。
「えっと…あ!ほら別に本気じゃないんでしょ…!?まあ、仲直りとかしちゃってさ〜!」
ウチはなんとなく仲直りするように促す。
すると、「ま、狙わないというのであれば…許しますわ。」
と、呟いた。
「にしても、メタルガールズに男の人っていたんだねー!ちなみに何年生なの?」
「えーっとね…確か高校1年っていっつも自己紹介では言ってるけど」
私は手を顎に当てる。
でも、たしかに高1とは言っているけど実際に高校の中で見たこと無い…
「あぁ…リュウさんは不登校です故、校舎内では遭うことはありませんわ。」
「えー!?不登校ー!?なんでよー!!」
「そんなこと…わたくしに言われても…」
と、言いながら細目の彼女は私同様に手を顎に添える。
その時、ガララララ…と、教室の戸が開く音がして、ウチは振り向く。
「よぉ、早いな。」
そう言ってウチに1人の男が近づいて来た。
最悪…と思いながらも、ウチは特に嫌がる素振りを隠して
「おはよー!」と挨拶する。
金髪に耳にはピアス…
胸元は大きく開けており、まるで自分の胸筋を見せびらかすように大胆に開いている。
不良という単語の相応しい彼は
授業はサボり、日頃から教室の中でタバコを吸い、ギャンブルに金を溶かし、そして気に入らないなら暴力を振るう。
それが彼、大寺宇賀という人物像だ。
普通にウチは嫌いだし、なるべく関わりたくない…
でも、それでも、ウチがこうやって健気に挨拶してるのには理由がある。
「おい、ラン。ちょっとこっちこい。」
そう言われると、私は手首を握られて、宇賀に連れられて廊下へと行く。
廊下に行った後、そこから玄関まで引っ張られた。
「え!?もうちょっとで授業始まっちゃうよ!?」
「そんなんサボれば良いだろ。」
そう言いながら彼はウチの手首を強く握り、校舎外へと私を連れ出した。
そして、校舎の裏へと連れてかれると、ウチを乱暴に壁に打ち付けさせる。
そして、まるで壁ドンというような感じで、ウチの顔の真横。
そこに手を突く。
「なあ、ちょっと頼みがあんだが…いいか?」
「い、嫌だ…」
「そうとは言わずにさぁ!!!ちょっと今すっげえムラムラしてるんだよぉ…お前のその豊満な肉体…ちょっと味見させてみろよ…」
はぁ…こいつは…!!!!
やりたくないし、関わりたくない…
だが、そんな避けることすらも無理なのかもしれない。
なぜなら。
「別に良いだろ?少しくらいは…俺ら、カップルなんだぜ?」
ここまで酷いカップルなんてウチは見たことがない…
まるで強姦をするかのように、押さえつける彼氏など、彼氏なんて言えない。
「嫌だ…!!!」
「はぁ…そんなこと言って、この前はおもちゃ使って甘イキしてただろうが。結局は女の
「う、ウチはぁ!!!!!!」
ウチは、好きで付き合っているわけじゃない。
好きで付き合ってたなら。
仕方なく付き合っているのだ。
何故なら。
「本当に良いのかぁ〜?この画像が流出するんだぞ〜?」
そう言いながら、彼は金髪少女の裸の画像をスマホに映し、言ってきた。
「っ!!!い、嫌なものは嫌なの!!!」
私はそう言って、彼の腕を解き、正門へと向かう。
「ッチ…釣れねぇ奴だな」
もう…なんでウチなんかが…
ウチは、頭を掻きながら玄関へと向かった。
ぶっちゃけ、簡易的なスーツを一瞬で展開できるわけだし…
別にあいつのことをぶちのめせないわけではないんだけど…
「はぁ…ウチ…何に迷ってんだろ…」
「結局、あの後、一限は受けなかった見たいですが、大丈夫なのですの?」
昼ごはんを食べている時、唐突、ウチに対して話しかける。
「何かあったのー?」
と、横に並ぶセラが卵焼きを食べながら言う。
「ぬー?」
リョウコさんもウチのことを覗き見るように股を枕にしながら言う。
「べ、別になんもないし!それにさ!今は昼ごはんっしょ?早く食べよ!」
青空の下。
リュウくんの居ない空の下でウチは白米を食べる。
「ほらほら〜!僕からの奢り〜!」
そう言いながらヒィコがコンビニ袋の中に入ったパンを出す。
クリームパンだった。
それも、手のひらサイズのパンが5つほど入ってるやつ。
「お、美味しそうですねー!!!!」
凛音ちゃんは目を輝かせて言った。
どうやら、スイーツに目がないらしい。
「良いのヒィコ!?」
「まぁね〜!!昨日リュウから吸い取ったんだ〜!!あ、お金の話ね!」
ヒィコが小声で、みんなにそう告げる。
「お金以外にもリュウさんって吸い取るものがあるんですか!?」
凛音ちゃんが驚くように言う。
ちょっと語弊が生まれそうだな…
「そりゃあもちろんあるでしょ〜!!ねー!」
と、私と凛音ちゃん以外の全員にヒィコは目線を配る。
「彼奴からは色々なものを吸い取れるのじゃ。」
「リュウは暖かいからね〜」
「今日の朝ごはんはリュウさんでしたわ。」
なんか、1番最後の言葉が気にかかるけれど…まあ、いっか…
「朝ごはんがリュウさんってなんですか…?」
しかし、絶対に気になってはいけない所に凛音ちゃんは引っかかってしまった…
ウチが考察するに…まあ…そう言うことだと思うんだけど…
その…なんというか…
「あら?知りたいのですの?」
と、はなちゃん。
ぜぜぜ!!!絶対ダメだよ!!!!これじゃあ、R15の領域を超えちゃうんじゃ…!!!
「大丈夫ですわ。耳打ちで伝えますので。」
思考を読んだのか、そんなことを言うと、はなちゃんは、こちらへいらっしゃいください。と、セラの隣に凛音ちゃんを越させる。
「要するにですね…つまり…リュウさんのXXXをXXXXでXXんで、そして何回もXXさせて、それで出てきたXXをXXXXごとXXXことで、お腹いっぱいにまで食べられるんですよね!」
「へー…僕あんまりリュウを朝ごはんにした事ないな…」
「妾も少しそれは気になるのぉ…」
「今度試してみよっかな〜」
と、3人が感心している中、耳打ちを喰らった凛音ちゃんはというと…
「そ…そんなH…な!!!!!あ、あ、あ、あ…!!!!!!」
「まあ、メタルガールズではこんなのは当たり前…とまでいきませんが、XXXXくらいは当然ですわよ?」
「え…え…え…え…!!!!!Hなのはダメ死刑!!!!!」
と、そんなセリフを指差しながら叫ぶと、顔を真っ赤にしながら、金属のドアノブを握ってビルが見える屋上から去って行った…
「まあ…」
「あの娘には少し刺激が強すぎたかのぉ…」
「気持ちいのにな〜私なんてこの前、気絶させられたよ〜」
官能小説じゃないんだから…少しくらいは抑えて欲しいけどなぁ…
と、そんなことを思うウチであったのだった。
「ふぁ…ふぁ…ふぁ!!!!!ファッッッックッション!!!!!!!!なんかどっかで噂されてる…?」
僕はそんなどこかのおじさん並みに大きなクシャミを吐き出すと、すぐ側のカウンターに置いてあったティッシュで鼻水を絞り出す。
メタルガールズ本部。
「風邪…かなぁ…」
思いつつ、僕は立ち上がり、「整備しに行くかぁ…」と思い当たった。
「ただいまですわ!!!」
と、しばらくした後、本部にエリナの声が響いた。
僕は急いで全ての部品や荷物を片付けると、階段を昇って会議室兼、リビングへと足を運ぶ。
そこでは、鏡の前で、くるりと一回転する黒いドレス姿のロングヘアーの紫髪のエリナ。
まるで花が風に靡かれるように、ふわりと揺れるそのスカートのヒラヒラが、僕の心を穿つ。
そして、「綺麗…」と呟いてしまった…
そう。可愛いではない。綺麗なのだ。
この違いはとてつもなく重要だと思う。
可愛いとは、形容するのであればキュートだが、綺麗と言うのはビューティフル。
可愛いとは、例えるのであれば猫や犬だが、綺麗と言うのは桜や薔薇。
そう。犬や猫なんかじゃない。
桜や薔薇。
まさに夕暮れの教室の中で1番真ん中の机に一つの花瓶。
その中に一つの花が挿され、それが素朴な教室を飾っている。そんな感じだ。
「そんなにわたくしのことをジロジロと見るようであれば、言ってくださればどこでも見させてあげますわよ。」
と、エリナ。
「えっと…いや!!別に僕は大丈夫!!!」
と言ったところで、この発言は返ってエリナを傷つけるのでは?と思ったけど…
「そうですか。それなら、見たい時に見たい部分を言ってくだされば、おパンツでも見させてあげますわよ。」
「わ、わかった!!ありがとう!!」
多分そんな見たくなる時なんて来ないと思うけど…
「そんなことよりも、早く着替えましょう。今は夕方の6時ですわ。もうすぐ文化祭である故、皆さんは少し遅くなるようですが、わたくしと貴方はパーティー、ですので。」
エリナはそう言うと、僕に攻め寄ってきて、僕を部屋の角へと追い込む。
まるで羊飼いの飼っている犬のようだ。
ちなみに僕は羊。
「あぁ…いつも通りに、男性用のスーツは用意しておりませんので、今回もドレスとなってしまいますが…まあ、メンズの服装よりもレディースの服装が多いリュウさんにとっては関係ないことですわ。」
いや、それは僕が外出しないのと、エリナが僕のためにレディースの服しか買ってこないからそうなっているだけで…
と心の中で漏らした声は、口からは出ずに、代わりに。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」という叫び声だけが響いた。
ブロロロロロロ…
黒いリムジンから降りたエリナ。
黒い手袋に黒いドレス。
それが強いのか、それとも儚いのか。
どちらを意味するのかはよくわからないけれども、僕の性癖からわかることが一つだけある。
黒いドレスに黒い手袋は少しえっちだ。
「さ、降りてくださいまし。リュウカさん。」
そう言われて僕…いや、今回は私って言った方が良いかな…?
そう言われて、白いベールを掛けた僕は車から降りた。
今から結婚式でもあげるのかと誤解されそうな程の綺麗なドレス。
ほんと…エリナはこれをどこから持ってきたんだろう…
私は思いながら車から降りて、嫌な顔を浮かべる…
それはもう…機嫌の悪い少し掌握そうな顔だ…
「うふふ…可愛いですわリュウカさん。」
口元を手で押さえながら言うエリナ。
段々と羞恥心が湧き上がってくる。
「なんでさぁ…スーツとかじゃないの…?私だって男の子としてエリナを扇動したかった…」
「別に良いじゃないですの。少しくらいはね。」
「そ、そうだけどさぁ…」
私は正真正銘の男である。
だってちゃんとちんちんもついてるし、それに胸だって無い。
でも、声は中性的で、身長は確かにあるけど、そんなこと言ったらエリナやランと同じくらい…
一眼見た時、男子か女子かを決める要因としては、ぶっちゃけもう服ぐらいだと思う…
ちなみに私は髪が短かかったので、ウィッグなるものを貸してもらった。
「でも、こういう格好でこういう合コンみたいな場所くると、本当に私が男であることをあっという間に忘れそうだよ…」
あたりを見ると、そこには、すでに私を狙おうとしているのか、私に視線を向ける男性たち。
「私は男なのに…」
「そんなことよりも!!早く中に行きましょ!」
まるで宮殿のような大きな門があり、私とエリナはその門をくぐり抜けた。
そして、予想通りに門の向こうには宮殿があり、その宮殿のような建物に私とエリナは入場する。
中は白い壁が広がっていて、机が並んでおり、その上には料理がずらりと並んでいる。
そして、さらに少し左へと動いた時に、男女ペアでダンスを踊っている。
あちらの方では、バイオリンやピアノを弾く人々が見えた。
「さて…まずは何からしましょうか…」
と、エリナがつぶやく…
「私…実はお腹が減ったんだよね…」
私は正直な感想というか、現状を報告した。
「ほんとですの?それでは料理から…」
「こんばんは。花園さん。」
と、エリナが私を連れて、その机に向かおうとした時、エリナの後ろから声がした。
「貴方は…?」
私は言った。
目の前には黒いスーツを着こなし、少し大人のような男性が佇んでいる。
「僕の名前は山田太郎です。」
「え?何それドカベン?」
「どか…べん?」
あ、そっか今の世代の子に伝わるやつ1人もいないか…
「あ…いや、すごい安直な名前ですね。」
私は正直に言う。
「まあ、本当の名前はコウタロウと言うのですが。」
「嘘ついてたの!?なぜ安直名前に!?あれ?てか待てよ…山田コウタロウだと…すごいなんか勇者が出てきそうな予感がする!!!!」
私が言うと、山田と呼ばれる人は、付け加える。
「ちなみにコウタロウの字は、幸福の幸の字に太郎です。山田幸太郎。」
「あ…そうなんだ…危なかったわけだ。」
「それよりも、エリナさん。少し良いですか…?」
って、もしかしてこの人…エリナのことを!?
「いいえ!!よくありませんわ!!!!リュウカさんのことは意地でも渡しません!!!!わたくし…花園家の何掛けて!!!!」
いや、絶対これ、エリナ狙ってるでしょ…こんなことのために花園家の名を気安く掛けない方が…
「あらあら、花園家の名を掛けられると、こっちも正直弱いです…この子はリュウカって言うんですね。」
合ってた…
狙いは私だった…
こんなダイレクトにアタックしてくる人とかいるんだ…
私は思いながらも、エリナに手を引っ張られる。
「こんな奴、放って置いて、さ!行きましょう!」
「うあ…うう…背後に私をじっと見る彼奴の目線を感じる…」
「はぁ…」
私はため息を吐く。
「私はダメで、エリナ自身は良いんだね…」
と、中央で知らん男と踊るエリナを見ながら僕は思う。
「あ、あの!!!そこのお嬢さん!!!」
脇の丸いテーブルで私は人形のように座っていると、唐突に髪色の黒い少年に声をかけられた。
少年は、私に向かって手を伸ばしている。
ふぅん…可愛い…じゃないじゃない!!!!!
別に
私はショタコンじゃないんだから!!!!!!
「わ、私?あ…ごめんね!!私、人妻だから…」
男性から誘われた時、こう答えろとエリナに命令されて以来、これで何回目だろうか…
多分二桁は行ってるなー
「そ、そうですか…」
少年は答えると、静かにその場を去っていった…
全く…こうも可愛い少年を断るとなると少しだけ気が引けるな…
「わたくしと…踊っていただけますの?」
「あ、ごめんね!!!私、人妻だから…」
と、答えながら少年が居た右を向いていた首を私は正面に向けさせたその時…
「って…」と言葉を漏らす。
「あら…わたくしの誘いを…」
と、呟きながら私を誘った張本人、エリナは私の膝の上の手を持ち、そして言葉を続けた。
「断るなんて、させないですわ。」
そう言いつつ、エリナは手を引っ張り、僕を立たせた。
反動で、僕はエリナと花が触れ合いそうな距離まで詰められる。
「さ、行きましょう。」
そう声をかけると、エリナはそのまま僕の手を引っ張って、中央へと向かい始める。
「ま、待って!!!僕ダンスできないよ!?」
「大丈夫ですわ。わたくしがリードします故、心配はいらないですわ。」
自身げに言った彼女。
正面を向いているので、顔は見えない。
「さ。手を。」
中央に着くと、ドレス姿の僕にエリナは言った。
周りからは小さな声だが、「あの女はなんだ…?花園家の者か?」とか、「俺のエリナ様を…!!!」とか「綺麗な人…!!!花園家の関係者なのかな?」とか聞こえた。
なんか3分の1は僕に向けられているような気もするが、まあ、気にしない。
だって今はエリナと踊らなければ…
でも、踊れない僕はエリナに少し躊躇う。
迷う必要なんてありませんわ。と言いながら、躊躇って停止した僕の手を取り、音楽に合わせて踊り始めた。
端っこでピアノやバイオリンから奏でられる音が空中を舞う。
そして、エリナは、僕の手を握って、ふわり、ふわりと踊り始めた。
2人1組のダンスで、こう言う西洋風なものを確か…
「ワルツ…」
それだったら心得ていないわけでもない…
僕は足並みをエリナと揃えて、なんとなくそれっぽくする。
事前にエリナから渡されていたあのワルツの踊り方を読んでいなければ、多分こんな風に踊ることすらできてなかっただろう…
えっと…エリナが腰に手を回しているから…僕が男性…ではなく女性の踊り方をすれば良いのか…
まあ…元から女性の踊り方しか渡されてなかったし、そうだろうとは思ってはいたけどさ…
僕だって男なんだけどなぁ…
しかしながらも僕は足を揃え、舞う。
まるで蝶のように。
って…うぁ…
と、僕は正面を見ると、そこには、額に汗を流した少女…
エリナが居た…
吐息が掛かるくらいに距離が近い。
身長もそれほど変わらないことからさらに他のペアとかよりも距離がすごく近い。
少し疲れているのか、エリナからの吐息も温かみを帯びていて、ちょっとだけ…そう!!!ちょっとだけ良いな!!!と思ってしまう…
可愛い…いや、綺麗だな…
「ったあ!!!!」
と僕はベットの上で寝っ転がる。
「疲れたぁ………」
そう言いつつ、僕は用意された客室のベットに寝っ転がった。
赤く敷かれた毛布の上。
一度、体を起こし、喉が震えたので、水を一杯、飲む。
「はぁ…よし…!!行くか!!!」
そして僕はベットにダイブ。
眠りに付く。
先ほどエリナが部屋に伺う…とか言ってたけど…まあ、いっか!!
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