第22話 「…レイ?これ早く捨てた方がいいよ」

レイの中の最古の記憶。

黒い縁の中に入った両親の写真。

アンドロイド暴走事件で命を落としたという。

親戚にレイを押し付けられた女はレイに言った。


「お前が居なければ彼は死ななかった」


今思うと、父とその女は父が結婚した後も思い合っていたのかもしれない。

レイはそれをきっかけに家を出て東上洞に流れ着いたのだ。


食べるものももちろん、住む場所もない。

ゆらゆらと歩くレイを見つけたのはミゲルだった。





「ぼく?一人なの?」


レイは頷く。


「そっかあ、おいで、空いているビルがあるよ」


ミゲルはそういうと、レイの手を引いて空きビルに連れてきた。


「このビルを使うと良いよ」


それからミゲルや東上洞の人たちはレイに食べるものをくれたり、お金の稼ぎ方を教えてくれた。


幸いレイは手先が器用で、観察力もあった。

捨てられたアンドロイドや電化製品を解体したり組み立て直したりして遊んでいるうちに、東上洞の人々から修理の依頼がくるようになった。


レイは住処にしていたビルに看板を立てる。


「…なんて書けばいいんだ?」

「そうだねぇ、たすけるよってことがわかればいいんじゃないかな」


ミゲルが助言する。

レイは頷いて、看板につたない文字を書いた。


こうしてレイは一人で暮らすすべを身に付けたのだった。


数年後。

ある日、レイはとあるアンドロイドを見つけた。

頭部が破損しているが胴体は綺麗だった。


レイはいつものようにそっと近づき観察をする。


「…なんだ?これ」


破損している場所に一つのチップのようなものが見える。

レイは好奇心に任せてチップを手に取った。


自作したPCにチップを挿し込む。

解析をするが、それが何かはわからなかった。


レイはチップを持って戦の元へ向かう。


「レイか。どうした?」


何かを書いていた戦は髪をかき上げてレイの方を見る。


「清良いる?」


レイが聞くと戦は奥を指さす。


「清良、これ解析してほしいんだけど」


レイが清良にチップを渡すと、清良は不思議そうにレイを見た。


「レイがボクに頼み事?珍しいねぇ。」

「うん。さっき見つけたんだけど。俺、チップの解析は得意じゃないから」

「ふえぇ、ますます珍しい…いいよ!レイの頼みなら何でも聞くよ!」


清良は自分のPCにチップを挿し込むと、液晶画面をタップする。


「…レイ?これ早く捨てた方がいいよ」


清良がレイに言う。


「え?なんで」

「やばそうなフィルターがいっぱいかかってる。多分、これは位置情報を共有されてる。あと、これはあれだ、暴走するようにプログラムされてるよ」

「…暴走」


レイの表情が曇った。


「面倒なことに首つっこんでいるのか」


レイの後ろから戦が声を掛ける。


「まだ突っ込んでないよ」

「たった今突っ込んだよ」

「え」


清良がPCを見ながら言う。

レイもPCを覗き込んだ。

後ろから戦も覗き込む。


画面の中には、【発見 爆破装置 移動中】の文字。

そして、現在地を示すような、地図。


3人は顔を見合わせる。


「え、なに、超危なそうな感じじゃん」

「わかんないよ。レイが拾ってきたんでしょ」

「とにかく、このチップが埋め込まれていたアンドロイドはどこだ」

「あぁ、あっちだった」


レイが慌てて立ち上がり、3人はアンドロイドの場所まで走る。


「わ、わあ…」


そこには、損傷した頭部が赤く光っており、更に四足歩行のような形でこちらを向いていた。


「ゾンビじゃあん…」


先日拾ったテレビで見た外国映画を思い出し、清良が自分の肩を抱く。


「爆破装置の移動と言うことは何かが向かってるのか?」

「え、これが爆破装置じゃないの?」

「たぶんそうだ。さっきいた場所よりも俺たちのいたところよりに動いてる!止められないか試してみる!」


レイがアンドロイドに駆け寄り、工具を取り出す。


「レイ、待て、見ろ」


戦がレイの手を止め、アンドロイドの頭部を指さす。


「まじかよ、」


そこには赤、青、黄の線が見える。


「ねぇボクこれ知ってるよ、どれか切ると止まるやつだよ」

「そのどれかってのが問題だろ」

「…………青!」


清良が叫ぶ。


「なんで青?」

「わかんないけど、レイ、青色スキだろ?」

「なんで俺の好きな色なんだよ」

「開発者ならまだしもな…」


アンドロイドの顔部分にある液晶に残り時間が表示される。


「…これって30秒であってる?」

「もう27秒だよ」

「2人とも離れろ。大丈夫。俺が拾ってきたんだ、俺がなんとかする」

「なんとかってなんだよ!」

「適当にどれか切る!」

「えぇ!」

「早く逃げろ!」

「いやだよ!!」

「俺らの事は気にするな、やれ、レイ」


3人は同時に頷く。


レイは思い切って全ての線を切った。



…表示が止まる。


「止まった?」


目をぎゅっとつむった清良がいう。


「生きてる?」


レイがいう。


レイがアンドロイドを確認する。

耳を当てて音をきく。


「起動音はない。おそらく停止した。」


レイがいうと、3人は胸をなでおろす。


「危なくないようにちゃんと解体しよ」


清良がいうと、3人は頷いて、それぞれ工具を取り出して、アンドロイドを解体していく。


「あぁ、もう戦、力任せにやるなよ。破損するだろ」

「解体しているのになぜ破損を気にする」

「決まってるでしょ。破損がなければ、もう一度再利用できるじゃん。ね、レイ」

「そういうこと。ほんとに戦は頭いいのに、作業は向いてないよな」


2人に言われ、戦はそっと拗ねた。





アンドロイド爆発未遂から数日後、こぎれいなスーツの男が、レイの前に立っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る