第6話:向かいの部屋の蜜柑さん。

リップの頭からビヨ〜ンって出てるハートマークが真っ黒にならないように俺は

生きてかなきゃいけなくなった。

だからもう人間の女とは恋愛できない・・・だけど、そんな制約があればあるほど

俺は人間の女と浮気したい衝動にかられる。


しかたない・・・しばらくは自重しよう。


「あのさ、リップ明日は水曜日だからバイク屋休みだから一緒にいてやれるけど

木曜日から仕事だから、俺は家にいないからな」

「一人で留守番大丈夫か?」


「大丈夫と思う・・・寂しいけど頑張ってみる」


「退屈だったらテレビでも来てな・・・」

「それから勝手に外に出ないこと・・・右も左も分からないんだから」

「でもってボーッと立ってないこと・・・連れていかれるからな」


「なんで?・・・誰に?」


「世の中にはスケベな男が履いて捨てるくらいいるからだよ」


「分かった・・・じゃ〜一人でエッチいことして時間潰すね」


「なに?ひとりでエッチいことって・・・普段からそんなことやってんのか?

・・・まだ15歳だろ?」


「15.歳なんて遅い方だよ・・・」


「ああ、異星人だもんな・・・異星人の生態は俺には分かんないもんな・・・」

「じゃ〜好きにすりゃいいけど・・・ティッシュむやみやたらと使うなよ

もったいないから・・・」


さて、それじゃそろそろ寝るかって思った時だった。


玄関ドアを思いきしドンドン叩くやつがいる・・・そんなことする女は一人に

決まってる。


俺の向かい部屋の女、名前を「吉行 亜弓よしゆき あゆみ」って言う。

歳は30歳。

めちゃ綺麗な女でとても色っぽい・・・いやエロい。

職業は夜の商売、ソープ嬢。


俺はまだ彼女のお世話になったことはない・・・客として向かいの女に会い

たくないんだ。

亜弓さんは普段は「蜜柑みかんさん」って呼ばれている。

多分、源氏名なんだろう。


たいがいは夜中に酔っ払って帰って来て、すんなり自分の部屋に入る時もあれば

時々、今日みたいに人の部屋にやってくる時もある。


ドアホンがあるだろ〜が・・・そのまま放置しとくといつまでもドアをドンドン

叩くから近所迷惑なる・・・だからしかたなくドアを開けるしかない。


「蜜柑さん・・・静かにしてくれませんか・・・」


「桜庭っち・・・まだ起きてた?・・・悪いけどさ・・・私、部屋の鍵なくし

ちゃって部屋に入れないからさ、今晩桜庭っちに泊めてくれる?」


「ダメですって・・・なに言ってるんですか?」


「か弱い女が困ってるんだけど・・・」


「どこがか弱いんですか?」


蜜柑さんは俺のことを無視してブーツを脱ごうとして、俺の靴の横に並んでた

リップの可愛い靴を見つけた。


「あらら・・・桜庭っち・・・先客?」

「あんたも隅に置けないね〜・・・まあ、男だもんね、スケベだもんね」


「違うって・・・その靴は俺の妹のだから・・・田舎から出てきてるんです

妹が・・・」


「ふ〜ん・・・どうせ血の繋がってない妹でしょうが?」


「違いますって・・・」


「いいから・・・上がらせて・・・私、眠たいの」


蜜柑さんはずけずけと部屋の中に入ってきた。

で、目ざとくリビングのソファに座ってるリップを見つけた。


「妹ってあの子?」


「あ、そうです・・・」


「どう見たって100%違うでしょ・・・桜庭っち?」

「あんたの妹があんなに可愛いはずないっしょ?」

「こんにちは、お嬢ちゃん?私、蜜柑よ、よろしくね」


つづく。


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