大地の洞窟 11

湿った洞窟の空気が鼻をつく。この独特の匂いと肌を刺すような冷たい風は、何度来ても慣れない。テラブリンガーを肩に担ぎ、慎重に足を進めるたびに、足元の小石が乾いた音を立てる。それが洞窟の壁に反響し、自分の存在を隠すどころか、ここにいることを周囲に宣伝しているような気がする。


大地の洞窟。今までの挑戦が練習に思えるほど、この場所は異質だ。すでにいくつものモンスターを相手にしてきたが、ここで待ち構えているのは、それらの比ではないだろう。奥へ進むたびに、重く沈むような空気が肌を撫で、頭上の微かな振動が生きた脈動のように感じられる。


足元が湿り気を帯びた土から、乾いた砂に変わった。その瞬間、目の前に広がる光景に息を呑む。広間全体が輝く土結晶に照らされ、天井の高みには不気味な影が揺れている。そして、その影が地面に降り立った。ガイアハンターだ。洞窟の守護者とも言える存在。その巨体は岩で覆われ、鋭い爪が地面に突き刺さっている。低い唸り声が洞窟全体に響き渡り、その音波が胸に響いてくる。


テラブリンガーを両手で構え直し、深呼吸を一つ。奴の関節部分が弱点だと分かっているが、そこを狙えるかどうかは別の話だ。その大きな前肢が地面を叩きつけ、砂埃が舞い上がる。視界が遮られる中、こちらに突進してくる気配を感じる。冷静になれ。視界を奪われた状態で動けば、隙を突かれるだけだ。


音に集中する。爪が土を削る音が右から迫ってくる。即座に左へ跳び、振り返る。視界が晴れると同時に、ガイアハンターが目の前に迫っていた。その鋭い爪が振り下ろされる寸前にテラブリンガーを盾代わりに構え、受け流す。衝撃で腕が痺れるが、耐えなければならない。体勢を整える間もなく、奴の尾が横薙ぎに振られる。これ以上の受け流しは無理だ。足元のグラウンドスタビリティブーツが振動を吸収し、踏み込んで突進をかわす。


間合いを詰め直し、ストーンスプリッターを取り出す。狙いは前肢の関節部分。全力で投擲する。投げられたハンマーが鋭い音を立てて命中し、ひび割れが生じる。しかし、それが奴を止めるには至らない。ガイアハンターはさらに激しく動き回り、砂埃を巻き上げる。


次の手を考える余裕はない。テラブリンガーを振り上げ、さらに弱点を狙って一撃を叩き込む。刃が岩の外殻を砕き、モンスターの動きが鈍るのが分かる。だが、奴はここで終わる存在ではない。その眼が淡い光を放ち、次の攻撃の準備を始めている。奴のエネルギーが蓄積していく様子が、肌で感じ取れる。


息が上がる。これまでにない激しい戦いだ。回復ポーションを取り出し、素早く飲み干す。冷たい液体が喉を潤し、少しずつ体力が回復していくのを感じる。その間にも奴の動きは止まらない。次の一撃が来る。その瞬間を見極めるため、全神経を集中させる。


時間を稼ぐため、クラッシャーボムを取り出して足元に投げつける。爆発が奴の動きを一瞬止めた。その隙を見逃すわけにはいかない。全力で突進し、テラブリンガーを振り上げる。その一撃が関節部分に深く食い込み、ガイアハンターが低い唸り声を上げる。体が崩れ落ちる前兆が見えるが、まだ終わりではない。


ガイアハンターの動きが一瞬止まった。だが、それが敗北の兆しではないことは明らかだ。関節部分に深くテラブリンガーを打ち込んだ手ごたえがあるにもかかわらず、奴の体全体から震えるようなエネルギーが発せられている。これは反撃の予兆だ。踏み込んでいた足を引き、距離を取る準備をする。だが、その瞬間にはすでに遅かった。


奴の尾が大きく振られ、砂埃と共に風圧が全身に叩きつけられる。グラウンドスタビリティブーツが振動を吸収し、倒れることは避けられたが、胸に衝撃が残る。体を低くし、回避するタイミングを見計らう。頭の中では次の一手を探しているが、奴の動きがそれを許してくれない。巨体の割に、その動きは意外に速い。さらに、関節部分のひび割れは時間と共にわずかに再生しているようだ。


再び距離を詰めるべきか、それとも一度引いて態勢を整えるべきか。迷っている間にも、ガイアハンターが再び前肢を振り上げる。逃げ場はない。振り下ろされた衝撃波が地面を揺るがし、洞窟全体に響き渡る。ジオリングのおかげでこの衝撃を耐えられているものの、持久戦は避けるべきだと直感する。


咄嗟にストーンスプリッターを取り出し、弱点を狙って投げつける。狙いは正確で、ハンマーが奴の右前肢の関節部分に再びひびを入れる。だが、その程度では動きを止めることはできない。何か大きな一撃が必要だ。息を整え、頭の中で手持ちの装備を思い返す。


クラッシャーボム。これしかない。手を伸ばし、迅速に三つの爆弾を取り出す。それを奴の足元に投げ込む。一瞬の沈黙が続いた後、爆発音が轟き、砂埃が広間全体に立ち込める。視界が遮られる中、奴の低い唸り声だけが聞こえる。


爆煙が晴れた時、ガイアハンターの右前肢が明らかに崩れ落ちていた。これは好機だ。全力でテラブリンガーを振り上げ、ひび割れた部分に叩き込むべく突進する。その一撃が確実に決まり、巨体が大きく揺らぐ。奴の動きが鈍り始めた。さらにもう一撃を加えれば倒せるかもしれない。心の中に微かな勝利の予感が広がるが、油断は禁物だ。


一瞬の静寂が訪れる。奴の動きが止まるかに見えたが、それは次の大技の前兆だったのかもしれない。地面が震え始め、洞窟全体が不穏な音を立てる。ガイアハンターが最後の力を振り絞り、全身を使った一撃を放とうとしているのが分かる。このままでは洞窟全体が崩壊する危険さえある。


ガイアハンターの全身から発せられる震動が、洞窟全体を覆っている。壁のひび割れから小さな石片が落ち始め、まるでこの場所自体が息を潜めて彼の一撃を待ち構えているかのようだ。この一撃を受け止めるのか、それともかわして隙を突くのか。選択を間違えれば、この戦いだけでなく自分の命すら失う危険がある。


奴の足元に視線を集中させる。揺れる大地の中で、明らかに力を溜めているのがわかる。その足元にわずかに残ったひび割れが見える。爆発の影響がまだ残っているはずだ。あれが最後の突破口になるに違いない。テラブリンガーを両手で構え直し、深く息を吸い込む。自分の鼓動が耳に響く中、すべての意識を集中させる。


ガイアハンターが動いた。その巨体が跳ね上がるようにして全力で前脚を振り上げる。その一撃は間違いなく地面を砕く力を持つ。だが、その瞬間こそがこちらにとっての勝機だ。足元の安定を保ちながら、ジオスタビリティブーツの力を信じて前に踏み込む。奴の脚が地面に振り下ろされる寸前に、ストーンスプリッターを全力でひび割れた関節に投げ込む。


鋭い音が洞窟全体に響き渡る。ハンマーが正確に命中し、奴のバランスが崩れる。これを逃す手はない。振り下ろされた前脚をかわし、全力でテラブリンガーを振り上げる。そして、その重厚な刃をひび割れた箇所に叩き込む。衝撃音と共に、ガイアハンターの巨体がぐらつき始める。


さらに追撃が必要だ。ストームブレイカーに持ち替え、近接攻撃を加える。テラシールドガントレットが奴の反撃を受け止め、カウンターの機会を作り出す。一撃、二撃、三撃。全力で打ち込むたびに奴の体から小さな破片が飛び散り、その動きがますます鈍くなる。


最後の一撃だ。テラブリンガーを再び手に取り、全ての力を込めて振り下ろす。衝撃波が広間全体に響き渡り、奴の体が完全に崩れ落ちた。巨体が地面に倒れ込むと同時に、洞窟内の震動も次第に収まっていく。息を整えながら、目の前の崩れた岩の中から見慣れない光が差しているのを確認する。


その光源に近づき、崩れた体から剥がれた素材を拾い集める。ガイアハンターの結晶核が輝きながら自分を迎えている。それはこの戦いが終わったことを知らせる勝利の証だ。拾い集めた素材を確認し、さらに奥へと続く通路に向かう。戦いの痕跡が体に残るが、次なる挑戦の準備を進めることが必要だ。


◯獲得アイテム

・ガイアハンターの結晶核 ×1

・崩れた岩の破片 ×10

・大地の精鋼結晶 ×3

・ガイアの尾骨片 ×2

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る