大地の洞窟 2

洞窟の湿った空気が肌にまとわりついてくる。この感触には慣れたはずなのに、今日の空気はどこか重い。地面は乾燥しているけれど、不安定な岩が散らばっていて、何度もバランスを崩しそうになる。こんな場所で気を抜けば、それだけで命取りだ。ストームブレイカーを軽く握り直し、呼吸を整える。この洞窟の奥に何が待っているのか、確かめるまでは引き返せない。深呼吸して、一歩を踏み出す。


最初の広間に入ると、岩肌にひび割れが走っているのが目に入った。ひびの間から微かな振動が伝わってくる。警戒して目を凝らすと、ゆっくりと姿を現したのはストーンイーター。体は硬い岩で覆われていて、全身に鋭い牙が生えている。名前の通り、岩そのものを食べる習性があるというが、その牙が武器として向けられると想像すると恐ろしい。


一体だけかと思ったが、奥からさらに二体のストーンイーターが姿を見せる。これで合計三体か。最初に目をつけた一体がじりじりと距離を詰めてくる。少しだけ後退しながらストーンスプリッターを手に取る。狙いを定めて全力で投げつけると、乾いた音が響き、岩の体にひび割れが走る。その一瞬の隙を突いてストームブレイカーを構え、全力で突進する。


剣を振り下ろすと、ひび割れ部分に刃が食い込む感触が伝わる。これで仕留められると思ったが、ストーンイーターはまだ完全に動きを止めていない。もう一撃。全力で剣を振り下ろし、ようやくその体が崩れ落ちた。これで一体目は倒せたが、息をつく間もなく、残りの二体が動き出す。


二体目は正面から素早く迫ってくる。一方で、三体目は慎重に側面へ回り込んでいる。これは厄介だ。まずは正面の個体に集中するべきだろう。牙をむき出しにして飛びかかってくる瞬間、剣で受け止めつつ押し返す。硬い衝撃が腕に伝わり、防御を固めながら間合いを調整する。足元が不安定な中で、ジオスタビリティグリーブのおかげでバランスを保てているのが救いだ。


しかし、側面に回り込んでいる三体目を無視するわけにはいかない。ストーンスプリッターを拾い上げ、投擲の準備をする。ひび割れの目立つ部分を狙い定め、鋭く投げつけると、狙い通りの手応えが返ってきた。外殻が崩れたことで動きが鈍くなったのを確認し、再び正面の個体に集中する。


ストームブレイカーを構え直し、牙を剥いたモンスターに向けて間合いを詰める。次の攻撃で仕留めるべく、渾身の力を込めて剣を振り下ろすと、ひび割れた体がついに崩れ去った。残るは三体目。まだ動きが鈍いとはいえ油断はできない。


最後の一体は慎重に間合いを保ちながらこちらを警戒している。投げつけたストーンスプリッターを回収し、再び狙いを定める。硬い岩肌の隙間を狙って全力で投擲すると、今度はひび割れが大きく広がった。これが最後のチャンスだ。剣を握り直し、全力で突進する。


体全体に力を込めて剣を振り下ろし、崩れた部分に刃を叩き込む。モンスターが一瞬のうめき声のような音を上げ、体全体がバラバラに崩れ落ちた。広間が静まり返り、耳に響いていた振動が消えたことで、ようやく一息つける。


崩れた体の周囲には、モンスターたちの残骸が散らばっている。慎重に素材を拾い集め、手にしたアイテムを確認する。次の広間に進む準備を整えながら、装備を整え直し、呼吸を整える。この洞窟の奥には、まだ多くの敵が潜んでいるのだろう。


***


洞窟の中、空気が一段と重くなってきた。湿気が濃く、喉の奥に土の匂いがまとわりつく。足元に散らばる岩片が転がり、不安定な足場を作っている。神経を張り詰めながら歩みを進めると、先ほどの広間よりさらに暗く、閉塞感のある空間に出た。何かいる。いや、感じる。視界の隅で微かに揺れる影。それが気のせいではないことを確信するまで、数秒もかからなかった。


広間の奥で岩の塊が動き出した。ストーンイーターか?いや、違う。これは…グラナイトハウンド。体長はストーンイーターの倍以上。全身を覆う岩肌は、ただの岩石ではなく、鈍い光を放つ鉱石のように硬そうだ。牙がむき出しで、鋭く尖った爪が地面を掻きむしる音が響く。力任せの一撃を放たれれば、一瞬でこちらの防具を破壊しかねない。これまでの敵よりも確実に手強い。


グラナイトハウンドが低く唸り声を上げた。体全体がその音と共鳴するように震えている。目が合った瞬間、猛然とこちらに向かって走り出してきた。音が遅れて届くほどの速度だ。攻撃をかわす余裕などない。ストーンシルクガードを構えて衝撃を受け流すと、腕に重い衝撃が伝わる。まるで巨岩が押し寄せてきたようだ。まともに喰らえば即死だった。


距離を取らなければ。だが、相手は執拗に追い詰めてくる。踏み込みながらストーンスプリッターを手に取り、全力で投擲する。ハンマーが空を切り裂き、グラナイトハウンドの肩に直撃する音が広間に響いた。手応えがあった。ひび割れが確認できる。だが、それでも動きは止まらない。むしろ怒りが増したのか、さらに攻撃が激しくなる。


左に跳び退いて距離を保とうとしたが、素早く横に回り込んでくる。厄介だ。こいつはただ硬いだけの敵ではない。ストームブレイカーを構え直し、ひび割れた肩を狙って切り込む。刃が鉱石のような表面を削る音が響く。だが、その反動でこちらもバランスを崩す。


グラナイトハウンドが爪を振り上げてくる。危うく回避するも、爪が地面を叩いた衝撃で足元が崩れる。ジオスタビリティグリーブが振動を吸収してくれたおかげで持ちこたえたが、次の攻撃を受ければ防具が持つ保証はない。


ポーションを飲む余裕すらない状況だが、このままではじり貧だ。深呼吸して冷静さを取り戻す。追撃を防ぎながら、再びストーンスプリッターを手に取る。今回はひび割れた肩ではなく、脚を狙う。動きを封じなければ反撃の隙が作れない。


ハンマーを投げる瞬間、広間全体が静まり返るような感覚がした。狙い通り、脚に直撃。グラナイトハウンドが一瞬体勢を崩した。今しかない。全力で距離を詰め、ストームブレイカーを振り下ろす。その刃がひび割れた肩に深く食い込み、鈍い音と共に欠片が飛び散る。


グラナイトハウンドは再び唸り声を上げながら、攻撃の態勢を整える。仕留めたわけではない。むしろ追い詰めたことで、次の攻撃がさらに苛烈になるだろう。この戦いはまだ終わらない。


洞窟の中の静けさが一層重くなる。湿った空気に土と岩の匂いが混じり、肌を覆うようにまとわりついてくる。広間に響くのは自分の足音と、鉱石が擦れる微かな音だけ。先ほどの一撃が効いたようだが、完全に仕留めるにはまだ程遠い。グラナイトハウンドが体勢を整え、再びこちらを睨みつけている。


時間を稼ぐために後退しようとするが、すぐにそれが無意味だと悟る。あいつの動きは自分の予想以上に素早い。巨体に似合わない機動力で、こちらの後退を許さない。どうする?ひび割れた箇所をさらに広げるべきか。それとも、脚を狙って完全に動きを封じるべきか。考える暇すらない。あいつが再び低い唸り声を上げ、地面を掻きむしるように突進してくる。


ストーンスプリッターをもう一度手に取り、渾身の力を込めて投げつける。狙いは脚部だ。これ以上動き回られるわけにはいかない。ハンマーが空気を裂き、グラナイトハウンドの前脚に命中する。岩の表面が砕け、さらに大きなひびが広がった。だが、それでも完全には止まらない。巨体が揺れ、唸り声が怒号のように響く。


距離を取るどころか、逆に攻め込む必要がある。振り返って逃げれば、その瞬間に終わる。ストームブレイカーを構え直し、脚のひび割れた箇所を狙い定める。動きが鈍ったところで、全力で距離を詰め、刃を振り下ろす。岩が砕ける音が広間に響き、グラナイトハウンドが大きく揺れる。


それでも奴は倒れない。動きが鈍くなった分、攻撃の一撃一撃が重くなっている。爪を振り上げ、地面を叩きつける度に振動が足元に伝わる。ジオスタビリティグリーブがその衝撃を吸収してくれるが、耐え続けるのも限界がある。次の一手を急がなければならない。


ハイリカバリーポーションを取り出し、一瞬の隙をついて飲み干す。冷たい液体が喉を潤し、疲れた体にじわじわと力が戻ってくる。回復した勢いで再び動き出し、グラナイトハウンドの側面に回り込む。脚を破壊して動きを止めた今、狙うべきは胴体だ。ひび割れた箇所を中心に、集中して攻撃を加える。


刃を振るうたびに岩の破片が飛び散り、奴の体は徐々に崩れていく。しかし、こちらの体力も限界が近づいている。ストーンシルクガードを構え直しながら防御を固め、次の隙を探る。グラナイトハウンドが最後の力を振り絞るように唸り声を上げる。もう少しだ。次の一撃で決めるしかない。


ストームブレイカーを両手で握り直し、振り上げる。狙いは胴体のひび割れ部分。全力で刃を叩きつけると、音を立てて岩が砕け散る。グラナイトハウンドの巨体がゆっくりと崩れ落ち、静寂が広間に戻る。


息を整えながら、散らばった破片を慎重に拾い集める。手にはまだ戦いの余韻が残り、緊張で指が少し震えている。だが、次の広間が待っている。準備を整え、さらに深く進む覚悟を決める。


◯獲得アイテム

・ストーンイーターの小型結晶核 ×2

・割れた岩の破片 ×4

・土の結晶片 ×3

・グラナイトハウンドの結晶核 ×1

・砕けた鉱石の破片 ×6

・硬化土の欠片 ×4

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