最弱職と名高いネクロマンサーですがソロで高難度ボスは倒せますか?

いかづち1

1章 駆け出しネクロマンサー編

第1話 初めてのログイン


「ようやくこの日が来たよ。」


 六花はPCの『ダウンロード完了』の表示を見てつぶやく。


「けいかにも連絡したし、さっそく始めていきますか。」


 先に始めている幼馴染の京華にDL完了の報告を入れこれから始めることを伝えた六花は横になってフルダイブ端末を起動する。


「パラレルワールドオンライン起動」

『パラレルワールドオンラインを起動します』


 音声メッセージと共にゲームが起動される。『パラレルワールドオンライン』(略してPWO)は現在最も勢いのあるVRMMORPGだ。パラレルワールドという言葉が示す通り日本、欧州、北米、南米、オセアニア、東南アジアの6つのサーバーがそれぞれのプレイヤーの行動によって異なるストーリーを展開していくというコンセプトのオンラインゲームである。全世界同時発売から3か月が経っているがすでに『ゴブリン襲来』イベントで防衛に失敗したサーバーでは村がいくつか無くなったりと内容が異なり始めている。


『プレイヤーネームを設定してください』


 ゲームが起動し、初期設定が始まる。六花は『フレデリカ』と入力して決定を押す。


『しばらくお待ちください...サーバーがプレイヤーネームを承認しました。フレデリカ様、ようこそエウシア大陸へ。次にアバターを設定します。』


 プレイヤー名被りはなかったようで無事に次の項目へ進んだ。


『端末に登録されている身体データを基にアバターを作成しますか?』


 基本的にフルダイブ型のゲームは現実世界の身体に忠実なほど良いされている。これは現実世界との感覚のズレが少ない方が直感的に思った操作ができるからだ。六花も質問に迷わず『はい』と回答する。ゲームが身体データを読み込むと六花はアバターでリアルバレが起こりにくくなるように顔や髪の部分を少し弄ってキャラクリを終える。これもこの手のゲームでは常識とされる変更だ。


『最後に職業クラスを設定してください。』


 音声と共に職業が表示されていく。


● ファイター:オーソドックスな前衛職 専用スキル【闘魂】

● ウォリアー:テクニカルな前衛職 専用スキル【カウンター】

● アサシン:隙を見て弱点への攻撃を繰り返す前衛職 専用スキル【弱点特攻】

● アーチャー:遠距離物理攻撃をメインとする後衛職 専用スキル【ヘッドショット】

● レンジャー:冒険をサポートする支援職 専用スキル【探知】【幸運】

● メイジ:魔法攻撃をメインとする後衛職 専用スキル【魔法攻撃強化】

● プリースト:味方をサポートする魔法を使う支援職 専用スキル【支援魔法強化】

● ネクロマンサー:アンデッドを使役して戦う支援職 専用スキル【死者との契約】

● スミス:武器や防具などを作る生産職 専用スキル【鍛冶師】

● アルケミスト:ポーションなどのマジックアイテムを作る生産職 専用スキル【錬金術師】


「けいかはウォリアーを選んだって言ってたから前衛職だよね。そうなると一緒に冒険するなら支援職や後衛職を選ぶのが良いんだろうけどけいかよりわたしの方がプレイ時間長くなりそうだし一人でも戦えるやつがいいよね。」


 六花はそう言って生産職、前衛職を選択肢から外して後衛職、支援職から一人でも戦える職業を選ぶことにする。


「この中で一番一人でも戦えそうなのはアンデッドがいれば一人でも戦えそうなネクロマンサーかな。指示を出して戦うってスタイルも昔ポイントガードやってたわたしにはピッタリだしこれにしよう。」


 バスケ経験者でもある六花は当時攻撃を組み立てるポジションを任されていた。それもあってアンデッドをうまく使って戦うという戦闘スタイルに感じるものがあった。


『ネクロマンサーでよろしいですか?』


 確認に『はい』を選択してクラスを確定する。


『合わないと思った場合はLv30まででしたらクラスを選びなおすことができます。ただし、レベルは1に戻りますのでご注意ください。それではこれから始まりの街グラゼに転送します。フレデリカ様、行ってらっしゃいませ』


 音声が終わると同時に視界が白い光に包まれる。




 足が地面についた感覚を感じると共に視界も回復した。無事にフレデリカとしてゲームに降り立つことができたようだ。


「まずはけいかと合流かな。確かけいかのプレイヤーネームはケディだったよね。」


 フレデリカはメニューを開いてフレンド検索からケディにメッセージを送る。そうするとしばらくして遠くからフレデリカを探す声がする。


「おーい、フレちゃーん。」


 声をする方を振り向くと賑わう街の中でもけいかの面影が残る少女を見つけることができた。


「ケディ。」


 向こうもフレデリカを見つけたようで思ったよりもすんなり合流することができた。


「ここ重いしちょっと離れない?」


 大人気ゲームの始まりの街のスタート地点。なおかつフレデリカが立っていた場所の後ろには全損したプレイヤーのリスポーン地点である大聖堂があるここはこのゲームで最も動作が重くなる場所らしい。しかも今日は日曜日とプレイヤーが多く集まる条件がそろっており、歩くだけでラグを感じるほどである。フレデリカはケディに連れられて移動することになった。


「それでフレちゃんはどのクラスにしたの?」


 歩きながらケディが聞く。


「いろいろ考えたけどネクロマンサーにしたよ。」

「えっ、あの最弱職って言われてる?」


 ケディは驚いて立ち止まる。


「ネクロマンサーって最弱職って言われてるんだ。なんで?」


 そう言われてもフレデリカはマイペースに返す。


「まあ、うん。理由はいろいろあるんだけど、まず単純に強い魔物を従者にするのがめちゃくちゃ難しい。海外の人がいろいろ検証したらしいんだけど魔物を従者にするためには魔物を倒すときにモストダメージとラストアタックの両方を取らないといけないんだって。しかも従者の魔物の攻撃を含めずにね。で、そこまで頑張ってランダム抽選。それでいて支援職だから大した火力も出ないしでまず従者を1体作るのも大変らしいよ。」


 聞いた話を要約するとまず支援職だから火力が低くて一人で魔物を倒すのが大変。でも、一人でダメージ出さないと魔物が仲間になってくれない。仲間が増えないから探索が捗らない。探索が捗らないからお金も稼げず装備も強くならないから火力が出ない。火力が出ないから強い魔物が仲間にならないと悪循環に陥るらしい。それなら他の職業やった方がいいってなるらしい。


「まあ、いろいろ言われても実感ないからちょっと戦ってみたいな。」

「じゃあ街の外出てちょっと戦ってみない?わたしも弱いって噂しか聞いたことないしフレちゃんならいい使い方思いつくかもしれないし。」


 そんな話の流れでフレデリカは初実戦を迎えることになった。

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