のろわれすみか -呪われ代行・荊禍栖-
軽乃くき
のろわれすみか
手のない女
序
霊能者、と聞いて、あなたはどんな人物を思い浮かべるだろう。
数珠を持ったパーマのおばさん。結袈裟を首から下げた山伏。浄衣姿の陰陽師。もしくは、いかにも現代風なきっちりとしたスーツを着込んだ社会人とか、少しアバンギャルドな格好をした個性的な若者とか。
いずれにしても、よれよれのスウェットの男が出てくるとは思わないはずだ。
「やぁ、そっか、約束は今日だったっけねぇ。このところすっかり日付の感覚がなくって駄目だよ、引きこもりの弊害だ。あー、そこ気を付けてね、ちょっと床腐ってるからね」
いかにも今起きたばかりという空気を纏った彼は、後頭部をわしわしと引っかきながら、うはは、と笑う。あまり楽しくなさそうな、息の抜けたような声だ。感情がスカスカしている人だ、と思って、私は腹の底に力を入れた。
わかりにくい人との会話は、すこしだけ疲れることを知っている。
「そんじゃあ、まずは話を聞こうか。ぼくの仕事はまず、そこからだ」
にたりと笑顔を作る。私は宇多川さんの手を引いて、言われた通り手前の床を避けながら――少し湿ったかび臭い部屋に足を踏み入れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます