第11話 【悲報】クズ主人公、ヒロインにガチ切れされる【ざまぁ】

――――【隼人目線】


 昼休みのことだった。


「兄さん……」


 輝美が教室のドアの陰からこっちを覗いて、様子を窺っていた。


「おー、輝美! そんな端っこにいてないで入ってこいって」

「うん!」


 俺が輝美に声を掛けると隣に女の子を連れてきていた。赤髪の長いボブカット、背は百四十センチ台と決して高くはないが、活発そうな顔立ちをしている。彼女は『ピュアキス』の中で輝美の良き相談役だった子だ。


「輝美の友だちの今井涼子です。よろしくです」

「おおっ! ありがと! 輝美は引っ込み思案だから友だちになってくれて、俺はうれしい!」


 俺は涼子と握手を交わすとうれしさの余り、彼女の手をぶんぶんと振ってしまう。


「お、お兄ちゃん……恥ずかしいよぉ」

「輝美ちゃんのお兄さん、もっと怖い人だと思ってたけど、優しいね」

「うん、私にはいつも優しいよ」


「ああいいなぁ、妹に優しい兄貴って。本当に居るんだね。それに比べ、うちはダメだわ……」


 俺は知らなかったが涼子にも兄がいるらしい。俺は輝美の良い兄貴でありたいと思った。


 いつもは輝美だけが来るのだが、彼女が友だちを連れてきたということは……。


「もしかして、二人ともテマキを見にきた?」

「うん……」

「はい! 輝美ちゃんから聞いて、見たいと思ってたんです」


 ミー! ミー! ミー!


「かっわいい!!!」


 涼子が実に女子らしい声を上げる。テマキを机の中から出すとその愛らしい姿に輝美も涼子も頬が綻んでデレデレになっていた。

 俺と輝美とその友だちの涼子とで幸せなときを過ごしていたのに詰まらない事件が起こる。


 また性懲りもなく俺の教室へと麗が来ていたのだが、今朝とは様子が違った。


 騒がしいので声を掛けるが……。


「おい、麗。何してんだ?」

「隼人くん」


 麗が俺に手を振り、こちらに向かってきたときだった。


「麗! なんで影山に呼び捨てされて――――」


 パッシーーーン!


 悠一が麗の手を掴もうとすると、麗によって悠一の手が強く振り払らわれる。


「隼人くん、あの子怖いです」

「麗、そんな近寄るなって!」


 麗は悠一から逃げるように俺の下へ駆け寄っており、まるで俺が痴漢から麗を保護したような感じになっていた。


 クラスメートたちは痴話喧嘩でも始まったのか? といった目で麗と悠一を見ている。


「恥を知りなさい! 長幼の序という物を分からない年齢ではないでしょう? 馴れ馴れしく名前で呼ばないでください。虫酸が走るので」


 麗は悠一に辛辣しんらつな言葉を投げつける。そういえば麗ってば好きな奴にはとことん尽くすが、嫌いな奴は徹底的に潰すみたいなところがあったな。


「輝美と涼子は奥に下がってて。ここは危ないから俺に任せろ」

「お兄ちゃん、気をつけて!」

「お兄さん、ありがとうございます」


 俺は輝美と涼子の言葉に頷くと、二人にテマキを託した。二人が廊下に避難するか、しないかのタイミングでなつみが戻ってくる。彼女の手には購買部で購入したであろうパンの入った紙袋が握られていた。


「悠くん、止めて!」

「うるさいっ! なつみは黙ってて! これはボクと麗の問題なんだから!」


 悠一を宥めようと駆け寄ったなつみは奴に突き飛ばされ、机に身体をぶつけようとしていた。


「危ねえな」


 俺は咄嗟に手を伸ばし、なつみの腰を保護する。


「影山くん! あ、ありがとう……」

「あ、いや……変なとこに触れて済まねえ……」

「い、いいの……気にしないで」


 俺はなつみが不憫でならなかった。


 悠一のためにパシリしたのに突き飛ばされるなんて……。しかもなつみは悠一のために手作り弁当を用意してきたのにも拘わらず奴はいらないとほざきやがったんだ。


 俺がなつみだったら地中深くに埋めるか、海の底に沈めてしまうだろう。


 それでも悠一に尽くせるなつみは負けヒロインにも拘わらず、神ってる。

 当の悠一はなつみの気持ちをまったく理解しようともしない相変わらずのクソ野郎だが。


「そんな……そんな……そんな馬鹿なことがあって良い訳ない!」


 悠一は止せばいいものを武術の師範代でもある麗に向かっていき、彼女の両肩を掴む。


「ボクは恋研の会長なんだ! 会長のボクに会員の麗が逆らっ――――」


 悠一が麗へ憤りの叫びを上げようとすると……。


 パッシーーーン! パッシーーーン! パン、パン、パン、パン、パン、パン、パン、パン、パン、パン、パン、パン、パン、パン、パン、パン!


 麗はボクがまるで彼女の召使いが口答えしたかのように何度も何度も平手打ちしてきて、もう何度叩かれたのか分からない。


「相沢ぁぁぁーー! 喧嘩は止めろ!」


 俺は喧嘩する二人を見ていられなくて、すぐさま仲裁に入った。悠一の身体を押さえ、麗へ危害を加えないよう頑張った。


 しかし……。


 パン、パン、パン、パン、パン、パン、パン!


 俺の頑張りも虚しく喧嘩は収まることなく、悠一は麗に頬を叩かれ続ける。


「影っ山っ! ぶっ! わ、わざと……ぶひっ! いだっ! ボクをっ押ざえだだりょ! 麗っ! ぶふっ、ぜんばい……や、やめて……も、もう……しない……か……ら……」


 ビリリィィーー。


 悠一が俺の腕の中で力なく意識を失いかけたときに麗のブレザーの袖が引っかかり、破けてしまった。


 戦意を失った悠一の顔は「ボクの顔を食べなよー」の自己犠牲ヒーローのように腫れ上がっており……。


 ――――パンパンマンだ……。


「ぶっ!」


 不謹慎にもクラスメートから漏れた今の悠一にぴったりな形容に吹きそうになる。


 ――――クックククッ。


 それは俺だけじゃなくクラスメートたちも同じで喧嘩の後だということが信じられないくらいみんな笑いをこらえていた。


 麗もハンカチで口を押さえ、笑いをこらえているが目元を細めていたので気持ちはみんなと同じらしい。


 平手打ちの嵐を止めた麗は腰に手を置き、悠一を蛆虫を見るかのように蔑んだ目で見下ろしていた。


「何をして……」


 そこへ教師たちが喧嘩の知らせを聞きつけたのかやってきたが騒ぎが収まっていた様子を見て、拍子抜けしてしまったようだった。


―――――――――あとがき――――――――――

作者、数日前にGQuuuuuuXを観てきました。一言で言えば、なんちゅう掴みを持ってくるんだw ここではネタバレを避けますが、観ようと思っている方がいらっしゃれば直ぐに観てくるべきだと思いました。

サンライズだけではできなかったことをやってくれましたよ、カラーは!


GQuuuuuuXが面白かったという読者さまはご評価を、まだ未見という読者さまはフォローを……って、それはダメですからねw

フォロー、ご評価は作者の作品について、お願いいたします。

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