第26話 喰らう者、喰らわれる者
「ヴィヴィ様が、必ず殺せと申された意味は理解できるが……。こんな面白そうなおもちゃを皆でなぶり殺しにするなど、もったいない」
「たしかに、たしかに。倒れた連中には悪いが、実力が足りておらなかっただけよのぅ」
「とはいえ、遊びがすぎるとヴィヴィ様にお叱りを受ける。そろそろ、やつを倒すとしようか」
「承知、承知。すぐに我が軍団を呼び寄せるから、お待ちあれ」
ネクロマンサーが杖を掲げ、呪文を唱え始めると、地面から無数の手が伸びてきた。
這い出してきたのは、腐臭を放つゾンビや、骨だけになったスケルトン。
さらには先ほど倒したレッサードラゴンと、レッサーデーモンの死骸が動き始めた。
「数を増やしても俺の餌になるだけだぜ」
レッサードラゴンの口に刺さったままの大剣を引き抜くと、反対の手にシャドウストーカーの剣を構え、二刀持ちになる。
対多数の技で雑魚処理しないとな。
「そうはならん。行け! やつを殺せ!」
ネクロマンサーの号令に答え、アンデッド軍団が俺に向かって動き始めた。
「待て、待て、我が先だ! その首もらい受ける!」
淡い光を帯びた大剣を構えたゴブリンチャンピオンが、巨体からは考えられないほどの素早い動きで、こちらとの距離を詰めてきた。
素早い突き、予期せぬ角度からの斬撃。
油断すれば致命傷になりかねない一撃が次々に繰り出される。
集中力を研ぎ澄ませ、ゴブリンチャンピオンの一撃一撃を丁寧に捌いていく。
けれど、単体であればもはや怖い敵ではないと確信できた。
ゴブリンチャンピオンが奇声を上げ、さらに攻撃の速度を上げる。
しかし、俺は既に見切っていた。
「攻守交替だ。俺の剣を受け止められるか?」
「ぬかせ! お前ごときの剣など――」
【幻影剣】を発動させ、剣先を複数化させ、ゴブリンチャンピオンを幻惑させる。
【幻影剣】が発動した二刀で打ち込み続けると、ゴブリンチャンピオンの身体に傷が増えていった。
「くっ、小癪な技を。このままだと……」
ゴブリンチャンピオンの動きを完全に捉え、渾身の一撃を叩き込む寸前、アンデッド軍団が割り込んできた。
「邪魔なんだよっ! 雑魚が!」
俺はゴブリンチャンピオンのトドメを後回しにして、【大地の怒り】を発動させ、大剣を地面に向かって力いっぱいに振り下ろした。
大剣によって割れた地面から、ひび割れが拡がっていき、大きな地割れが起きるとゾンビやスケルトンたちが落下していく。
地割れが勢いよく閉じると、ゾンビやスケルトンの潰れる音がした。
残ったアンデッドの群れに剣を振るい、薙ぎ倒していく。
一体一体は弱いが、数が多いため、油断すると囲まれてしまう。的確に急所を狙い、確実に仕留めていく。
あっと言う間にスケルトンとゾンビの軍団は一掃された。
レッサードラゴンもレッサーデーモンもゾンビ化したことで、能力が下がっており、苦戦することなく再びの死をを与えた。
「くっ! 我が軍団をよくも!」
「だが、我が助かった。ネクロマンサー、助力を頼む。アレはたしかに強敵だ」
「承知した」
再びネクロマンサーの杖が輝き始める。また、アンデッドを召喚するつもりらしい。
「やらせるかよ」
飛行状態で一気に距離を詰め、大剣でネクロマンサーの杖を弾き飛ばす。
「杖がっ!」
「アンデッド軍団がいなきゃ、お前の力は半減だな」
「ガッ!」」
杖を取ろうとしていたネクロマンサーの身体に蹴りをぶち込むと、壁に吹っ飛んでいった。
ゴブリンチャンピオンが割り込んでくるが、剣を回避し、壁に吹っ飛んだネクロマンサーに追撃をする。
「雷光」
光属性に弱いネクロマンサーの身体に雷が落ち、ブスブスと黒い煙を上げる。
逃げようとするネクロマンサーを追いかけ、その背中を大剣で貫く。
力尽きたネクロマンサーは、黒い霧となり、身体を覆っていたローブだけが地面に落ちた。
「くそ、ネクロマンサーをよくも!」
「俺を侮り続けるから、やられるんだよ」
奪ったスキルが身体に取り込まれる。
【スキル名】隷属
【効果】対象者を自分の支配下に置くことができる。隷属した者を自由に使役できる。永続効果。
【スキル名】死霊召喚LV1
【効果】ゾンビを召喚し、一定時間共に戦う。召喚されたゾンビは敵の注意を引きつけ、ネクロマンサーを守る盾となる。LVアップでゾンビの数が増える。
【スキル名】生命吸収LV1
【効果】敵単体に闇属性の魔法ダメージを与え、与えたダメージの一部を自身の傷の治癒に利用する。LVアップで闇属性ダメージ増と回復量の増大。
「あとはお前だけだぞ。ゴブリンチャンピオン」
大剣と剣を構え直す。
ゴブリンチャンピオンが、ジリジリと後ずさりを始めたところで、闘技場の地面が動き出し、いくつも部屋がせり上がってくる。
「そこまでです。神々戎斗! これ以上、魔物を喰らうのは私は認めません! その命、頂きます!」
闘技場の客席から姿を現したのは、ヴィヴィと呼ばれていた女魔人だった。
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