第20部 39章〜43章

39.章 リヴァイヤサン─神龍しんりゅう





魔導士はすでに、詠唱をはじめている。




蒼古そうこなる神龍よ



光を天にかえし、形なす静寂をあらわ



大気に潜む無尽むじん湧水ゆうすい



清廉せいれんたる波濤はとうとなりて



千年の戦果となし、



咎人とがびと清浄せいじょうな、渦に飲み込め」




雷雲らいうんが立ち込め、いかずちをはらんだ黒煙が船体の周りを取り囲んだ。




「召喚獣 リヴァイアサン」




激しいいかずちが発光し、あたりを明るく照らす。



雷雲らいうんをまとった、リヴァイアサン─神龍が荒れた海原うなばらの空に、出現していた。



その、巨大な神龍は、こちらを認めると、



船べりの欄干らんかんを破壊しながら、船へ飛び込んでくる。



「きゃっ!」



船は大きくかたむき、カリナは滑り落ちないよう懸命に、手すりしがみつく。



神龍は水柱を、まき上げながら、魔力をめている。



{ タイダルウェイブ }



ためていた膨大な水がうずをまき、水柱は合わさっていく。


それが巨大な壁になって立ち上がり、津波となって一気に船へと襲いかかった。


大波は容赦なく船内に侵入する。


船は木の葉のように水に巻かれ、大きく上下した。


船上にいる、死霊たちも波に飲み込まれ次々に、海に落ちた。



カリナはククルを助けようと、必死に手を伸ばした。



「ククル…!」


暴れるククルを捕まえると、なんとか欄干らんかんに掴まらせる。そこで、カリナの手が海水で滑ってしまった。



「きゃっ…!!」



カリナが船の欄干らんかんから滑り落ちる。



それを、さっと魔王がカリナの腕をつかみ、抱き上げた。



「…無事か?」



魔王は、カリナを引き上げると、少しホッとしたようだ。



「は…い…」



自分が落ちたかもしれない、暗い水面をみて、カリナはゾッとしている。




『このままでは、船は長くもたない。海洋に投げ出されれば、我はともかく、カリナが危ない…』



魔王はそう思案する。



その様子に、魔導士は高笑いをしている。



「ははっ…どうしました?カリナに、情でもわきましたか。」



魔王は魔導士を睨んだ。



魔導士カシウスは、心底楽しそうに嘲笑ちょうしょうする。



「もたもたしていると、船は海の藻屑もくずとなって、カリナも、残りの乗員も、みんな死んでしまいますよ。」




魔王は嫌がる、カリナを安全な船室に押し込める。



「魔王様…待って、わたし…!」



バタンと扉は閉じられた。



魔王は大きく、身をそらせて、一気に魔力を解放すると、漆黒の波動はどうをまとい、



目が眩むような、まばゆい黒炎を発する。



閃光せんこう(せんこう)がおさまると、魔王は、巨大な黒竜闇ドラゴンに変身した。





40.章 変身




魔王は黒炎をまとう、巨大な黒竜闇ドラゴンに身を変えた。



雷雲らいうん吹き荒び、高波が突き上げる、海洋の真ん中に、リヴァイアサンと闇ドラゴンが出現する。



神龍は雷雲をまといながら、こちらをうかがっている。



たける黒竜は、リヴァイアサンにむかい、咆哮ほうこうした。



神龍は、黒竜の明らかな殺意を認めると、



身をひるがえして、マストを破壊しながら黒竜に飛びかかる。



リヴァイアサンの勢いと、大口おおぐちに噛みつかれ、闇ドラゴンは、船から暗い海溝かいこうの底に、引きずり込まれてしまった。



41.章 カシウスvsカリナ




カリナは閉じ込められた、扉を押し破ると、急いで欄干らんかんまで出て、海洋を眺める。



「魔王様っ……!いない…?!」



焦るカリナに、魔導士カシウス•オルデウスが目に入る。



カリナは魔法の杖を握りなおすと、今度こそ魔法を成功させなければと、詠唱をはじめる。




「地獄の底に眠る篝火かがりびよ、



いにしえの眠りより覚醒し、



さばきの手をかざせ。」



「ダーク•フレイム!!」




《…シーン……》




『こんな時でも!?……今、魔法が出てくれなきゃ、いつ出るの…!?』




カリナの動きに気づいた、カシウスは、距離を一気につめる。



《ドゴッ!!!!》



杖で自らを守ることもできずに、カシウスの魔法の杖で殴打おうだされ、吹っ飛んだ。



船の壁に激突げきとつして、カリナは頭から血を流す。



「おっと。おいたはダメですよ。」




「魔法使いといえど、前衛ぜんえいがいなければ、動きながらの、詠術えいじゅつが求められるんです。」




そう言いながら、杖を手癖てくせでクルクルと振りまわす。



「正直、私はあなたとは場数ばかずが、違いすぎますから。」



カリナは脳震とうを起こして、朦朧もうろうとしている。



「…ぅぅっ…」



『どうしよう…。わたしじゃ、とてもかなわない…。』






42.章 一目惚れ





ガレオン船から離れた、深い海底が鈍く光り、海面が隆起する。



《ドゴォォォォォン!!!!》



黒炎の火柱ひばしらをバーストさせ、黒竜は爆発の勢いで、海面に出た。



巻き上げられた、海水は雨のように甲板に降り注いだ。




それを船上で目撃した、カリナ。




「…あのドラゴン!!…まさか魔王様…!?」




黒竜は、荒ぶる龍神リヴァイアサンと対峙している。





「………………。」





「……………………。」




カリナはその光景に目を見張った。




《ズズズギューーーン♡♡》




「…………かっ…………。」




「……かっ……かっこいい……♡♡♡!!!」




『なにアレ!!…野生み溢れる筋肉…!!』




『ドラゴンの魔王様……!めちゃくちゃカッコいい!!』




カリナは一目で、闇ドラゴンに心臓を鷲掴みにされる。




こうしてカリナは、魔王に心奪われてしまった。




43.章 決着





黒竜は神龍に向けて、魔力を溜めている。



黒竜はノドの奥を、まばゆく光らせると、たけりながら、黒炎のブレスを吐きだす。


その吐き出された、業火で辺りの海洋は、文字通り火の海となった。



激しい炎に追い立てられ、海中に逃げる術もなく、リヴァイアサンは、くうを逃げまどう。



黒竜は、うろたえる神龍を見逃がさない。



前腕を合わせ、魔力をくうにこめると、魔槍まそうを光り輝きながら出現させた。



それを、巨大な牙でくわえると、大きく振りかぶり、逃げるリヴァイアサンに向けて、投射した。



《ザンッッーーーーッ!!!》



リヴァイアサンは魔槍に身体を貫かれ、断末魔をあげて、海底に沈んでいった。




─勝負は決した。




闇ドラゴンに、黒い炎がまといつき、



魔王は変身がとけ、元の人型に集光しゅうこうした。



そうして、海はふたたび、静寂に包まれた。




※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


あとがき



「面白かった!」



「続きが気になる、読みたい!」



「今後どうなるの!!」



と思ったら



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