魔力ゼロの悪役令嬢が 最強の魔女になれたのは、優しい魔王さまの嫁だから

恋月みりん

第1部 プロローグ 1話〜3話


1.章 プロローグ



わたし、カリナ•オルデウスは侯爵令嬢として生を受け16歳まで生きてきた。



侯爵家として、最強魔術師の家系に生まれながら、わたしは、まったく魔力を持つことなく生まれてきた。



この家で魔力以外の価値判断など、ないというのに。


『役立たずの、わたし。無力なわたし』



『家族にとって、死んで──当然のわたし』



オルデウス家──。

王家から代々、まかされた封印を守るべく、存在している、古代から続く名門の家系。



代々、強い魔力を濃い血統で守り、受け継いできた一族。


なぜ我が一族、オルデウス家は長きに渡り、名門たりえているのか──。


はるか昔、古代の魔王を封印せしめ、それを今現在まで守り、封じる役目を粛々と生業としてきたからだった。 


──そう、我が家の地下には秘密がある、  


封魔ふうまのくびきに繋がれし、いにしえの魔王。今なお、封じられ眠っている。



『──わたしは、知っている。


そう、家族でわたしだけ。


わたししか知らない、魔王の秘密。』



この魔王の血統けっとうを身に宿すことができれば、強大な魔力を持つことが出来る。



誰にも虐げられない、誰にも収奪されることのない。大いなる力が手にはいる。


そうなればもう、



誰にも、わたしの命を、生き方を、奪われたりはしない──。



目をつむると、5歳のころ。子供の時のつらい記憶が蘇る。



「お父さま、みてください。こんな難しい魔法学の本が読めるようになりました。」



わたし、カリナ•オルデウスは、そう言って、高等魔法大学向けの、魔法学の本を誇らしげにみせた。


父は、わずらわしそうに、わたしを一瞥する。


「なんだその程度で得意になっているのか?くだらないことで、呼び止めるな、恥を知れ。」


つぎに、妹のリリア•オルデウスが話す。


「お父さま、みてみて、リリアも小さいけど、炎が出せるように、なったのよ」


「おー!!すごい。リリアは将来、偉大な魔法使いになれるかもしれないな。」


そう言うと今度は、わたしに、お叱りがとぶ。


「カリナはもう少し妹を見習い、魔法を練習しろ。」


わたしは、くるりと背を向けると、本を抱きしめ走り出す。



「なんだ、カリナは本当にかわいくないな。妹のリリアと違って素直じゃないし。」


わたしは、もう何も聴きたくないと、もっと足早に駆ける。


そうして、書蔵室しょぞうしつに逃げ込むと、本を抱きしめ、人知れず涙をぬぐうのだった。



2.章  断頭台の前 ゲームオーバー 残り0日。



GAME Over .


ゲームオーバー 残り0日。



11月、灰色の空は低く、陰鬱としている。



空気は刃のように肌を刺しピリつく。



深く息をすれば肺さえも凍りついてしまいそうな、そんな日……。



わたしは断頭台の前に引き出された。

もうすぐ、カリナ•オルデウスは死ぬのだ。



王太子妃にと望まれた、婚約も、なにもかもが虚しい。

王も王太子も、婚約破棄の違約金を惜しんで、ありもしない不貞ふていをでっち上げ、わたしを殺すのだ。



もう、すぐ、わたしの意識、16年間連続して続いてきたカリナ•オルデウスの意識は消える。


永遠にこの地上から。


もう、今日の夕日をわたしは見ることさえ、許されない。少しの寂しさ、それもすぐに消えて無くなる。


もう一度、垂れ込めた、厚い雲を眺め、息をつく。もう太陽を見ることは叶わない。



でも、大丈夫。これから、もっともっと高いところに昇っていくのだと、その時に輝く太陽が見られるはず。そう自分に言い聞かせた。



一羽の鳥が、垂れ込めた空を横切りながら、わたしの頭上を飛んでいく。



わたしは、それを寂しく見つめていた。



『誰にも捕まらず、お前は自由に遠くにいくんだよ……』



そう呟き、その息も白く、細く流れた。



断頭台の刃にも朝霜が降りている。願わくは、滞りなく、痛みなく死にたい。



刃がしもで、なまくらになっていませんように、わたしは懸命に神に祈った。たくさんの困難を与えた神に、それだけは、それだけはと願った。



処刑執行人はわたしの名前を一字一句間違わす読み上げた。



ああ、もうだめだ、わたしは前に進みでた。



最後の瞬間、元婚約者の王太子に目をやる。



彼はわたしから目を逸らし、こちらを見ようともしない。



『さよなら、王太子様。愛なんて、不毛で下らない、御伽話だと教えてくれて、ありがとう。』



首をかせにかけたら、もう目を瞑るしかない。



『いまごろ、お父様とお兄様は不出来なわたしを恥じて、腹を立てているはず。』



愛なんていう不確かなものを求めて、他者に命運を握らせるようなことは、もう二度としない。



さよなら、みんな、家族も、誰も味方なんていなかったんだ。



寒空さむぞらの元、一羽の白い鳩だけが、いつまでも、いつまでも、心細く飛んでいた。





3.章 逆向転生 ファースト デイ 残り3日。




First DAY──ファースト デイ。


ゲームオーバーまで残り3日。



気がつくと、わたしは空を見ていた。



初秋の柔らかい太陽。我が家の庭園。落葉樹があかく色づいていていて、美しく……?



ここは王宮の処刑場しょけいじょうでは無いの?



わたしが動揺して、東屋あずまやの机に目を落とすと書きかけの日記がそこに。



──DC225.October10月 .13の文字。



わたしが…無実の罪で逮捕される。─3日前の10月13日に戻っている。



手首にはなぜか、砕けた、ブレスレットがはまっている。


─これは輪環りんかんの腕輪。死してもう一度、人生をやりなおすことができる、太古の昔に存在したという、秘宝中の秘宝の腕輪。


なぜこれがわたしの手の中に…。


─わたしは首を振る。そんな事どうでもいい。


きっとこれが最後のチャンス。もう一度だけ運命を変える事が出来る。



なんとしても─。



絶望の運命から、逃れる方法を探さなくてはいけない。



もし選択を間違えれば、わたしは、またあの断頭台の前に立たされる。



逮捕の3日前─たったの3日前……。



一刻もはやく、今すぐ、逃げ出さなくては。



『いいえ。…今すぐ逃げても、きっと女の足では、すぐに捕まってしまう。』



もう全てを無かったことにできるほど、時間はない。


それでも…諦めない、諦めたくない。



─わたしの頭は、ある事を思い出して、すうっと覚醒した。



何があっても、例え、人を殺す事になったとしても、わたしは過ちを繰り返さない。



絶対に、裏切られて、おとしめられても、悔し涙はながさない。



必ず、生き残って見せる。



その為にはもっと、知恵を絞って、そして思い切った手段を取らなければいけない。



その為には──。




※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


あとがき


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