第三十六話・やってやろうじゃないの!
「ダンさん! こっちこっち!」
バイクに乗ったダンさんがサンライト号に向かってくる。
「これが預かった品物だ」
「ありがとね。隆之くん! 持ってきてー!」
徳大寺特性の洗剤が入った箱を持ってくる隆之。
「これだよぉ。よろしくおねがいしますぅ」
「うむ。確かに預かった」
バイクに積み込みながら辺りを見回すダンさん。
「どうしたの?」
「いや、サナダ殿はおられるか」
「車の中に居るわよ。今日は決闘なしだからね」
「いやいや、そうではない。ちと話がしたかっただけだ」
タイミング良く真田がサンライト号から降りてくる。
「おぉ、ダン殿ではないか!」
「サナダ殿! 体の具合はもうよいのか?」
「あぁ、もう何ともないぞ」
「そうか。それは何より。次の決闘を楽しみにしておりますぞ!」
「拙者も楽しみにしておりますぞ!」
「それでは!」
真田との挨拶を終えたダンさんが去っていく。
「何か打ち解けてるねぇ」
「敵対してるはずなんだけど、ご近所付き合いみたいになってきたね」
「わたしの知ってる厄災はこんなんじゃ……」
「ドンちゃんの襲撃ってのがあったけど、それ以外で厄災が何かしでかしたことは?」
「……特に目立った動きと言うのは無いような……」
「厄災って何なんだろうね?」
「世界を滅ぼす者と言われてるんじゃがなぁ……ダリルは、文献に出てくる厄災っぽくないんじゃよなぁ」
「今度、ダリちゃんにじっくり聞いてみよっか」
荷物の受け渡しが終わり、魔の国へと出発するサンライト号。
「サラ、魔の国って平和? また闘技場とか勘弁なんだけど」
「それは大丈夫じゃ。魔の国で決闘とかは無いからな」
「本当に〜?」
「本当じゃ!」
「期待半分で信じてあげるわ」
「たまには信用してくれてもいいじゃろが……」
舞依の心配をよそに、サンライト号は魔の国へと近づいて行く。
「サラ、そろそろ?」
「この林を抜ければ見えてくるぞ」
「サラちゃんや、魔の国とはどんな雰囲気かいな?」
「美味しいお食事はあるのかしら?」
「街を守る城壁は白く光り輝き、空には七色のカーテンがかかってるんじゃ。料理は期待してもらってよいぞ」
「それは楽しみじゃわいな」
「どんなお食事ができるのかしら。ワクワクしちゃいますね」
「トミさんもハナさんも、観光じゃないんですからね」
「まあまあ、楽しみの一つくらいあっても良いじゃろが。ほら、そろそろ見えてくるぞ」
「ついに魔法少女の国が!」
「トクダイジは、魔の国と言えない病気なのか?」
「ねえサラ」
「なんじゃい」
「あれが七色のカーテンなの?」
「うん? えっ、あれは、どうなっとるんじゃ……」
「赤黒い空に、小型のドラゴンが飛び回ってるんだけど」
「地上には魔獣や魔物らしきものが溢れかえっておりますな」
「拙者には、何やら応戦しておるようにも見えるが……」
「サラ、これってもしかして……」
「しゅ、襲撃されているんじゃー!」
「なに?! ならば、助太刀せねばなるまい!」
「魔法少女を救うのは私の義務! 隆之くん! 出動です!」
「ハナさんや。わしらも行くとするかいな」
「もちろんですわ。美味しいお食事のためですもの」
「ちょ、ちょっと待ってみんな! 小型とは言えドラゴンよ! おまけに大量の魔獣や魔物まで居るのよ! 危険すぎるわ!」
「舞依さん。義を見てせざるは勇無きなり! 武士として捨て置けぬ!」
「そうですぞ。我々には救えるかも知れない力があります。このまま何もせずに後悔するのは勘弁願いたい」
「ちょっとだけ待って! ダリちゃんが仕掛けてるのだとしたら、止めさせる!」
テレビ通信を起動させる舞依。
「ダリちゃん!」
『マイちゃん、そんなに興奮してどうした?』
「どうしたじゃないわよ! 魔の国襲わせてるでしょ! 今すぐ止めさせて!」
『えっ? そんな事してないけど……』
「ドラゴンや魔獣が魔の国襲ってるのよ! ダリちゃん以外に誰が居るのよ!」
『待て待て! うちに居るドラゴンはドンちゃんだけだ。後は翼竜が十頭。それに黒騎士のダンさん。それが全部だ』
「えっ……それだけ?」
『そうだよ。だから、そんな戦力はうちには無い』
「じゃあ、あれは一体……」
『ちょっと見せて』
ダリルが見えるように画面を向ける舞依。
「どう?」
『知らんな……』
「本当にダリちゃんじゃないのね?」
『違う……わたしはこんなの……』
「分かったわ。ありがとね」
テレビ通信を切って皆の方を向く舞依。
「ダリちゃんじゃなかった……」
「舞依ちゃん、やろうよぉ。このままじゃ魔の国が……」
「今は何とか耐えているようですが、如何せん数が多すぎます。見たところ、前衛職らしき者が見当たらない様子。魔力が尽きてしまうと……」
「徳大寺の心配も当然じゃな。舞依さん、拙者は助太刀に参りますぞ!」
「舞依ちゃんや。わしらの心配してくれるのは有難いがな。わしは、もう後悔なんぞしたくないわいな」
「過ぎた心配は無用ですよ。ケ・セラ・セラですわ」
舞依の表情が変わった。
「みんなの気持ちは分かりました。確かに、このまま見過ごしては行けないわよね」
「マイ、わたしも頑張るぞ」
「ありがと、サラ。よっしゃー! やってやろうじゃないの! ヒノモトブシ! 戦闘準備よ!」
【ヒノモトブシは正体不明の軍勢との戦闘準備に入った】
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