第二十話・魔獣!

「本当に大丈夫なんでしょうね?」


「親書があれば問題ないと言うとろうが!」


「妖精の国でね〜安心しろとか言われたのに〜牢屋に入れられたのよね〜。あんたの言うことは信用できないのよ!」


「あ、あれは……すまんかった……」




 一抹の不安を感じながら獣の国へ向かう一行。


 順調な旅を続ける一行の前に、行く手を阻む障害が現れた。




「これじゃ向こう岸に渡れないわね」


「サンライト号は水陸両用なのですが、このレベルは流石に無理ですな」




 幅が広いだけでなく、流れもかなり早い河がそこにあった。


 橋があったと思わせる残骸がほんの少し残ってはいたが、さすがの徳大寺でも修復は無理であった。




「困りましたな。地図によると、他に道は無さそうです」


「この河を渡れるようにすればよろしいの?」


「ハナさん。その方法が無いんだよぉ」


「ちょっと試してみてよろしい?」


「何するんですか?」


「まあ、見ててくださいな。ほい!」




 ハナさんが掛け声とともに杖を河に向ける。


 すると、河が白く凍っていき、氷の橋が出来上がった。




「こんなものでいかが?」


「ハナさん、やるわね」


「ビバ! 異世界! 素晴らしい!」

 



 ハナさんの機転により、あっさりピンチを脱した一行。


 河を渡りしばらく走ると森が見えてきた。


 今日はその森でキャンプすることにした。




「サラ。この辺は魔獣って出るの?」


「本来は恐れる必要などないんじゃけど、こないだの一件があるからなぁ」


「また現れる可能性があるのかなぁ?」


「案ずるな。拙者が返り討ちにしてくれるわ」


「念のため、少し仕掛けをしておきましょう。その前に、テントを作っておきますか」




 徳大寺が錬成によりテントを作成し、真田が薪を集めてきた。


 ハナさんとトミさんは、夕食の準備に取り掛かった。舞依も一応手伝いに入る。




「隆之くん。ちょっと手伝ってくれないか?」


「いいですよぉ。何すればいいですかぁ?」


「このセンサーを二メートル間隔で、キャンプを囲むように設置してほしい」


「はぁい。設置してきまぁす」




 キャンプの準備は着々と進んだ。


 やがて陽が落ちる頃、夕食も出来上がった。




「では、いただきまーす!」


「肉のストックが無くなってきとるよ。徳大寺、肉は出せんのかいな」


「どうやら、食べ物や生物は無理なようです」


「そうであったか。ならば、狩りでもせねばなるまいな」


「野菜ならありますし、インスタント食品もありますよ。狩りなんてしなくても大丈夫ですよ」




 真田は狩りに行きたそうだったが、舞依は少しでも危険なことから遠ざけたかった。


 実際、まだ食料調達を考えるほど食材は減っていない。


 万が一食材が足りなくなったら、その時に狩りをすればいい、舞依はそう思っていた。




「お腹いっぱいだよぉ」


「ニホンショクとやらは本当に旨いな。城の調理人に教えてやってほしいな」


「今度行った時に教えてやるわいな」


「さて、明日も早いうちから出発です。早めに寝るとしましょう」


「そうね。一日車に揺られて疲れちゃったし、早めに寝ましょう」



 食事を終えて就寝タイムに入ろうと立ち上がった一行。


 その時、設置してあったセンサーのランプが点き、警告音が鳴り響いた。



「なになに? どうしたの?」


「まだ正体は分からないけどぉ、何かが近づいてきたみたいだよぉ」


「どうやら、狼のようなものが近づいてきたようです」


「食後の運動にちょうど良かろう。少し暴れてくるとするかの」


「わたしゃここで飴でも食べながら見とるよ」


「あら、わたしはどうしましょうか?」


「ハナさんはぁ、ここから火球で援護すればいいと思うよぉ」




 魔獣に囲まれていると言うのに、今ひとつ緊張感に欠ける一行。


 魔獣は五頭確認出来た。


 真田は朱雀に手をかけた。


 周りを明るくするため、ハナさんが火球を飛ばす。


 地面に置くように飛ばされた火球が周囲を照らす。


 魔獣の一頭が真田に飛びかかってきた。



「追え! 朱雀!」



 振り抜かれた朱雀から、五本の白い光が放たれた。


 その光は魔獣に向かって飛んでいき、五本の光全てが魔獣に突き刺さった。



「まずは一つ」



 真田の左方向から一頭が飛びかかる。


 それを見たハナさんが杖を振ると、一瞬にして魔獣が燃え尽きた。



「あら、上手くいったわね」



 ハナさんが一頭を消し炭にする間に、真田は更に一頭を仕留めていた。


 魔獣は残り二頭。


 真田は上段に構え、二頭の魔獣を睨んでいる。


 魔獣は、真田の気迫に押されて動けずにいた。


 それを見た真田が動く。



「はっ!」



 真田の声に弾かれたように飛びかかってくる二頭。


 右の野獣を一刀両断にする真田。


 その真田の左横を火球が飛んでいく。


 その火球は残り一頭の魔獣を焼き尽くした。




「これで終いかの」


「もう居ないみたいね」


「センサーも反応しないしぃ、撃退成功だねぇ」


「そうじゃ、その獣の肉は食えるんかいな?」


「やめといたほうがええぞ。クッソ不味いからな」



 サラに言われてガッカリするトミさん。



「それにしても、二人の息ピッタリだったね!」


「カッコよかったよねぇ」


「サラちゃん、記念に毛皮を持って帰りたいのだけど、よろしいかしら?」


「もちろん。すぐに剥いでくるぞ」


 真田とハナさんの活躍により魔獣を撃退した一行。


 獣の国までは、あと少しである。


 【ハナさんは魔獣の毛皮を手に入れた】

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