第十一話・うそでしょ!

 徳大寺の趣味的実験を終えて、食事の続きと今後の方針を決めるため施設へ戻る一行。


「冒険するとして、無計画なのはどうかと思うの」


「冒険にトラブルは付き物。詳細な計画は必要ないだろう」


 舞衣と徳大寺の意見が合わない。


「でも、無計画は良くないですよ」


「しかし、計画を立てるためには、この世界を知らねばならんよ」


「確かに……でも、どうやって調べます? ネットもないから調べようがないですよ?」


「じゃあ、サラに聞いてみれば良いんじゃないかなぁ」


「そうね。たまには役に立ってもらいましょ」


 そして、施設に戻った一行が見たのは、ナベを全て平らげて横になるサラ。


「あんた! 全部食べちゃうってどう言うことよ! 起きなさい!」


「うっ、食べ過ぎた……旨すぎるのが悪いんじゃ……」


「全くもう。それだけ食べたんだから、ちょっとは役にたちなさいよ」


 今後の事を貴之がサラに説明した。


「そうじゃな。下調べ無しでは厄災退治もできんな」


「どうすればいいのかな?」


「今後色々と動き回る必要もあるしな。一度妖精の国へ行くか」


「わたしたち怪しまれたりしない?」


「それは大丈夫じゃ。任せておけ」


「そうなの? じゃあ任せたわよ」


 他に情報を集める方法もないため、サラの言う通りにする事にした。


「クルマとやらがあるから、半日もあれば着くじゃろ」


「でもぉ、全員行くならワンボックスなんだけどぉ、ガソリンが残り少ないよぉ」


「うむ。それなら私に考えがある。ちょっと試してみよう」


 徳大寺が駐車場へ向かった。

 舞衣と貴之がそれに続く。



 

「どうするんですか?」


「まあ見てなさい」


 徳大寺がワンボックスと電気自動車の二台に手を触れる。

 次の瞬間、二台の車が光に包まれていき、やがて一つのシルエットが浮かび上がる。


「出来た!」


「何これ……」


「すごぉーい!」


 そこに現れたのは、電気自動車とワンボックスが融合した姿である。

 フロントは電気自動車の姿だが、その後ろにワンボックスがキャンピングカーのように融合していた。

 屋根にはソーラーパネルがあり、電気で走ることをアピールしていた。


「どの程度まで作れるのか分からないが、このくらいまでは大丈夫のようだな」


「徳大寺さん何でもあり? そうだ! 元の世界に戻れる装置とか作れないの?」


 全身から煌めきを撒き散らして徳大寺を見つめる舞依。


「それは無理だな。恐らくだが、姿形はどうとでもなるが、原理の分らないものは作れないだろう」


「どう言うことですか?」


「わたしは天才だから大概のものは作れると思う。しかし、知らないものは作れないだろう」


 天才と言い切ったことに舞依が苦笑い。


「つまり、頭の中で設計図を描けるかどうかなのだ。アニメに出てくるロボットなどあるだろ? 立ってるだけのモニュメントは作れても、内部構造が分からないのでは設計図が描けんのだよ」


「そう言うことですか。船や自動車は作れても、宇宙戦艦やタイムマシーンは無理ということですね?」


「そう言うことだ」


「それでもぉ、これはチート級の能力だと思うよぉ」


 舞衣にこの能力があっても宝の持ち腐れである。


「では、これで移動手段が手に入った。準備を整えて出発しようではないか!」


 施設に戻った舞衣が現状を説明し、全員で明日の朝に妖精の国へ出発することが決まった。



 

 そして出発の朝、舞衣が入居者の姿を見て驚いた。


「徳大寺さんのスーツ、真田さんの侍姿はいいんですが、ハナさんとトミさんのは……?」


「これいいでしょう? ハロウィーンとかで使った衣装よ」


 ハナさんが身にまとうのは、三角帽子にマント、手には杖を持っている。そう、魔女の定番スタイルである。


「看護師さんの部屋にあったんで拝借してきた。癒やしの人にはピッタリやろ?」


 トミさんが着るのは、少しピンクがかったナース服。なかなかのインパクトである。


「だ、大丈夫かしら……追い返されたりしないでしょうね……」


 一抹の不安を抱える舞依。

 舞衣以外は久々のお出かけに笑顔炸裂である。

 笑顔の要因の一つに、移動車両が快適なことも考えられる。

 徳大寺作成の移動車両は【サンライト】と名付けられた。

 販売しようとすれば、コスト的に絶対不可能な装備や車体性能により、かなり快適なものに出来上がっていた。


「ところでサラ」


「なんじゃい」


「本当に大丈夫なんでしょうね? いきなり攻撃されたりしないでしょうね?」


「大丈夫じゃ。それは絶対にない」


「なんで言い切れるのよ! なにか策があるんでしょうね」


「策なんかいらん。わたしが一緒なら問題ないんじゃ。厄災退治にも付いていくから安心しろ」


「はあ? なんでサラが一緒だと問題ないわけ?」


「だって、わたし妖精の国の第一王女じゃから」


 沈黙のあとに全員の驚愕する声が車内に響き渡った。


 【妖精の国の第一王女がパーティーに加わった】

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