第6話 JSなら中出しOK?
「これで8人はメドが立ったわけだけど、あと1人、新入生に野球に興味が有りそうな人居ない?」
咲良が一年生3人訊ねた。3人は思い当たる節が無い様子である。暫しの沈黙の後、菊池が口を開いた。
「そういえば桃が居たじゃん。あいつ野球部に入るんじゃない?」
それに対して、丸が直ぐにそれを打ち消した。
「馬鹿。変な事言うなよ。入って来られたら困るだろ。」
「桃君って子が居るのね。どうしてその子は駄目なの?」
「凄い悪い奴なんです。」
「不良なの?」
「いや、そういうのじゃないんですけど・・・・・・・何て言えばよいのか・・・・。」
言葉に詰まる丸に菊池が助け船を出した。
「一言で言えば桃はトラブルメーカーなんです。ろくでもない鬼畜です。」
「鬼畜?」
「そう。鬼畜です。」
「どういうふうに鬼畜なの?」
咲良の問いに丸と菊池は顔を見合わせた。菊池が大笑いする中、丸は困ったように言った。
「桃は交際している女の子がいるんです。」
「それが?」
「実は付き合っているのが小学校の3年生で。」
「えっ!そんな小さい子と!」
「何でそんな小さい子と付き合ってるか分かります?」
「ロリコンなの?」
「それも有りますが、桃が言うには「小さい子だと中出ししても妊娠しないから」って。そういう風に言うんです。」
あまりにも生々しい話に咲良は顔を赤らめた。聞いていた中沢も微妙な空気感を出した。この桃という子は何という鬼畜なのだろうか?咲良は野球部に入れたら絶対に問題ごとの種になるだろうなと漠然と考えた。菊池が言う。
「それだけ切り取って話を聞いたら、とんでもない奴に聞こえるけど、桃は鬼畜だけど良い奴だよ。小学生とも援交している訳でもないし、真剣交際だし。なによりもメンバーが揃わない現状、桃の力が必要だよ。」
咲良はじっと考え込んだ。高校生が小学生に真剣交際なら性交を、しかも中出しして良いモノだろうか?男の子と付き合った事の無い私には分からないが、今は普通なのだろうか?
「野球の能力はどうなの?」
「率は悪いけど、飛ばす力は天性のものが有ります。肩も強いです。」
「守備も上手いし、足も速い方だし、悪いのは頭だけだよ。」
咲良は迷った。が、ここはディールである。パワーヒッターで守備が上手くて足が速い。欲しい。何よりこの桃という子を獲得すれば9人揃う。何年振りか青学単体で夏の大会に出れるのだ。手塚君にも面目が保てる。手塚君と甲子園に行けるのなら悪魔とでも取引だ。咲良は決断した。
「その桃君という子を野球部に誘いましょう。丸君と菊池君で誘ってみてくれる?」
「本気で誘うんですか?・・・・・・。」
「そうこなくっちゃ!」
丸と菊池は対照的な反応を見せた。
「本気も本気。大マジよ。今日の放課後出来たら連れて来て。」
「はあ・・・・。分かりました。」
丸は気の無い返事をした。
「ところでその桃って子。何て名前?」
「結城桃太郎です。」
「結城・・・桃太郎・・・?あだ名?何でそんなあだ名が付いたの?」
菊池が爆笑する。
「あだ名じゃなく、れっきとした本名で。親が昔話の桃太郎の様に逞しく育って欲しいって付けたそうです。」
丸の説明を聞いて、咲良は唖然とした。確かに逞しそうだが桃太郎って・・・・・・。キラキラネームみたいなモノだろうか?キラキラネームの人は、普通の名前の人よりも犯罪を犯す確率が高いという統計が出ている。こいつは大丈夫なのか?とても不安だが、とりあえず会ってみよう。今後の事はそれで決めようと咲良は決断したのであった。
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