監獄都市ボルガノフ:午前の巻 06
【朝:5:00】
ボルガノフの朝は早い。
囚人たちは監視塔の鐘の音で目を覚まし、点呼のために房の外へ整列する。
「番号を言え!」
「囚人番号8861001988!」
刑務所が一人ひとりの生存を確認し、不在者がいれば即座に監獄中に警報が鳴り響く。
(あれ?なんか昨日より囚人の数少なくないか?)
ショウジは妙な胸騒ぎがした。
【朝の運動:5:10】
点呼の後、軽い準備体操を終えると監獄の運動場を50周するランニングが待っている。
元引きこもりのショウジにはこれが一番辛い。
モタモタしていると刑務官にひっぱ叩かれる為なんとか走るが、やはり体力というものは限界がある。
学校の持久走で走り終わったクラスメイト達の見せ物になっていたのを彼は思い出していた。
【朝食:6:30】
ボルガノフに来て初の食事の時間である。
ショウジはここ食堂で同期以外の囚人というのを始めて見た。
皆ボルガノフで生き延びているということもあって面構えが違う。
中には全身が毛に覆われ、頭部が獣の形をしている獣人などもいた。文字通り面構えが違った。
食堂は、派閥ごとに座るテーブルが決まっている。
奥の広い席を占拠している狡猾そうな集団の派閥。
出入り口近くで威圧的に食事する全身傷だらけでガタイが良く人相の悪いならず者達が集まる派閥。
真ん中の方で常にギャーギャー騒ぎ立て、たまに乱闘騒ぎになり刑務官に取り押さえられている全員頭がイッている派閥。
そのどれにも属さない孤立した囚人は隅に固まるしかない。
それだけでも陰鬱としてくるが、食事の内容は更にひどい物だった。
見たことの無い食材が、見たことの無い調理法で、見たことの無い色と嗅いだことの無い匂いを発し、舌に運べば食物とは思えないテイストをショウジ達にお届けしていた。
「ヴッッ……!ヴォエ゛ェェ……」
ショウジを含め、初めてこの食事と相対した囚人達は皆口を抑えトイレへと駆け込んでいく。
その光景を先輩囚人達はクスクスと笑い物にしていた。
一方同室の男(?)はこの食事を黙々と食べていた。
【7:00~12:00 刑務作業】
刑務作業は二種類に分かれる。
1. 工芸品制作・インフラ建設などの平和的作業
2. 魔物討伐などの戦闘作業
作業量によって刑期が短縮されるため、真面目に働く者もいれば、賄賂で手を抜く者もいる。
囚人たちはこの時間、生き延びるために働くか、策を巡らせるかを選ぶことになる。
今回ショウジ達に課されたのは革財布の紐を取り付ける単純な作業だが、単純な作業というのは続ければ続ける程、頭が狂っていく。
ショウジも最初の方は難なく作業をしていたものの途中で財布がゲシュタルト崩壊を起こし空腹もあったせいで思わず口に運んでいたこともあった。
【昼食:12:00】
再び食堂へ。朝と同じく、勢力ごとの座席で食事が行われる。
食事のクオリティは朝食とさほど変わらない。
手軽に美味しいものが食べられていた現代日本で生きていたショウジには耐えられない代物だ。
だがこのまま食べなければショウジは死んでしまうだろう。
少し離れたところで同室の男ははこれから飢えて死にゆくだろう同室の男(?)は諦めた様子で眺めていた。
「フヴッッ…… 『ゴクッ』 ハァ…ハァ…ハァ…」
「!」
同室の男は目を見開いた。
ショウジが食べたのだ。
彼は鼻をつまむ、水で流し込む、脳内でメチャクチャエ○い妄想をして気を紛らわすなどあらゆる手段をとりなんとか食事の2%ほど摂取することに成功した。
「ハァハァ、こんな訳も分からず死んでたまるか……ん?」
ショウジの元に同室の男が食事のトレイを持ってやってきた。無論男(?)は完食していた。
(すげえ)
目の前の猛者にショウジが感激していると男は口を開いた。
「私の名はヴィクト…ル。ヴィクトル・ルーヴェインだ」
途中言いごもりつつ名乗った彼女は、トレイを持って立ち去っていった。
「?」
(何故急に名前を…?)
突然名乗ったヴィクトルの謎行動にショウジは頭にハテナマークを浮かべる。
こうしてショウジはボルガノフでの一日の半分を終えた。
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