腕輪の違和感 04
鉄格子の門をくぐるとそこは先程から視界の大半を占めていた高くそびえる壁の中であった。
「すげえ…」
壁の中は大人三人分ほどの幅の通路上になっている。
闇にのまれている程の高い天井、その暗闇に微かに抗うように蝋燭が仄暗くポウポウと灯っており、その刑務所の中にある幻想的な風景にショウジが魅入っていると、
「とっとと進め、ガキ」
という言葉と共に後ろにいた囚人に足蹴にされた。
壁の中を少し進んだところでショウジ達囚人は刑務官から配られた囚人服に着替えさせられた。
着替えの為、縄は外されたが、誰も逆らう気配は無い。
体力や魔力を著しく低下させる結界が壁の中で張られている為だ。
囚人服はショウジがいた世界のアメリカの刑務所ようなオレンジのズボンにジャケットだ。
背中には何故か大きく5と書かれており、右胸には囚人番号が刻まれている。
囚人番号 8860110988
それがショウジに与えられた番号だった。
皆あらかた着替え終わるとの奥へと刑務官に命じられ、ショウジは他の囚人と共に整列させられた。
次に数人の刑務官が順番に囚人に一人一つずつ腕輪をつけていった。
「腕を出せ」
無理やり左手を掴まれ、冷たい金属の腕輪をはめられる。
無機質な黒色の腕輪はショウジの腕にはめられると、白い数字を浮かび上がらせる。
(これが俺の
【88】
それが現在のショウジの
「っしゃ!勝ったぜ!俺【1005】!」
「ッざけんな!なんて俺がコイツより低いんだよ!!
こんなことならついでにガキの一つや二つ殺っときゃ良かったぜ!」
「ケヒヒッヒ、四桁到達するのには苦労したぜ。
三桁前半の奴とか、どの面下げてボルガノフで生きてんのか分かんねえよケヒヒッヒ」
この中でも特段にガラの悪い二人組が猿のように叫び出した。
まるで定期テストが返された直後の高校生のような会話である。
その様子を見たショウジは、元の世界で悪かったテストをクラスのヤンキーに晒された思い出がフラッシュバックしていた。
本来
惨めである。
道徳の概念が存在しない囚人達のカルチャー内ではカタギな奴ほどバカにされるのだ。
というかここまで危険度がないのなら
ショウジは切実にそう思った。
「これはお前たちの魔力量を1%以下に制限する拘束具だ。万が一、外そうなどと企んだ場合は…分かるな?」
魔力――。
ショウジには慣れない概念だ。
しかし、ここではそれが存在するらしい。
漫画やラノベに出てくる魔力と似たようなものだと思っておけばいいだろう。
とショウジは自分を納得させることにした。
「魔力がある者には強烈な負荷を与える仕様だ」
刑務官のその言葉にショウジは疑問を覚える。
特段変化もなく、何も感じなかったからだ。
(俺には魔力が無いってことか?異世界人だからか?)
結論は出ないまま、ショウジはただ腕輪に締められた腕を見つめた。
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