真夜君との休日デート(美美子視点)

*** 美美子視点 ***


「ねぇねぇ、そう言えばさ、高橋君はどうするの?」

「どうって?」

「ほら、高橋君の好きな人はまひるじゃん? でも、まひるの好きな人はもう……」


 真夜君と電車に乗ってお台場に向かっている最中、私はその事を真夜君に聞いてみた。


 この状況になってから思うけど、ほんと、真夜君は凄いなって思う。だって、女の子の心を奪いきったんだからね。まぁ私は更に、その男の子の心を奪おうとしてる訳なんだけど……。


「それか……。真昼とミミは知らないだろうけど、高橋はもう、俺が真昼の事が好きなのは知ってるんだ」

「……え!? そうなの!?」

「喧嘩中の最初の月曜日にな」


 それを聞いて思い当たる節が1つあった。お昼休みの時、真夜君と高橋君が何処かに行っていた事があったけど、もしかしてあの時に?


「あの時は真昼もブルーな時で、俺に恋を自覚してない時だったからな。高橋は今でも、まだ間に合うかもとは思ってるかもな。そのために色々努力してる訳なんだし」

「何だか、それはそれで悲しいね……」

「同情はしない。それと、高橋については真昼が自分で何とかするようだ。『期末のテスト勉強の時に話す』と、この間言ってたよ」


 そっか。真昼は高橋君との幼馴染としての関係に終わりを告げようとしてるんだ。でも、もしこれで真夜君の心が私に向いたら、まひるは……。



「真昼からの伝言だ。『気にしないで、みーちゃん』だとさ」

「私の考えバレてた。……まひる、強くなったね」

「ほんとにな。恋を自覚してからの真昼は心が強くなったよ」


 真昼について話す真夜君の表情はまだまだ優しいあの時の表情だ。もう3週間しかないけど、まだこの牙城を崩すだけの、力か足りないらしい。


 だけど、さっき魅せたあの表情。あれはあれで、多分だと、そうも思えた。



「真夜君はまひるの事、好き好きだねぇ」

「……自分を傷つける物言いは好きじゃないんだ。次、自分を傷つける様な言い方をしたら怒るぞ」

「うん、ごめんね、真夜君。えへへへ、私、真夜君に大切にされてる」

「はぁ。……捨て身の行動はやめてくれ。心臓に悪い」

「はーい!」


 本当は半分、自虐でもあったけど、真夜君ならそう言ってくれると思った。そんな貴方だから大好き。



***



「うぅ、ざむい……」

「お台場は海辺が近いもんな……」


 そうして私たちはお台場へとやってきたけど、江の島同様、こっちも寒かった。真夜君はそのまま進もうとしたけど、袖を掴んで引き留める。


 付き合ってないとは言え、デートだし、これくらいは許して欲しい。そう思い、



「……ミミ、これは?」

「分かってるくせに……、真夜君のバカ」


 真夜君は時折、分かっててもやらない時がある。多分真夜君の中では、恋人とそれ以外で、やる事に線引きをしているんだ。


 だから、と言う行為も自分からは絶対にやらない。大切にしてくれるのは嬉しいけど、そこだけは不満だ。


「やれやれ。俺の気も知らないで……」

「いいから。お嬢様の命令!」

「はいはい。仰せのままに、ミミお嬢様」


 苦笑しながらも、真夜君はギュッと優しく手を繋いでくれた。ようやく夢にまで見た真夜君との手繋ぎだ。真夜君の手は大きくって、温かい。それでいて優しさに包まれてる感じになる。もう幸せすぎる。


「うへへへへ」

「変な声になってるぞ」

「だって、まひるの看病の時からずっと羨ましかったんだもん! ほらほら、早く行こ!」

「あいよ」


***


「おー、とーちゃーく!」

「案外、近かったな」


 そうして少し歩いて、私たちはシーサイドモールに到着した。ここは複合モールだから、色々楽しめるんだよね。


(こんなことなら、さっさと連絡すれば良かったよ)


 自分のバカげた乙女心に、今更ながら後悔する。



「えーと、4階だったか?」

「そうだね! 真夜君はトリックアートに行った事は?」

「ない。前々から行きたいとは思ってた」

「へぇー、雫ちゃんとか好きそうなのにね」

「不思議な事に、そんな話は一度も出なくてな」


 それを聞いて嬉しくなる。ちょっと言い方は生々しいけど、真夜君の初めてを私が貰えると思ったら、それだけで変な優越感がある。


「それじゃ、めいっぱい楽しまないとだね!」

「そうだな」


 そうして、私たちは4階に向かいトリックアート展に入場した。因みにここは江戸をテーマとした体験型のトリックアートだ。



***



「はぁ!? 一枚絵だと思ってたのに、こんな凹凸になってるのか!」

「うひゃあ、凄いね、これ!」



「ねぇねぇ、私がお餅を持つみたいにしてみるから写真撮ってー」

「あいよ。…………こんなもんか?」

「おー、なんだかそれっぽく視えるね」

「どっちかと言えば、ミミが持ち上げられてるように視えるけどな」

「餅だけに? …………あぁ、待って待って、無言で行かないでぇ」



「見て見て! 忍者だよ、忍者!」

「くっ、頭では分かってるのに、立体的に視える」

「ねぇねぇ、今度は真夜君が撮られる番だよ!」

「そうだな。えーと、畳を持ち上げるなら……、こうか?」

「あははは! なんだかその恰好、物凄く可愛い」

「その言い方、なんか、癪だな……」



「いのししだぁー」

「ふふ、お2人ご一緒に、逃げてる写真でも撮りましょうか?」

「是非、お願いします」

「真夜君、私を担いで逃げてよぉ」

「遠慮するわ」



「ド定番の自分が大きくなったり、小さくなったりの奴だな」

「私が真夜君より大きくなるー」

「これで、まだ俺の方が大きかったら面白いんだけどな……。何処で大きさが同じになるかもやってみるか?」

「やる! でも、まひるなら大きくなっても真夜君の方が大きそうだね!」

「あははは、それは言えてるな」



「隠し扉は何処ぉ?」

「俺はもう見つけてるぞ」

「えぇ!? ねぇねぇ教えてー」

「ほら、もうちょいだけ頑張ってみろ」



「騙された……」

「あははは! 隠し扉じゃなくて、普通に妖怪さんのお部屋だったねー! あ、こっちが本物じゃない?」

「ミミに負けるとは、悲しい……」

「ねぇそれ、どう言う事!?」

「あははは」

「笑い事じゃなぁぁい!」



「このロウソク、立体的に視えるけど、本当は一枚絵なんだよなぁ……」

「え、そうなの!?」

「似たのを見た事がある。後ろから確認してみな」

「うわっ!? ほんとだぁー!」

「ほんと、錯覚ってすげぇよな」



「サメだ、サメだー」

「なぁ、ミミはどう食われたい?」

「そこは真夜君だよ! 私だけが生き残って、真夜君が崖から落ちる的な」

「めっちゃ現実的な事を言うな……」



***



「楽しかったぁ!!」

「いやぁ、中々に面白かった!」


 ゆっくり見て回ったけど、大体1時間半くらいだろうか、真夜君と見たトリックアートはとても楽しかった。写真もいっぱい撮ったし、ツーショットも沢山ある。どれも宝物と言っていいくらいだ。


 けどそれ以上に、トリックアートを見ている時の真夜君の目が、少年の様に輝いていて、本当に楽しそうだった。


 それが物凄く嬉しくって、幸せだと思えた。


「真夜君、珍しくはしゃいでたもんね!」

「錯覚は分かってても騙されるからな。新鮮な気持ちで見られるから、割と好きなんだ」

「また新しい真夜君の一面だ」

「忘れたか? 俺たちはまだ出会って今月で半年だぞ? 知らない方が多いに決まってる」


 それもそうだって思った。もっとずっと長くいた気になるけど、真夜君とは知り合ってまだ半年しか経ってないんだ。


「えへへへ。そう思うと私、これからもいっぱい真夜君に惚れる要素があるって事なんだね」

「……来月で全部決着が付くのにか?」

「それはまひるを選んだ場合だよ。私を選んでくれれは問題ないよ! だからいっぱい私に惚れてねっ!」


 満面の笑みでそう答えてあげれば、真夜君はポカンとした表情になる。


 追う立場ではあるけど、私だって、まひるには負けたくないんだ。これくらいは言うんだよ、真夜君。



「はぁ……。手強い女の子な事で……」

「ふっふぅ~ん! 恋する女の子は最強だからね!」

「そうだったな……。さて、それじゃ帰るか」

「えぇー、夕飯も一緒がいぃいー」

「これから戻れば、夕飯時の良い時間だろ」

「!? 確かに!! もう真夜君、大好きぃ!」

「はいはい」



 なんだかんだ真夜君は夕飯までちゃんと考えてくれてたらしい。そんな貴方だから私は恋をしたんだ。



(だから早く、真夜君も私に恋をして欲しいな)



 そう考えつつ、今度は私の方から、真夜君の手を繋いで、一緒に戻る事にした。

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