男子会
「来たか……、お前が最後だぞ」
「よっ! 真夜、それと皆も。すまんすまん、ちと寝坊したわ」
「「おはよう、高橋」」
日曜日の休日、俺は灰猫というカフェで、裕也、雄太、高橋の3人と待ち合わせをしていた。最近は真昼やミミと一緒にいる事が多くなっていたが、俺も男だ。こうして男同士だけの話もしたい。
と言う訳で、今日はこいつらを招集した。
(まぁ、それ以外にも目的はあるがな……)
「それにしても、こうして真夜と遊ぶのは殆どなかったから、何だか新鮮だ」
「そうだな。なんだかんだお互いに都合が合わないとかザラだったしな」
そう言う訳で、ようやく実現したこの男子会。思う存分に語り合おうではないか。
「つーか、なんでこのメンツ何だ? あぁ、別に嫌と言う訳じゃねぇぞ?」
「真夜がこうして、男友達と遊ぶ事の方が稀だから嬉しいけどね」
「なぁ、裕也。俺を友達が少ない悲しい人間みたいに言わないでくれないか?」
「人の事を言えた立場じゃないけど、実際少ないと思うけどね。むしろ、女友達の方が多くなかったか?」
ぐっ、それを言われると返す言葉がない。確かに中学の時は男友達よりも女友達の方が多かったかも。
(……あれ? それって、今とそんなに変わらなくね?)
真昼、ミミ、優花ちゃん。それに如月さん、九十九先輩、それに村田さんや小町さんなど、俺が普段よく話す人数だけで言うなら、男よりも女性の方が多い気がする……。
「ん? 真夜の表情が暗くね?」
「きっと、事実に気付いたんだろうね。うちのクラス以外にも、如月さんと言った人たちと色々交流していたし」
「あははは。つまり、タラシって事か!」
「黙れ、高橋。俺は何としてでも、タラシから卒業するんだ!」
「「「無理だな」」」
3人全員から否定される俺って一体何なんだろう。なんで誰も応援してくれないんだ……。そして俺はテーブルに突っ伏し、ぼやくしかなかった。
「嫌なんだよ。自覚しちまったからこそ分かるんだ。今回も来るんだよぉ……」
「「今回も?」」
「それは当日になれば2人とも分かるよ。……覚悟を決めな、真夜。もう無理だ」
「やはり、そうなのか……」
もう、当日は受け止めるしかないのか……。
「ま、まぁそれは置いといて、今日は何をするんだい? せっかくの男4人だ。なんでも出来るぞ」
「そうだな。真昼たちもいないからハードな遊びも出来ると思うな」
「真夜の事だから、別の目的の為に呼んだ気もするけどね」
流石、俺の親友だ。よく分かっている。正直俺もこのメンツなら何でもやれるだろう。だが、その前にやらないといけない事があるんだよ。
「……お前ら、来週は何があるか分かってるよな」
「「「バレンタイン」」」
「そうだ。年に一度、クリスマスと並ぶ、女子たちが積極的になるであろう日だ」
だからこそ、来て欲しくないんだがな……。
「真夜も俗っぽい事言うんだな」
「男だからな。……でだ。バレンタインは女子から男子へチョコを渡すのが日本文化だ。……だがな、海外だと逆で、俺たちがプレゼントを渡す日なんだよ」
「……続けてくれ」
裕也を始め、3人とも表情が変わったな。
「だけど、これはそこまで日本じゃ浸透していない。つまり、……サプライズとしてもってこいじゃないかと俺は思うんだ」
「「「!?」」」
「各々、チョコを貰うだけでいいのか? 向こうは俺たちに喜んで欲しいと、恐らく昨日今日あたりにでも雫たちはチョコの試作品を作っている筈だ。雄太の彼女は流石に分からんがな」
「きっと、作ってるだろうさ」
「ならば、その気持ちを受け取るだけでいいのか? お返しはホワイトデー。だが、日頃の感謝や気持ちを伝えたいのは別に女子たちの特権ではない。俺たちも同じだ」
「言われてみりゃ、そうだな。特に俺は真昼と仲直りしたばっかりで、それから先には進めてねぇ。このままじゃ真昼はお前に……」
すまん。もうお前に勝ち目はないんだ……。だが、友人としてその努力と想いだけは応援する。
「確かに、雫から貰いっぱなしというのは嫌だね」
「俺もだ。彼女の家は中々厳しい所だから、もっと想いを伝えないといけないと思っていたんだ」
雄太も中々四苦八苦しているようだ。家が厳しいとそのうちお見合いとか勝手に入れられそうだよな。いや、これは小説の読み過ぎか。
「と、言う訳で。これからプレゼントを買いに新宿や渋谷といった大きめのショッピングモールに行くぞっ!」
「「「おうっ!」」」
気合いの入った掛け声と共に、俺たちは真昼たちへのプレゼント選びに向かう事で話が纏まった。
***
「真夜は誰に渡すんだ?」
「真昼、ミミ、それと優花ちゃん」
「「クズだな」」
俺たちは現在、渋谷のショッピングモール内にいる。小物系ならここが1番だと思ったからだ。そして、高橋から誰にあげるつもりなのかと言われたから素直に答えてみればこれだ。……いや、分かるけどよ。
「真夜、いつの間に1人増やしたんだい?」
「その言い方には多大な語弊がある。……優花ちゃんはもうそろそろ受験だからな。元気付ける為にだ」
「なぁ、そういう所じゃねぇのか?」
「その言葉はやめてくれ。俺に効く」
どうしようもないだろ。流石に真昼だけに渡したら渡したで、ミミが泣くだろうし。優花ちゃんからは、『チョコ楽しみにしてくださいね!』とメッセージが送られて来た以上、1人だけ除け者には出来ないんだ。
「真夜って、いつか刺されるよね」
「それ、割と洒落にならない話だから止してくれ」
「あははは。真夜の場合はそうだね」
「「?」」
それはもう時期分かることだ。まぁ俺のクズプレイは置いといて、何にするか決めなければ……。
「裕也は何にするんだい?」
「クリスマスでそれなりに使ったから、今回は髪飾りにしようかなと。雄太は?」
「オルゴール。彼女、大好きなんだ。まぁそれは俺もだけど」
「分かるよ。彼女の好きな物って意外と自分と同じだったりするんだよね」
「……なあ真夜、柊からバカップルの匂いがするんだが、気のせいか?」
「気にしたら終わりだ」
会わせる前から馬が合うだろうと思っていたのだが……、成程、俺は無意識に雄太からバカップルのオーラを感じ取っていたのか。
「そんな事より、高橋は何にするんだ?」
「……さっきインテリア系のアクアリウムがあったから、それにしようかなって。真昼、魚好きだし」
ほぉ、きちんと真昼の好きな物に焦点を当てて、選ぼうとしているのか。成長したなぁ……。
「その顔だけで、俺をバカにしてるのが分かるぞ」
「はて、何の事だ?」
「はぁ。お前はどうするんだよ。言っておくが、同じ奴にするとか言うんじゃないだろうな」
そんな事はせんよ。まぁ高橋が選ばなかったら選んでた可能性は高いけどな。
「真昼とミミにはアクアハーバリウム。出来ればLEDライト付きだと良いな。それと、優花ちゃんには緊張をほぐす目的で雄太と同じオルゴールを」
「アクアハーバリウム?」
「ドライフラワーや小さい魚のミニチュア等を瓶に入れ、オイルで満たした観賞用の標本みたいな物だ。意外と作るのも簡単とは聞くが、まぁそれは見つからなかった時の最終手段だな」
「へー、そんなのが……。やっぱタラシの思考はスゲェや」
「そういうのが元凶じゃないのかな?」
「言えてるね。まぁ真夜のこれは今に始まった事じゃないから今更さ」
「もう俺のライフはゼロだよ」
ここまで総ツッコミされたら、俺だって泣くぞ。
***
その後、俺たちは渋谷、新宿等を周り各々満足の行く物を入手する事が出来た。なので、今は近くのカフェに立ち寄り、遅めの昼飯にしている。
「雄太がいて助かった。いいオルゴールが手に入った」
「礼には及ばないさ」
「これで、皆のプレゼントは買えたなぁ……。後は当日だぜ!」
「とは言っても、バレンタイン当日は土曜だから実際は前日の金曜日が勝負だろうな。裕也は土曜か?」
「勿論。雫の家に呼ばれてるからね」
「リア充め」
「羨ましかったら、真夜も早く作るんだね」
「言ってろ」
俺の返事はホワイトデーだから当分先なんだよ。いや、長いとは思うが結局色々立て込んでるからそうでもない気がして来た……。
「にしても、移動とかでもそうだが、視線ヤバかったな。そんなに俺たちって目立つか?」
「贔屓目で見ても、俺たちはそれなりに整ってるからね」
まぁ、このメンツだとそうなるよな。ちょくちょく逆ナンもされたし。
「裕也、雫に逆ナンはバレないようにしておけよ」
「多分無理だろうけどね。雫、そういう時の鼻は効くから」
「へぇ、それは初耳だ」
「山口さんもそう言うの敏感そうだよね」
「真昼は敏感だぜ? 中学時代、真昼がいない時に一度だけ逆ナンされた事があったけど、家に帰ったらニッコリしながら怒ってる真昼がいたからな」
なにそれ。ちょっと見てみたいかも。だって絶対に可愛いじゃん。でも、そうか。女性ってそう言う嗅覚凄いんだな……。
「ま、女の子は怒らせないのが1番って事だな」
「「「同感」」」
高橋、同意してるけどお前は怒らせた側の人間だからな?
「というか、さっさと飯にしよう。流石に腹減った」
「そうだね。そうそう真夜、今度山口さんとデートするんだろ? 何処に行くんだい? 参考にするから」
「マジでお前、刺されねぇよな?」
「あははは。これはまた楽しそうだね」
「はぁ……」
この日はプレゼント以外、主に俺へのいじりがメインだった気がするが、まぁたまの男子会だ。こういう日もまた、いい休日だろう。
そう思いながら、裕也たちにデートプランについて話す事にした。
因みに、翌日の月曜日、高橋がポカした事で、真昼とミミに逆ナンされた事がバレるのだが、それはまた別の話だ。
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