バレンタイン
バレンタイン準備(真昼視点)
*** 真昼視点 ***
「あ、雫ちゃん!」
「真昼ちゃん、美美子ちゃん! 久しぶりー」
「久しぶり、雫ちゃん! 元気だった?」
「私は毎日が元気だよー!」
休日の土曜日、今日は駅で雫ちゃんと待ち合わせをしている。というのも、来週末は女の子なら誰もが力を入れる大イベント、バレンタインが控えているからだ。
そして、それは私も同じ。今までは健斗に出来合いの物を贈るだけにしてたけど、今回はそんな事したくない。
だって──。
「いやぁ、2人の顔を見るだけで分かっちゃうね。真昼ちゃんも美美子ちゃんも、真夜に物凄くメロメロだね!!」
「「っーーーー!」」
大好きなシンヤに、最高に美味しい手作りチョコを渡したいんだから!!
「えへへへ。今年に入ってから、もっと真夜君に恋してるよぉ」
「私もね、ちゃんと自覚してから、どんどんシンヤにハマってるの。むしろ、恋しない方が難しいわね」
「あははは、そりゃそうだよ、まひる。だって真夜君だよ?」
「ふふっ、確かにそうね。シンヤだもんね!」
「「ねぇーー!」」
「おぉー、恋のライバルなのに、前よりも仲良くなってるね!」
みーちゃんに宣戦布告したあの日を境に、みーちゃんとはより一層仲良くなれたと思う。きっと、本当の意味で親友になれたんだ。
「そう言えば、優花ちゃんは来れなかったんだね」
「優花は今ごろシンヤと勉強中よ。この間、お休みにしたから、その分今日は厳しそうなのよね」
元々は優花も連れて来る予定だったのだけど、『私はいい奴を予約してるから大丈夫!』と言っていたんだよね。
正直、いつの間にとも思ったけど、きっと日頃の感謝を込めたいんだと思う。
まぁそれはそれとして──。
(優花と2人っきりというのは、妬いちゃうのよね)
優花はシンヤを義兄のように懐いてるとは言え、やっぱり気になってしまう。
「再来週の月曜日だもんね、受験は」
「真夜ならそこら辺のメリハリはきっちりしてるから大丈夫だね! ……私の時は酷かったよ」
一体、高校受験の時、何があったんだろう。雫ちゃんの表情は明らかに恐怖で歪んでいた。
「な、何だか大変だったんだね」
「そりゃもうっ! 女の子の私に与えた睡眠時間なんて、たったの3時間だよ!? それも裕也と泊まり込みでやるからサボる事も出来なかったし……。少しでも気を抜くと、ハリセンで叩いて来るとかザラだったよ。……2人とも、シンヤを本気で怒らせない方がいいからね」
それを聞いて物凄く怖くなった。勉強でそれなら、それ以外で怒らしたらどうなるんだろうか。気になるけど、やめておこう。
「ま、そんな話は置いといて! 先ずは材料を買いに行かないとだね!」
「そうだね! 真夜君に美味しいって言ってもらうために頑張るぞぉー」
「そうね、みーちゃん。シンヤに美味しいって言わせましょう!」
そうして、私たちは各々好きな人の為にチョコやそれ以外の材料等を買いにスーパーへと向かい始めた。
***
「真夜はね、チョコだと甘いのも好きだけど、ビターの方が好みなんだよね。後は柑橘系も好きだよ」
「おー、大人だね!」
「と言うことは、少し渋めのチョコを選んだ方が良いのかしら……」
「そこは2人の真夜に対する想いだね。いやぁ、何にするのか楽しみだ」
「雫ちゃんはどうするの?」
「裕也は私と同じで甘めの方が好きだから、アレンジが効きやすい、トリュフチョコにするつもり」
雫ちゃんってお菓子作りも得意なんだ。料理も出来るし、服も作るれる。まさに完璧と言わざるを得ない。
「雫ちゃんって、真夜君と同じで何でも出来るね」
「そんな事は無いと思うけどねー。さあさあ、一旦解散して、各々材料を買おう買おう!」
今日の雫ちゃんは普段よりも元気だ。きっと月城君へのチョコを作るのが楽しみなんだね。そうして私たちは一度解散し、材料を集める事になった。
(柑橘系かぁ……)
チョコに合うもので思いつくのはオレンジやレモンだ。オレンジだとオランジェットにするのもありだけど、あれは物凄く時間がかかるし、そもそも不器用な私に作れるかと言われたら難しいと思う。
「とは言っても、柑橘系にするのも違う気が……」
きっとみーちゃんは柑橘系にすると思う。シンヤが大好きな物を選ばない筈がない。だから私も柑橘系にしたい気持ちもあるけど、何だか比較されそうで怖い。
シンヤがそんな事をしないのは分かるけど、やっぱり考えてしまうものだ。
「うーん」
スマホを取り出し、バレンタインチョコのレシピを検索する。柑橘系や雫ちゃんが作ろうとしているトリュフでのアレンジ、ガトーショコラ等色々出てくるけど、どれもピンと来ない。
(あら?)
そこでスマホを操作していた指が止まる。たまたま目に入ってきたガトーショコラのアレンジレシピがシンヤに合いそうだと思ったからだ。
(正直、不器用な私からしたら上手く出来るか怪しいけど……)
それでも作ってみたい。きっと出来たら喜んでくれると思う。それにお菓子作りの授業の時、彼は言っていた。
──誰かに美味しく食べてもらいたい。そういう想いがあると自然と失敗しなくなるんだ
(誰かに食べてもらいたい……)
その相手は決まってる。大好きなシンヤに、私が一生懸命作ったチョコを食べて欲しい。美味しいって言って欲しい。
(よし!)
なら迷う必要はないと思い、レシピに書かれている材料を揃えつつ、念の為カカオの割合が多いチョコも入れ会計を済ませた私は、集合場所へ向かう事にした。
***
「まひるおそーい」
「ごめんね、みーちゃん。中々決まらなくって……」
「それだけ、真剣に考えてたんだね!」
私が来た頃には2人はもう集合場所に来ていた。皆それなりに袋が大きい。きっと試作品も含め沢山作るんだろうね。
「まひるは何にしたの?」
「私はコレよ」
私はみーちゃんたちに買った物を見せた。
「あれ? 柑橘系にしなかったんだ」
「あー、確かに真夜はそれも好きだったね!」
「ええ、だからコレを入れたガトーショコラが作れたらなって……」
「そっかぁ。そう言えば、真夜君美味しそうに食べてたもんね! 私はオレンジを買ったからオランジェットにするつもり!」
「え? でもあれって時間かかるわよね?」
「そうだねー。だからそっちは今日から準備して、今日は失敗した時用に、オレンジチョコクッキーでも作ろうかなって」
みーちゃんは2種類作るらしい。それだけシンヤを想っていると思うと、少し羨ましくなる。私も手先が不器用じゃなければ、沢山作れたのかな……。
「ふふふ、2人とも青春してるねー。それじゃ揃った事だし、美美子ちゃんのお家に行こうか。いやぁ、女友達のお家に行く機会って、そんなになかったから楽しみなんだぁ!」
それを聞いて驚いた。雫ちゃんって、みーちゃんみた明るく元気なムードメーカーみたいな印象だから、いっぱい行ってるのかと思ってた。そしてそれは、みーちゃんも同じ事を考えていたらしい。
「なんだか意外だね。雫ちゃんなら、いっぱい行ってると思ってた」
「そうでもないよ。中学は裕也と真夜の3人でいる事が多かったし、高校はそもそも裕也と極一部の友達しかいないからね」
そうだった。雫ちゃんにとって、今いる高校は、ただ月城君と一緒に過ごす為だけの場所だった。
それは何だか、寂しい気もする。
「気にしなくていいよ。こうして、真昼ちゃんらと友達になれたんだから、私はそれだけで嬉しいんだ!」
そう話す雫ちゃんは、周りなんて気にしないと言わんばかりに輝いて見えた。こういう所を見てると、やっぱり雫ちゃんはシンヤの親友なんだと実感する。
「そうだね。私も雫ちゃんと友達になれて、ほんと良かったよ!」
「そうね。私も同じ気持ちよ」
「よーし、みんなで美味しいチョコを作るぞー」
「「「おーー!」」」
一致団結した私たちはみーちゃんのお家に向けて歩き出す。
(ふふっ! 絶対シンヤに、美味しいって言わせてみせるわ!)
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