未来のお義兄ちゃん(優花視点)
*** 優花視点 ***
一体どれくらい寝てたんだろう。今まで重かった頭が軽い。久しぶりにぐっすり寝れた気がする。
意識が戻ってきたので、ゆっくりと目を開ける。そこにはお姉ちゃんと先輩が仲良く肩をくっつけ合いながら楽しく話していた。
(先輩、まだいたんだ……)
こんなにスッキリするくらい寝れたから、きっともう夜だと思ってたんだけど、違ったのかな。
それにしても──。
(本当に、お似合い)
妹の目から見ても、葉桜先輩とお姉ちゃんはお似合いだ。けんにいさんとは違う。お姉ちゃんの事を何処までも大切にしてくれて、一緒の歩幅で歩いてくれる。そんな人だ。
みーちゃんが惚れちゃうのも分かる。私もふとした時にドキッとする時があるんだから、ほんとにタラシだよね、先輩は。
……でも、そんな先輩が、私は大好き。
勉強を見てくれる時に見せる真剣な表情。
問題が解けた際に見せてくれる笑顔。
問題を分かりやすく教えてくれる時の言葉遣い。
自分1人で解けた時に頭を撫でてくれる仕草。
その全部が好き。
最初は推しだけのつもりだったのに、いつの間にか好きになってた。昔けんにいさんに抱いた想いと同じだ。ううん、それ以上だ。
これが恋なんだって理解出来る。むしろ、好きにならない理由が見当たらない。
だけど、私の恋は自覚したと同時に失恋でもある。私には先輩の心を動かせるだけの力はない。みーちゃんのように諦められないと決意する事も出来ない。
だってそれ以上に、お姉ちゃんと先輩、2人が一緒にいるのを、傍で見る方が好きだから。
きっと私は、お姉ちゃんが絡む恋愛で損をする人間なんだ。
先輩の事は好き。恋人にだってなりたい。それでも、それ以上に2人がいる所を傍から見る方が好きだなんておかしいよね。これじゃほんとに推し活だ。
(でも、それでもいい……)
この気持ちを伝える事は一生無い。気持ちを閉じ込めるんじゃない、別の感情に少しずつ変えていく。だからこそ、先ずはここから始めるんだ。
「おねぇ、ちゃん?」
「あら、起きたのね優花。ゆっくり寝れたかしら」
「ふあぁ〜、うん……。どれくらい、寝てたの?」
「蝋燭がまだ少しだけ残ってるから、2時間半と言った所か?」
絶妙な睡眠時間だったらしい。これなら仮眠と言うべきかな? でもそっか、ずっと火を灯してくれてたんだ。だからこんなにもリラックスした気持ちで寝れたんだね。
「お姉ちゃんたちはその間、何話してたの?」
「他愛もない話だ」
「そうかしら? 私は物凄く勇気を出したはずなのだけどね」
「それを言いますか、真昼さん。なら、俺も勇気を出して今言おうか?」
「だ、ダメ! それは絶対にダメよ!」
「あははは!」
どうやら私が寝てた間に、2人の間で何かがあったらしい。恋人? ううん、そんな雰囲気は感じないけど、さっきよりも、2人の距離がグンと近くなってる気がする。
「ま、俺と真昼の話は置いといて、頭はスッキリしたか?」
「え? あ、はい。とてもスッキリしました」
「睡眠は大切だからな。溜め込むなとは言わないが、不安を感じてるなら、ちゃんと吐き出せ。真昼に遠慮しちまうなら、俺でもいい、家族でもいい。誰でもいいんだ」
「そうよ。それに、優花はちゃんと力が付いてるわ。もっと自信を持ちなさい」
(自信……)
そういえば、最初の方は絶対に合格するって意気込んでたのに、最近は合格出来るのかって、自分には無理なんじゃって、そんな思考しかなかった。自信なんて、ありもしなかった。
「……自信って、何をすれば持てるんでしょうか」
「何を持って自信を付けるかは人それぞれだな。俺の場合は積み重ねた実績だ。真昼は?」
「私は、応援してくれる人がいる事。特に大切な人から応援されたら、それだけで自信が湧くわね」
2人とも迷いなく自分にとっての自信の源を答えた。それが眩しい。なら、私にとっての自信って何なんだろう。
お姉ちゃんに励ましてもらう事? 違う。
お姉ちゃんに信じてもらう事? 多分違う。
勉強を頑張っている事? 違う。
友達から応援される事? 違う。
家族から応援される事? 違う。
先輩と一緒に勉強をした事? ……違う。
先輩から褒めてもらう事? …………違う。
(…………そうだ。私ずっと、たった1つだけ、心の支えにしてたものがあった)
以前、先輩に聞いた事がある。
──どうして、勉強が苦手な私なんかに勉強を教えてくれるんですか?
そして、あの時先輩はこう言ったんだ。
──優花ちゃんなら、絶対に受かると信じてるからだ
そうだ。先輩は私を信じてくれていた。お姉ちゃんもお母さんもお父さんも皆、私を信じてくれてる。それでも、先輩から信じてもらえる。それだけで頑張れるって気持ちになれたんだ。
(あれがあったから頑張れた。先輩が信じてくれるから……)
「優花? 急に黙ってどうしたの?」
「考え事でもしてるんだろ。何を持って自信が付くのかと」
「それもそうね。ふふっ、でも積み重ねた実績って、まさにシンヤらしいわね」
「経験こそ、人だけに許された権利だ」
「言えてるわね」
私を差し置いて、2人はそんな事を話している。甘いというより、自然体。それがこの2人の関係性だ。
「先輩」
「ん?」
「先輩は、私が合格する事を信じてますか?」
それだけ伝え、ジッと先輩を見つめる。
「決まってるだろ。何、当たり前の事を」
その返事に、その眼差しに、どれもが真実だと物語っている。それだけで嬉しい。頑張れるって思える。先輩に信じてもらえるだけで、自信が溢れてくる。
「分かりました! なら、絶対に合格しないとですね!」
「あら、急に元気になったわね」
「この流れ、もう3度目なんだが……」
「にしししし。先輩、心配しなくてもいいですよ。私は自信が付いただけなので!」
そう、自信が付いた。私にとって、先輩が信じてくれる。それだけで自信が湧く。
初めはお姉ちゃんと同じ高校に行きたいだけが目的だったけど、先輩と勉強をしているうちに、先輩とも一緒に、高校生活を楽しみたいと言う目的も追加された。
それに──。
「早く、お姉ちゃんと恋人になってくださいね。未来の、私のお義兄ちゃんになるんだから。しんにい!」
先輩に近づき、そっと耳元で囁くと、バッと先輩は顔を赤くしながら私から離れる。
「にしししし。先輩、照れてるんですか?」
「シンヤ? どうしたの?」
「い、いや、何でもない。いたずらっ子にからかわれただけだ」
「えぇー、それは酷いですよぉ」
「はぁ……」
私の恋は終わるけど、その想いも感情も全部別の感情に塗り替えていく。同じ好きでも、妹が兄を慕う親愛へと変えていくんだ。
だって、私の
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