恋(真昼視点)
*** 真昼視点 ***
人と言う生き物は不思議。だって、時にはこれまでの想いを捨ててでも、新しく芽生えた想いに手を伸ばし、掴もうとするんだから。
もし、運命というのが、本当にあると言うのなら、私と貴方のあの出会いは運命だったのかしら?
貴方と出会った時から、ずっとそうだった。貴方の紡ぐ言葉は、どんな時だって、私の胸の奥を温かくしてくれる。今紡いでくれた言葉だってそう。
この光景を他人が見れば、誰だって告白としか捉えない。でも君は敢えてその人の名前を出さない。
だけど、貴方のその人に向ける笑みが、言葉が、想いが、誰へ向けて贈った言葉なのかが分かる。
その、優しさに溢れた想いは、きちんとその人の心の奥底にまで届いた。
そんな貴方だからこそ、私は──したんだ。
(あぁ、そうなんだ。この気持ちが……)
***
思えば、いつからだったのだろう。私がシンヤに対して、異性として意識し始めたのは……。
──実は……、葉桜君って好きな人がもういるんだよね……
みーちゃんが、初めて私たちの前で、シンヤには好きな人がいると言ったあの日、まるで世界が止まったかのような感覚に陥った事を、今でもはっきりと覚えている。
なら、その時に初めて異性として意識し始めたのかしら?
(ううん、違う。もう少し前。……そうだ。シンヤの素顔を初めて見た時にはもう……)
初めてシンヤの素顔を見たとき、私は傷のある彼の顔を綺麗だと言った。なんで綺麗と言ったのか、その理由が今まで分からなかったけど、ようやく分かった。
あの時、あの瞬間、私は見惚れていたんだ。
初めて見たシンヤの素顔がとても眩しかった。
綺麗と言った時に見せた、驚きと嬉しさの入り混じった表情にときめいた。
雫ちゃんと月城君の前で見せるシンヤの態度に、それまでのシンヤに対するイメージが変わった。
その全部が、私の心にシンヤへの恋心という、新しい想いの火を灯したんだ。
そして、それからもずっと私の中で、その想いが風船の様に静かに膨らんでいった。
(多分、初めて会った時からずっとそうなんだ……)
私の知ってる世界にはいなかった男の子。
私に知らない世界を見せてくれる男の子。
そんな貴方に、私はずっと胸を躍らせていた。
──真昼の想いを優先にしながら、2人には悟られないよう少しずつ真昼の恋心を俺に向けさせようって
あの時シンヤが言っていた通り、健斗に染まっていた私の心の中に、少しずつシンヤの存在が浸透し、シンヤへの恋心に塗り替えられ始めた。
そして何度も助けてくれた。
何度も私と一緒に同じ時間を共有してくれた。
何度も私の想いを尊重してくれた。
その度に、私の心は健斗からシンヤへと塗り替えられていった。
シンヤが言うように、時間や想い、信頼が積み重ねられていった。
──喜んで欲しいと言われても、言われた本人がそれを望んでいなかったらそれはただの独りよがりの押し付けでしかない。そんなんじゃ、本当の意味で喜ぶだなんて無理なんだよ……
──真昼は今日、ここで、高橋に告白して受け入れてもらって、晴れて恋人になるのが一番だったはずだ。それ以上に真昼が喜べるシチュエーションはなかったはずだ!
──今日はありがとう! また、来週からも宜しくね、……シンヤ!!
そんな心の裏で膨らんでいった想いが爆破したのは、健斗に告白をしようとしたあの日。もうどうしようもないほどに深く落ち込んでいた私の心を救ってくれた事で、私の心の全てが健斗から貴方に染まった。
──真昼の事が、好きなんだ……
そうして、貴方に染まった感情を自覚したのは、私が熱を出して、シンヤが看病しに来てくれたあの日。
シンヤからの独白と言う名の告白を聞いてしまった時、貴方に惹かれていたんだと、当日の私は思い至ったけど、本当はあの時点ではもう、好きになっていたんだ。
ただ、それを認めるのが怖かっただけ。
無意識のうちに、色んな理由を付けてはシンヤへの想いに目を逸らし、逃げて、惹かれ始めていると自分を騙していただけ。
だって、認めてしまったら、これまでの自分を否定するかのようで、そして、同じ人を好きになったみーちゃんに申し訳なくて……。
(でも、もうそれも無理ね)
私の心は定まった。
この想いも、この感情も、全部、貴方にだけしか向ける事のない物。
もう健斗がどうとか、そんなのは関係ない。
この気持ちに素直になる。
(今ならちゃんと分かる。みーちゃんがどれだけ、シンヤの事が好きなのか……)
──真夜君と結ばれますようにって、願ったんだ
──私はね、真夜君の事が好き。大好き。彼にどうしようもないほどに恋をしたの
今思えばあの時、みーちゃんの手は振るえていた。きっと物凄い勇気を出していたと思う。だってシンヤの好きな人に宣戦布告をする。
その行動にどれだけの葛藤や恐怖心が含まれていたのか、私には想像する事すら出来ないし、想像する権利もない。
だからこそ、あの時のみーちゃんは眩しかったんだ。当時の私にはそんな勇気もなかったから。
でも今なら……。
──私ね、……今日、真夜君に告白したよ。これで私は、もう後には引けなくなっちゃった。だからね、……早く認めないと、私が真夜君を貰っちゃうからね!
(うん。遅くなったけど、ようやく私も認めれたよ。みーちゃん……)
そして、認めたと同時に湧き上がるのは、どうしようもないほどにシンヤともっと一緒に居たい。もっと貴方と幸せを共有したい。貴方にこの想いを力の限り伝えたい。そんな感情しか湧き上がらない。
──私の傍に居て。離れないで。居なくならないで。我儘なのも、迷惑なのも分かる。でも、でも……
この前、シンヤに帰らないでと、我儘を言った時に感じた感情とはまるで違う。こんな感情を今まで認めなかったなんて、さっきまでの私は愚かと言う他ない。
だって、これまでシンヤに対して強くなっていた想いは、惹かれ始めていたからじゃない。ただ弾けた想いに、無理やり蓋をした。
でも結局抑えきれなくって、外にジワジワと溢れ出していただけ。
それに私が気付きたくなかった。
認めたくなかった。
逃げ続けてた。
ただ、それだけの事なんだ。
──まひる。今は準備期間なんだよ
──あと何か1つでもあれば自覚するんだろうなぁって
──好きと言う感情はな、恋を自覚するまでの、いわば準備期間だと俺は思うんだ。
そうね。私の貴方に対するこの感情はもう好きではない。その答えは貴方とみーちゃんが教えてくれた。私の準備期間はようやく終わったんだ。
貴方と出会い、過ごして来たこれまでの全ての時間が、私にその事実を告げる。
もう隠す必要はないんだと、私の中にいる記憶の貴方がそう雄弁に語りかける。
──自分のこれまでの感情を整理して、見つめ直すの。そうするとね、自分の本当の気持ちが見えてくるんだよ
(ちゃんと見つめ直せました。ありがとうございます、明日香先生)
もう迷わない、中途半端に揺れる事はもう二度とない。この感情は私だけの物で、同時に貴方だけの物であると言い切れる。
だからこそ、胸の奥から湧き上がる貴方への想いに対するこの感情に名前を付けるなら、1つしかない。
恋
そう、私は貴方に──、恋をしたんです。
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ここまで読んでいただきありがとうございます
長かったですが、ようやく真昼が恋を自覚する所まで話を書くことが出来ました! 何となくアニメとかでよくある、回想を交えた独白にしてみたのですが、どうでしたか?
正直、1章丸々使うのはやり過ぎた感はありますが、ちゃんと自覚させるなら、時間はかかると思うのでこの様な形式にさせてもらいました
もどかしくさせてしまい、申し訳ないです!
さてさて、本エピソードはこれにて終了となり、残り1話、エピローグを明日投稿して3章は完結となります。
それでは、また明日、次のお話をお楽しみにしてください!
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