3人での動物園デート 後編
「物凄い人だかりね……」
「そうだな」
今は確か"シャオシャオ"と"レイレイ"が見られるんだったか? それと、まだあまり観覧時間もないらしく、割と人の流れは速いようだ。
「見て見て、真夜君、可愛いー!」
「シンヤシンヤ! 飼育員さんにしがみ付いてるわよ! 物凄く可愛いわ!」
「見てるから、そんなにはしゃぐな」
いや、パンダの魅力にメロメロなのは分かるが、こうも2人を虜にするか、パンダよ……。いやまぁ俺も生でパンダを見るのは初めてだったけど、ここまで可愛いとは思わなかったな。
それと、俺たちは後方でパンダを見ている訳だけど、真昼は限界ギリギリまでつま先立ちして見ている。こういう時、身長が低いのって悲しいよな。
そんな俺の邪な感想に気が付いたのか、真昼は『もしかして、身長の低さについて何か考えてたかしら?』とジト目をしながら聞いてくる。
やべ、このやり取り、ちょっと懐かしい。
「バレたか。だけど、そんなに一生懸命やってたら、大変だろう」
「仕方ないじゃない。身長の低さはどうもできないんだから……」
見やすいよう、傾斜になっているとはいえ、それでも限度はあるからな。なので、俺は『ちょっと失礼』と断りを入れ、真昼とミミの手を掴む。2人は『ふぇ!?』と声を漏らすが、そんなのは気にせず、俺は2人を連れて、前の方にずいっと割り込むことにした。
「ちょっとごめんな」
「えぇぇ、シンヤ!?」
「真夜君!?」
ちょっときついが、他の客も空気を読んでくれているのか、そこまで嫌な視線は感じない。そうして何とか前の列に割り込むことができ、より間近でパンダが見える。
「ちょっとは頼れ」
「あ、ありがとう、シンヤ……」
「真夜君、ありがとう」
そうして俺たちはパンダ鑑賞を堪能し、今は真昼の好きなペンギンのエリアに来ている。
「すまんな、さっきは手を引っ張って」
「うぅん、全然嫌じゃなかったから大丈夫よ。それに、嬉しかったから……」
「真夜君ってああいう時、大胆になるんだね! えへへへ、新しい一面が見れて満足だよぉ」
どうも2人からはお気に召したようで安心した。
***
その後も俺たちはペンギン、カバ、キリンなど、色々な鑑賞エリアに赴き、そこで動物らを鑑賞しながら談笑をする。
そうして現在、帰る前にギフトショップへと赴いて、真昼たちのぬいぐるみ談義を傍で眺めている最中だ。
「見て見て、まひる。大きくって可愛いパンダのぬいぐるみだよぉ」
「ふふふ、そうね、みーちゃん! あとこのハムスターのぬいぐるみも可愛いわ。シンヤは何か気になるのとかあったかしら?」
「そうだな。……俺はこのモルモットのぬいぐるみなんかは可愛いと思うな」
まぁ自分の部屋に置くかと言われたら、イメージ的に置き辛いから、買わないけども。
でも、女の子からしたらこういうぬいぐるみってやっぱり好きなんだなと、2人を見てると実感する。特に真昼は、自室に色々とぬいぐるみが置かれていたし、俺がプレゼントした奴も大切にベッドの上に置いてくれていた。
「せっかくだからプレゼントしようか?」
「いいの!? 真夜君!」
「うーん、なんだかシンヤと出かけると、いつも何かしら貰ってる気がするわ……」
「それこそ、気にするなだ」
「そ、そう? じゃ、じゃあ、今回もお願いしてもいいかしら」
真昼は既に何度か俺から貰ってることもあって、そこまで抵抗感はなくなってるらしい。ミミに至っては物凄い乗り気のようで、『どっちがいいかなぁ』と楽しそうにぬいぐるみを吟味していた。
「ついでだ。優花ちゃんにも買って行こう。真昼、優花ちゃんなら、何がいい?」
「本当に優しいよね、シンヤって。優花なら、私と似た感性だから同じものでいいはずよ」
「なら、遠慮せず、真昼が好きなやつを選んでくれ」
俺がそう真昼に伝えると、『ありがとね』と答え、真昼はミミと一緒にお気に入りのぬいぐるみを探しに行った。
ここ最近、真昼は俺に対して以前よりも遠慮がなくなり始めている。それがちょっと嬉しかったりする。
(このまま、もう少し俺に対してわがままになってもいいんだけどな)
以前の真昼は、それなりに遠慮することが多かった。まぁそれも高橋の影響があったからでもあるんだろうけど、やっぱり真昼には素の自分を出して欲しいと思う。
「真夜君、ほんとにありがとー!」
「シンヤ、素敵なプレゼントありがとうね」
「これくらい、どうってことないさ」
その後2人はお気に入りのぬいぐるみを決めたので、俺はそれらを購入し、2人に渡した。ミミはパンダの親子のぬいぐるみを、真昼はレッサーパンダのぬいぐるみを2つだ。
喜んでいるのも束の間、2人は何やら相槌をして、『それとね』と、俺にとあるものを手渡す。
「これは……、キーホルダーか?」
2人から渡されたのはステンドボール型のパンダのキーホルダーで、座っているパンダがなんとも愛くるしい。
「どうしたんだ、これ」
「流石に、私たちだけ買って貰うのもはなんだか違う気がしてね。みーちゃんと相談して、こっそり買ったのよ」
「えへへへ、ほら、私たちとお揃いだよ!」
2人は同じキーホルダーをそれぞれ見せる。どうやら俺たち3人でのお揃いをしたかったらしい。
「なるほどな。なら、これはありがたく貰うとしよう。付けるならスクールバッグの方がいいかな」
「うん! 私たちもそうするつもりなんだ! えへへへ、以心伝心だね」
「シンヤってそういうのを察することもできるのね……」
「それくらいは俺にだって出来るさ」
「ふふふ、そっか!」
そういえば、特別な日以外でこうして誰かから物を貰うのってあまりなかったな。そして、その相手がこの2人だって言うんだから、本当に嬉しい。
多分今の俺は笑みを浮かべているだろう。だから改めて、2人にお礼言うことにした。
「2人とも、キーホルダーありがとな!」
「「────」」
ん? なんだか2人が硬直したな。そんなに俺の笑顔がおかしかったか? それともまたしてもタラシ的な事でも……。 そんなことを考えていると、2人は硬直から再起動したようで、2人で何やら話し合っている。
「シンヤの笑顔って、やっぱり破壊力凄いわ……」
「うん。分かるよ、まひる。こんなの絶対に惚れちゃうって……」
「何が、惚れるんだ?」
「「うひゃあ!?」」
ちょっと気になったから聞いただけなんだが、驚かせてしまったようだ。
「すまん。そんなに驚くとは……」
「うぅ、大丈夫よ。シンヤ」
「う、うん。大丈夫だから、真夜君」
「そうか? まぁいいか」
ふと空を見上げれば、既に日は沈みかけている。こうしてお土産も買っているので、帰る方向で話が纏まり、そのまま3人で動物園を後にする。
初めての3人でのデートではあったけど、想像以上に楽しめた。それは2人も同じらしく、『また、3人で行こうね!』と、ミミと真昼は笑い合いながら話し合っていた。
(こういう時間もまた、青春か……)
未だにこの歪な三角関係が解消されている訳ではない。だが、それを抜きにしても、この3人でこれからも一緒にいたいなと、そう思えるような1日だった。
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