文化祭準備
文化祭の出し物
藤原さんとの遊び(デート)から週が明けた水曜日のホームルーム。今日は1限目の授業は無く、月末に控えている文化祭に向けた出し物についての話し合いが進められる事になっている。
聞いた話によると、うちの高校は1学年も楽しく思い出を作ってほしいということで、抽選から選ばれた1クラスだけ1番人気のある飲食を出していいという事になっているらしい。そのため、文化祭実行委員の人らは物凄いプレッシャーを感じてるとか。
と言うことで現在、出し物について実行委員の小町さんと、米沢が皆から案を募っているのだが……
「なるほど、俺をハブった理由はこれか……。雄太は知ってたんだよな?」
「あははは。ま、まぁね」
出し物の案で堂々と黒板に、『ミニスカメイド喫茶』というコンプラ違反にも程がある文字が書かれていた。
(俺をハブった理由としては、難癖つけられて思い通りに行かないと思ったからだろうな。それに……)
うちのクラスは俺を含めて男子の方が女子より3人多い。つまり、俺を含めなくても多数決を取った時点で男子達の勝利が確定する。
(とは言ってもミニスカはないだろ……)
正直に言えば見たい。そんなの世の男にとっては夢みたいなもんだから。だがそんなのは実現しないと分かっているはずなのにこうして推し進めようとするということは……。
「それで、雄太は何で協力することにしたんだ?」
短い付き合いだが、雄太がこんな悪ふざけに付き合う奴じゃないというのは知ってる。何か弱みでも掴まされたか?
「……俺に彼女がいるのは知ってるでしょ?」
「ああ。頑なに俺に誰か知られないようにしてるってこともな」
以前知った事だが、雄太には彼女がいる。と言っても誰なのかは絶対に教えたくないようなので、俺もあえて調べないようにしている。
「このクラスで1人だけ知ってる奴がいるんだけど、彼にね」
「あぁ、脅されたか。なら納得」
俺にバレる位なら協力した方がまだマシという事か。それほどに隠したい相手……気になる。
まぁ友人の信頼を喪いたくないからやらないけど。
「だが、これには小町さんも困り果ててるだろうな。米沢も苦笑いしてる辺り、押し切られたと言ったところか」
「そうだね。高橋は違うけど、男子の3割位は乗り気じゃないね」
「高橋もなんだかんだ押し切られたと思うがな。特に藤原さんのミニスカ見たいだろ?とか言われたら頷くだろうし。まぁ下心に負けた線も無くはないか」
女子たちはこの案に大反対しており、村田さんは今回のリーダー核であろう男子の横溝と言い合っている。小町さんは控えめな性格だから、こういう話し合いになるとあまり強く出ることが出来ないんだよな。
というより、担任の矢島は口を出すつもりはないのか、今のところ静観してるな。
流石に俺もこれについては村田さん側なので、そろそろ助けるべきだな。と、そんな考えをしている事を察したのか雄太は『頼むぞ』と言うので、『任せろ』と俺は返して2人の所に向かった。
「そこまでだ、横溝。村田さんも熱くなりすぎ」
「あ、葉桜君」
「葉桜、お前は関係ないだろ」
「おいおい、わざと俺を除け者にしたにも関わらず、関係ないは酷くないか?」
チラッと小町さんと米沢の方を見れば、何とかしてくれと懇願してるかのような表情だった。
「とりあえず、横溝。流石にあれは暴論だ。メイド喫茶について置いておくとしても、ミニスカはダメだろ」
「なんだよ、お前だって見たくはないのか?」
「そりゃ、男だから見たいとは思うよ。とは言え、女子たちの気持ちを蔑ろにするのはいただけないな。それじゃ不公平だ」
俺がそう言えば、女子たちからは『そうだそうだ』と同意の声が飛んでくる。ということで更に畳み掛けよう。
「どうせお前らの事だ。こんな要望通る訳ないと思ってるだろうから、サブプランとしてロングスカート着用もしくは、清水がバイトしてるカフェの制服でも着させるとか、そんな事を考えてるだろ? あそこの制服かなり可愛いもんな」
清水の方を見ると、苦笑いしつつ俺から顔を背けるので、ビンゴだと思った。
ドア・イン・ザ・フェイスという交渉ごとに対するテクニックが存在する。高い要望を出してからその後に小さい要望を出すことで要望を通しやすくさせるための手法だ。
「お前、何でそんな所まで当てられるんだよ。普通にこえぇよ」
「俺の情報収集を舐めるなよ?」
自分からドヤ顔で言ってはいるが、やってることを考えたらマジで捕まらないかとヒヤヒヤする。
さて、若干引かれてはいるけど、主導権は取ったので、そろそろお仕置きタイムと行こうか。
「流石にこのままだと、女子たちがかわいそうだからな。ということで俺から提案があるんだけど。小町さん、黒板使ってもいいか?」
「え、う、うん。大丈夫だよ」
小町さんに感謝を伝えつつ、俺は黒板に3つの候補を提示する。
第1候補:執事&メイド喫茶
第2候補:カジノ(男はバニー服着用)
第3候補:私服 OR 執事&メイドの撮影会
「と、ざっとこんなもんかな」
俺が黒板に書き切ると、一斉にクラスメイトがざわめきだつ。特に男子から罵声が飛んでくる。
「「ちょっと待て、葉桜! なんだその第2候補の内容は!!」」
「「そうだそうだ! ふざけるなー」」
「おいおい、まさか、無茶な要求をしたのにも関わらず、自分達だけが何のリスクも負わないのは許されないだろ?」
正論を言えば、うるさかった男子どもは何も言えず黙るので、更に畳み掛ける。
「言っておくが今、お前たちは女子からの信頼を徐々に失っている。それを少しでも回復しようと言うんだから感謝して欲しいな」
そう伝えると、同意するかのように女子たちは皆頷き、男子たちの顔色はどんどん悪くなっていく。
「それに見てみろ、第1候補にはお前らの要望通りにメイド喫茶を書いただろ?」
「だが、執事も含まれてるじゃないか!」
「そりゃそうだ。俺たちだけがいい夢を見るとか不公平だからな。女子たちにもカッコいい俺たちを見せようじゃないか。幸いこのクラスの男子は皆、それなりのレベルだしな」
そんな俺たちのやり取りを眺めていた村田さんが俺に質問を投げてきた。
「つまり、葉桜君も執事の格好になると?」
「勿論だ。俺の場合、眼帯をしてるから、モノクルも装備してくる事を約束しよう」
そう答えると一気に女子たちが色めき立つ。ふふふ、もうこの流れを止めることは誰も出来まい。
「おまけに飲食がダメでも、撮影会として同じ格好になれば、それなりに楽しめるんじゃないか? やり方については要相談だけど、くじ引き方式にして誰と写真が撮れるか分からないランダム性にしても面白いだろう」
「あと、カジノのバニー服については、決まれば俺、雄太、高橋は覚悟を決めて必ず着てやるさ、あと横溝もな」
「「「「きゃぁぁぁぁぁ!」」」」
「「葉桜ぁぁぁぁ!!」」
女子たちからは黄色い声、高橋と横溝は怨嗟の叫びをあげながら絶望していた。俺を除け者にした事を後悔しろ。
チラッと藤原さんと山口に視線を移すと、2人とも爆笑していた。
「更に付け加えるなら、俺含めた4人は第1候補がダメだった時、それ以外の候補で決める話になったら参加しないつもりだ。こうすれば女子たちにも勝ちの目が出るだろう」
俺からの提案について一通り終わったのを見届けた米沢がパンっ!と両手を叩き、一気に皆の意識を自分に向けさせた。恐らく考える時間を与えないつもりだ。
「はいはい。せっかく葉桜がバカな俺たちの為にいい案を提示してくれたんだ。まさかとは思うが反対する奴はいないな?」
そう言われてしまえば、男子たちはもう反論する事も出来なくなり、この案を通す事になった。米沢と小町さんからは小声で『ありがとう』と言ってくれた。
俺は自分の席に戻り雄太に勝利宣言をする。
「勝ったぞ」
「その代償が大きいと思うんだけど?」
雄太は顔の頬をヒクヒクさせながら言っているが、俺には関係ない。何故なら……。
「何をどう転んだとしても、楽しい事になるから俺にとっては問題ないな。俺を仲間外れにしたんだ、これくらいは許せ」
「真夜に任せたのが運の尽きだったか」
「仲間に入れてたらもう少しマシな方法で要望を通してやったんだけどな」
まぁこれで文化祭も楽しくなりそうだし、後は小町さんたちの運を祈りながら俺たちはこのあとの授業の準備を始めた。
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