第2章:少女の想いと選択の先にあるもの

プロローグ

少女との電話(美美子視点)

『どしたの? まひる?』


 土曜日の夜、自分の部屋でのんびりしつつ、スマホで動画を観ていると、LIMEでまひるから着信が来たので、私は出ることにした。


『あ、ごめんね、みーちゃん。もしかして、もう寝るところだった?』

『ううん。まだだよ。さっきまで猫の動画観てたんだ』

『ふふふ、みーちゃん、猫ちゃん好きだもんね』


(何だろう、声を聞いてる限り今日のまひるは今までよりも少しだけ声のトーンが明るいように思える)


 今日は葉桜君と遊ぶって言っていたから、もしかしたらそれが影響してるのかもしれないと考えた私はまひるに尋ねてみる。


『何だか、今日のまひるはいつもより楽しそうだね。葉桜君と何かあったの?』


 そう尋ねてみると、『ふぇ!? な、なんで分かるの!?』と物凄く驚いていた。


『ふっふっふー。私とまひるの仲なんだから、分かるに決まってるよー』

『ふふふ、そうよね。ほら、今日は健斗と行く予定だった水族館に葉桜君と行く事になったって話したでしょ? それがね、……とっても楽しかったのよ』


 昨日、まひると高橋君が喧嘩したのは知ってる。というか、私もその場にいたからね。結局私はまひるに何もしてあげることは出来なかったけど、葉桜君はそんなまひるを元気づけた。


 そして、どういう経緯でそうなったのか、デートの約束までこぎつけたと言うんだから、最初まひるから聞いた時は驚いたよ。


 おまけに高橋君と仲直りするように誘導もしてたようだし、そんな彼のまひるに対する想いは一途でほんとに羨ましい。


『そっか! それは良かったじゃん、まひる。昨日は高橋君と喧嘩しちゃったから心配してたんだよ?』

『ごめんね、みーちゃん。心配かけちゃって。でも、もう大丈夫だよ。健斗ともちゃんと仲直り出来たんだから』

『葉桜君様様ですなぁ』

『うん。……ほんと、葉桜君はどうして私にここまで優しいんだろうって思うわ』


(そりゃあ、まひるの事が好きだからねぇ……)


 彼からは口止めされてるから、まひる本人には言わないけど、私と柊君だけはまひるが好きということを知っている。まひるには悪いけど、私と葉桜君が共有している秘密だ。


 だからこそ、昨日はまひるを励ます役割を譲ったんだしね。……でも、あの時の葉桜君はなんというか頼もしさと同時に、冷静な態度とも相まってカッコよかったな。……なんて、まひるには言えないけどね。


『ふふふ、なんでだろうねぇ』

『もう。絶対みーちゃん、何か知ってるよね? 今日電話したのはそれを聞きたかったからなんだよ?』


 まひるが言うには、まひるのお母さん達に今日の出来事を話していたらしいんだけど、その中で葉桜君がペンギンのぬいぐるみをまひるの他に、ゆうちゃんにも同じぬいぐるみをプレゼントしてあげたらしい。


(葉桜君、そんなことしてあげたの!? というか、葉桜君にそういう一面があるなんて、初めて知ったんだけど……)


 私は学校くらいでしか葉桜君の事をよく知らないので、デート中の彼については何も知らなかったのだが、彼は私が思っているよりもまひるの事を大切にしているようだった。


(でも、ゆうちゃんにまでプレゼントするとはね……)


 素直にその行動を褒めることにした。というよりも男の子ってそこまで気遣いが出来るんだと錯覚しそうだ。多分、葉桜君だから出来るんであって、他の人はそこまで気が回らないと思う。


『それでね。葉桜君の事どうなの?って話になったから、私はって言ったんだけど、何でかママと優花がそこからニマニマしてたんだよね。だから、みーちゃんなら何か知ってるかなって』


(特別な友達ねぇ)


 まひるは意外にも葉桜君の事を無意識とはいえ、少しは意識してるんだと私は感じた。だって普通、親友でもない友達にという言葉は使わないからね。


(でもそっか、葉桜君の行動はちゃんと実を結んでいるって事だね)


 そう考えた途端、少しだけ胸がチクリとした。


『みーちゃん、どうしたの?』


 まひるが私が中々話さない事に疑問を抱いたようで尋ねて来た。それで私は我に返った。


『え、ううん、何でもないよ。ふふふ、でもそっかぁまひるも青春してるって事だね!』

『ねぇねぇ、なんでみーちゃんもママたちと似たような事を言うのよぉ』

『あははは。まひるもそのうち分かるって!』

『それもママが似たような事言ってたわ。……みーちゃんも教えてくれないなんて酷いわ』

『あははは、ごめんね、まひる。でも、まひるにとって良いことって事だけは教えてあげるね』


 そう答えると、まひるは『葉桜君といることが良いこと?』とまだ分かってない口ぶりなので、私は笑うことにした。まひるは高橋君が好きすぎて他人の好意に鈍感なんだよね。


(葉桜君も大変だろうね。まぁまだ1カ月半しか経ってないからそれも仕方ないか)


 思えば、意外と長くも短い1ヶ月半だと思う。まひるも言ってたけど、葉桜君が来たことで何か世界が広がった感じがする。


『……もういいわ。それよりも来週は確か文化祭の出し物について話し合いがあるのよね?』


 私から答えがもらえないと分かり、諦めたのか、まひるは次の話に移ったようだ。


『そうだねー。うちの高校は1年の1クラスだけ飲食開けるらしいから、皆くじ引きでお祈りしそうだよね』

『ふふふ、そうね。文化祭実行委員の小町さんにお祈りするわ』

『そうなったら、出し物は何がいいかなぁ。男どもはメイド喫茶とか言いそうだけど』


『あー、健斗がそんな事を前、呟いていたわ』

『うわぁ、それが本当なら多数決で負けそうだね』


 私たちのクラスは女子よりも男子の方が3人多かったりする。なので、こういうイベント事で多数決を取られると弱いんだよね。


『なら、男どもの手綱として葉桜君に期待しないとだね』

『……どうして、そこで葉桜君が出てくるの? 彼、文化祭実行委員でもないはずだけど』

『あれ、まひる知らないの? 葉桜君、何やら男たちから出し物の件についてハブられてるらしくって、『これはあいつらに解らせる必要があるな』って言ってたんだよね』


 この話をしたのはこの前の早朝の事で、その場には私と葉桜君だけしかいなかった事を私は思い出した。最近はまひるがいないところでも葉桜君と話す事が多くなってきており、何だかいけない事をしてる雰囲気を感じる時がある。


 まひるはそれを聞いて少し拗ねたのか、『みーちゃん、いつの間に葉桜君とそんなに仲良くなったの?』と言うので思わず笑っちゃった。


(まひる、少しだけ妬いてるなぁ)


 本人はその気はないと思うけど、着々と葉桜君の思い通りの展開になってきているようだと私はこの会話から感じた。


『まぁまぁ。葉桜君とそんなに話したいなら、まひるも早く登校したらいいんだよ。そしたらいっぱい話せるよー』

『も、もう! からかわないでよ、みーちゃん』

『あははは』


 その後も私たちは電話越しに色々と話し、気づけば1時間位経っていたので、そろそろ切ろうかという話になり、私たちは通話を終わらせる事にした。


「はぁ……、なんでまひるは気づかないんだろう」


 実を言うと、既にうちのクラスの半分以上は葉桜君がまひるの事が好きだと言うことに勘付いている。ただ、本人があまりにも自然に接してる事もあってか皆、口に出さない事が暗黙の了解と化している。


「もしこのまま、まひるが高橋君と付き合う流れになったら、葉桜君どうするのかな?」


 そんなあり得る未来を考える私はなんと乙女なんだろう。多分物凄く落ち込んで、当分は元気が無さそうだ。


(そしたら、私が……)


 これはダメな思考だとすぐに思い、無理やり考えるのを辞めた。まだ違う。ただよく話すだけの仲のいい友達だと、そう頭の中で反復しつつ、私の意識は深く沈んでいった。



────────────────────────



ここまで読んでいただきありがとうございます!


第1章終わって直ぐになりますが、第2章が開幕いたします。


もう1話プロローグを明日掲載してから、本格的に2章がスタートとなります。


それでは、また次のお話をお楽しみにしてください!

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