【本編完結】結婚を約束した幼馴染じゃなく俺が君を幸せにしてみせる
風間悟
第0章:プロローグ
全ての始まり / 恋の始まり
あの日約束した大切な思い出(真昼視点)
*** 真昼視点 ***
―― 10年前 ――
私がまだ5歳の頃、都内の幼稚園で1人の男の子と一緒におままごとをしていた時、その男の子は私に向かってこう言った。
「なぁなぁお前さ、おじさんに将来パパと結婚するー!って言ったらしいじゃん」
「う、うん! 言ったよ。だって私パパのこと、大好きだもん!!」
「馬鹿じゃねぇの? おじさんはもう、おばさんと結婚してるんだから、お前と結婚なんてできないに決まってるじゃん。あははは」
男の子はそう私に無邪気な笑いとともに言って、馬鹿にしてきた。私も当時5歳ということもあって、その言葉に怒って、『そんなことないもん!』と反論したが、今思い返せば恥ずかしくなってくる。
だって、血のつながった家族と結婚することなんてできないし、そもそもパパとママは愛し合ってるんだから。
まぁでも世の子供は一度はそんな体験があるはずだと私は思っている。
そんな口論を続けている中、男の子は少し恥ずかし気に私の顔を見ながら、とある言葉を私に言ってくれた。思い返せば彼にしてみればかなり勇気のある行動だったと私は思う。
「な、ならさ……、ぼ、僕と結婚するってのはどうだ!?」
「え、えぇ? け……、結婚って健斗君と?」
「ああ!! だってさ、お前みたいな可愛くて優しい女の子……、僕は知らないもん! だから、おじさんとは無理だけど、僕となら結婚できるし、というか僕、真昼のことが好きなんだよなぁ! あははは」
思えばこれが私が初めて受けた告白だった。
突然そんなことを言うもんだから顔を真っ赤にして、あたふたするのが精一杯で、どう返事すればいいのか分からなかった。子供の頃ってどうしてこんな恥ずかしい事を平然と言えるんだろうか。
そして、男の子はずっと私の顔をそわそわしながら見ていて、ちょっと可愛いなぁなんて思ったり。でも、私もその男の子の事は親が友人同士という事もあって、友達だと思ってたし、パパ以外で一番好きな男は?と言われたら迷わず彼と言うだろね。
だから、私も──。
「う、うん。私もねパパ以外なら健斗君のことがす……、好きだよ? だから……その……、私も健斗君と結婚したいです」
「本当!? じゃあ約束だよ! 僕たちはいつか絶対に結婚するって!!」
「う、うん! 約束だね。じゃあ指切りげんまんしよ?」
「ああ! 指切りげんまんしようぜ」
これがあの日、彼「
―― 10年後 ――
ピピッ、ピピピ!! 朝6時、目覚ましとともに私の意識は夢から覚めた。
「う、うーん……、なんだか懐かしい夢を見たわね」
(ふふっ、でも、夢の中でもあれを見るだなんて、ほんと私って健斗の事が好きなのね……)
夢から覚めて直ぐ、そんなことを考えてた。
夢で見る内容はその人の潜在的な想いなどが反映されるって聞いたことがあるし、私の想いが何一つ変わっていないことの証明なんだと思えて、嬉しさと共にだんだんと胸の奥が熱くなるのを感じる。それに、顔も次第に熱くなっていくのが分かった。
(ふふ、朝からこんな気持ちになれるなんて、今日は何か良いことでもあるのかしら)
「……はっ! いけないわ、それよりも早く着替えて、お弁当の準備をしなくちゃ!」
今日から夏休み明けの学校が始まる訳だし、いつまでも夏休み気分じゃダメだと、気持ちを切り替える。寝間着から制服に着替え、直ぐに1階に降りて、家族に挨拶しに行った。
「おはよー! パパ、ママ! それと優花も」
「「おはよー、真昼」」
「お姉ちゃん、おはよう!」
「真昼、今日も健斗君にお弁当を作ってあげるんでしょう?」
「うん! 今日からまた学校が始まるんだし、いつまでも夏休み気分のままじゃいられないからね」
「いいなぁ、けんにいさんは。こんな可愛い彼女にお弁当を毎日作ってもらえるんだから。私にもお弁当作ってくれる人ほしー!」
「優花、なんであなたが作る側じゃなくて、作ってもらう側なのよ……。そ、それに私と健斗はそ、その……、まだお付き合いしてないし」
「えー、だって、私料理できないんだもん。というかまだお姉ちゃんたち付き合ってなかったの!? 高校1年の夏休みという最高のイベントがあったにも関わらず!?」
「う……。そ、それは仕方ないじゃない! 宿題とか勉強とか色々あったんだし、それに健斗も部活やゲームとかで色々忙しかったみたいなんだから」
そんな話を妹の優花としつつ、夏休みの事を振り返ってみた。
確かに夏祭りやプールなど、健斗と一緒に色々な所に行ったけど、結局告白されなかったのもまた事実。それに、私としては向こうから告白してもらいたい。
もし私の方から告白して、ダメだったとしたら。今の関係が壊れちゃうかもしれないって思うと、怖くて結局今の幼馴染という関係のままが一番じゃないかと思ってしまう。
これが長く幼馴染を続けてきた弊害なのかしら。健斗は昔も今も軽口で色々言ってくるから、今も変わらず私の事が好きなのかが分からない。どうにかして健斗の気持ちを知る方法はないのかな。
「はぁ……、もうお姉ちゃんから告白しちゃえばいいのに。だって、けんにいさんもお姉ちゃんの事が好きに決まってるじゃん」
「はいはい、その話はそこまでにしなさい。真昼も早くご飯食べて、お弁当の準備しないとだろう?」
「うん、そうよねパパ。いただきます!」
そうして私たちはいつも通り笑いあいながら、その時たまたまテレビでやっていた星座占いを聞きつつご飯を食べ始めた。今日もママのご飯はおいしい。
『今日の運勢で一番は双子座の方! 今までの恋愛観を変えてくれる方に出会えるかも! 特にその人はあなたが今までに感じなかった感情を与えてくれるわ。ラッキーアイテムは小説。特に一番好きな小説を持っていれば運気がより上がるかもよ』
なんだろう、下手な占いより具体性のある内容だったし、あまりにも私にピンポイントな内容だと思った。
まぁ私は健斗のことが好きだから今更誰かを好きになることはないと思うけど、……小説かぁ。
(そういえば、最近ミステリー系の小説読んでいなかったわね。せっかくだからお気に入りの小説でも持って行って、お昼休みとかに読もうかしら)
そんなことを考えていたら、優花からは『お姉ちゃん今日はなんか良いことがあるかもね!』とニヤニヤしながら言ってきたので、そっぽを向いてさっさとご飯を食べる事にし、その後、ママと一緒にお弁当の準備に取り掛かった。
「「いってきまーす!」」
「はい、いってらっしゃい!」
優花の分も含めた3人分のお弁当の準備が終わった頃にはもうパパはお仕事に向かったようでリビングに居らず、優花はリビングのソファーに座りながら『学校に行きたくない』とぼやいていた。
既に時間は7時を回っており、早く健斗を起こしに行かないと遅刻しちゃうので、ママに見送られながら急いで優花と一緒に家を出た。
これが、今までもそしてこれからも続くと思っていた私の日常。でも、まさか本当にあの占い通り、私の恋愛観に変化が生じる日になるだなんて、この時の私は思いもしなかった。
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