8月のとある日 理想の人物
先月実家に帰った。
つまり8月。8月の帰省=OBON!という公式は人混みが世界で2番目に嫌いな私には適用されず、全くの平日に帰ることを家族と数少ない地元の友人に伝えた。
その数少ない友人の1人に帰ることを伝えると、普段は既読にすらならないのにその日のうちに返事が返ってきた。どこか行きたいところはあるか、という質問に私は都会に疲れているせいか
「海に行きたい」
といつの間にか送っていた。
数週間後、約束していた海までドライブする日、ドラマでは主人公が失恋した後、バイクやら車を走らせて、そのうえ夕日というプレミアムオプション付きの海に行くシーンをよく見る。海に着くとしばらく歩いて、夕日が落ちる頃に海に向かって”見返すぞーーー!”的なセリフを叫んでスッキリした顔をして主人公は帰っていくが、私たちは真昼に車を走らせた。
だいたい海まで40分ほど。
その間の車内ではとにかく色々話した。政治の話、AIと将来の話、最近の話、そして友人と恋人の話。
自己紹介をちゃんとしていないので私の年齢が謎であると思いますが、もし恋人がいれば「結婚」が頭にちらつく歳を生きています。今回話に出ている友人はもうすぐ付き合って1年になる恋人がいる。
普段私とその友人とはLINEでやり取りもしなければ電話もしない。だから半年に1回帰るときにその友人の近況を知る。2月ぶりに会った友人はどこか元気が無く、以前会った時には話さなかった日ごろの彼に対する不満が車内に溢れた。掘り下げていくと、私と会う数日前に一旦別れ話が出たらしい。おいおい。すげえタイミングじゃねえか。
恋愛ステージ1以下の私からすると、話を聞きながらそういう奴といても幸せにならないからやめときなよ、と内心思った。でもきっと彼女はその言葉を求めているわけじゃない。だから私は相槌を打つことに専念した。数分間彼氏の不満を吐き出した後に彼女は
「でもね、恋は盲目なんだよ。やっぱり好きなんだよ。」
きっと今、彼女に歌詞を書かせたら西野カナを超える令和の歌姫になる、と私は思った。ちなみに、彼女は占い師から30歳までに結婚しないとドロドロの恋愛をするわよ、と言われたらしい。
今の彼氏と付き合い続けて甘酸っぱい恋愛ソングを書くか、30歳迎えてドロドロの恋をして不倫の歌を書く人生か。どうしよう、ミュージックビデオとるの手伝ってよとか言われたら。絶対に嫌なり!!!!!! と断るイメージトレーニングを今からでもしておこう。
絶対に嫌なり! 絶対に嫌なり! と脳内で断るイメージトレーニングをしていると、いつの間にか海に着いていた。
“カンカン照り“という言葉がお似合いの真昼。久しぶりに見た海は私の抱えていた悩みをその時だけは忘れさせてくれた。どこまでも続く水平線は私を何者にでもなれる気にさせてくる。キラキラ光る海に見とれた私とは反対に、友人はすたすたと歩いていた。
ときどき横を向く彼女の顔はどこか悲しそうで、やっと現れた日陰で彼女はひと足先に休憩していた。やっと追いつく私。友人が口を開く。
「暑いから車に戻ろう」
”どこか悲しそうな顔“
の正体は
”暑いから早く帰りたい“
だったようだ。
私は、時より見えた友人の横顔を見て
「暑いね。」と日陰に着く前にUターンの選択肢も与えてくれる人と友人には結ばれてほしいと思った。
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