転生技師は未来世界で無双する
黒犬狼藉
転生技師と学園入学
完璧とは孤高であり、究極とは曖昧である。
アルトラの書より抜粋。
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門が開き、僅か300人程度の新入生がごった返す。
だが動きは緩慢だ、走るような人間は存在せず。
皆が皆、個性無く歩いている。
だが、そこで己の存在を主張する存在は居るモノだ。
高らかに笑う聖女、高慢に率いる貴娘、熱血に語り掛ける令息に冷徹に本を読む青年。
彼ら彼女ら、全てが王国立魔導学園たるアルヴェス・ヴェルトへ入学する生徒だ。
無論、私とて例外ではない。
「まぁ、幾つか没個性的ではあるがな」
言葉を漏らす、最先端のゴシック様式に包まれた学園を見て少し辟易とした感情が生まれた。
最新技術が生まれ、切磋琢磨し埋没する。
その中心部たる、ここアルヴェス。
目に入るもの、耳に届くもの、肌が感じるものすべてが奇異と奇特で飾られる。
そんな学園に入学しようと志す人間が、まさか没個性的であるはずはない。
一見すればソレは猫であっても、まじまじと見つめれば恐るべき獅子であるというのは考えるまでもない話だ。
そして当然、私もその獅子というべき存在だろう。
私は、転生者である。
およそ200年前、栄光の最中にある名誉と財宝の全てを投げ捨て。
私はひたむきに、私の志す究極を探していた。
そのために秘境を渡り歩き、王墓を暴き、理論を組み立て。
可能なことは、全て施行しその結果として一つの完成を生み出した。
また同時に、ソレを完成させたその時に大きな問題へたどり着く。
ソレは、その完成品を扱える人間が居ないことだ。
どんなに万能な道具でも、扱えなければガラクタにすら劣る。
完成したソレは確かに究極であったが、設計者である私以外にその全貌を把握できる人間はおらず。
そして、その時には私も齢90を超える身であった。
死ぬ定めを受け入れるのは、別に構わない。
だがこの完成品が動く姿を謁見せずして、如何にして死ねようか。
執念と妄執、それが突き動かすままに私は延命に延命を重ね。
そして、現在こうして転生したのだ。
「あら、アナタ。珍しい、雰囲気をしていますわね?」
300人もいた新入生が各々の向かうべき場所へと動く中、私に声を掛ける一人の女性がいた。
髪の毛を縦にロールさせ、学生服を赤を基調としたドレスローブに改造している。
彼女は釣り目をさらに吊り上げ、私を睨むかのように見つめ上げ。
そして、問いかけの続きを言い放つ。
「名乗りなさい、アナタも私と同じ学科でしょう?」
「一方的に名乗りを強制するとは、コレはまたモノを知らないのだな? お嬢さん」
「っ、確かに礼儀に欠けましたわね。私の名前はマリア・アドレッシェント、気兼ねなくマリアとよんで構いませんわ」
アナタも名乗りなさい、そう催促するように目線で訴えかける彼女に向けて私も口を開いた。
流れるように、だが短く言葉が漏れる。
投げやりに、無作法に。
しかし、明瞭に。
「ホーエンハイム、のちに名を響かせる天才だ。気安くハイムと呼びたまえ、マリア嬢」
少し、奇異な目を向ける彼女から視線を外す。
そして、中庭に聳え立つ一体の魔導機体を眺めた。
ああ、余りにも楽しみじゃないか。
私の究極が、私の完璧が。
一体、どこまで通用するのか。
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