第27話 アナスタシア王女視点

 私はセデリア国王の長女アナスタシア・セデリアです。


 目の前では側近のベルトランが深刻そうな顔で例の人物の報告をしていました。


「カガ・ダイスケは多数の魔獣を手懐けて一緒に暮らしています。どうやら殿下のご推察の通りかと」


 これまでの報告をまとめると、ダイスケ様はかなり不穏な人物だといえます。


 メイドのイリスと離れの屋敷で暮らし、異世界のスキルで大量の食糧を生産。屋敷を王都騎士団副団長のクラリスと王都魔術師団の天才ドロシーに守らせているというのです。


 今回の報告ではそれに加えて魔獣を味方につけて一緒に暮らしているといいます。

 

 通常であれば、ダイスケ様のことを父上に報告して、何らかの罪で処罰すべきでしょう。王国にとって不穏分子は少ない方が良いのです。しかし私にはこの時、別の目的がありました。


 このセデリア王国では、王位継承権は長男が優先されます。私は長女で弟にベルク・セデリアがいて継承権はそのベルクにあります。


 弟は明るく素直なあどけない少年ですが、宰相や貴族の権力争いが加わりまずい事態になりつつありました。ベルクに王位を継がせ、得をするのは宰相のバルタスです。


 今でも貴族主体・王都中心の国政が行われているのにもかかわらず、ベルクが即位し王国の実権をバルタスが握るとなるとそれが加速するのは明らかでしょう。


 私は今の父上とバルタスの国家運営のやり方にはあまり感心はしていません。昔からバルタスは農民に対する税率をむやみに上げたり、王都から貧困層を追い出したりして評判は良くありません。


 されど私が意見するものなら「アナスタシア殿下には関係のないことです」とバルタスに諫められるのが常でした。


 私のことを、王位継承権のない王女だと見下している態度が目に見えるようでした。


 一方、父上はここ数年、体の状態が芳しくありません。元々父上は国民のことを第一に考える人でしたが歳を重ねるにつれて思考が鈍ったのか、バルタスを過剰に信頼し始めました。


 やがて父上の容体が徐々に悪くなるにつれてバルタスやまわりの臣下はベルクに媚びるような態度をとるようになります。


 「姉上、最近皆が僕をおだてるようになったのですが、なぜだか分かりますか?」

 

 幼いベルクには王位継承権のことは知らされておりません。私は次の国王は貴方だからみんな取り入ろうとしているのよと正直に伝えました。


 その日からベルクは目に見えて落ち込みました。周りの人間が世話を焼いたり優しく接する姿を見ても信じることができなくなったのかもしれません。加えてベルクは政治や国の事にはあまり興味がありませんでした。

 

 やがてある時、ベルクは私に訴えました。


 「僕は国王になりたくないです。それより姉上が国王になれば良いとずっと思っています」


 ベルクはまだ幼く、遊びに夢中な普通の男の子です。国政や権力争い、父上やバルタスの思惑でベルクの人生が左右されるのはかわいそうに思えました。


「分かりました、私が何とかします。だからそんな情けない顔はおやめなさい」

 

 このままでは弟のベルクは傀儡の国王となり、バルタスの権力は以前より増して暴走するでしょう。そんな未来は変えなければなりません。


 私はやりきれない思いが胸に溢れ、抑えていた本音をついに口にしてしまいました。


「力づくでも私はこの国を変えたい。ベルトラン、力を貸してくれますか?」


 この一言から、多くの人々を巻き込んだ国家転覆計画が始まったのです。


 


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