第11話 クラリス視点
私は王都騎士団副団長のクラリス。
この紅い髪と私のとある能力から"
「クラリス、自分の正義を見つけるのだ」
それが父上の口癖だった。
父上も騎士だったがその姿はただ剣を振るうだけではなかった。国政に精通しており貴族や国王が相手でも怯むことなく民のために意見を言い、嘘とごまかしは大嫌いだった。
ときには農民の税負担が大きすぎるのではないかと国王に直談判し、ときには王都の貧困地区に最低限の食料を配るべきだと提案する。
どれも正しい意見に思えるのだがそれらは宰相バルタスに却下された。そのやり取りは父上が亡くなる直前まで王宮で続いた。
その様子は王都の貴族連中に知れ渡っており、融通が利かない奴だと煙たがられていた。その時から貴族は民がどうなろうと無頓着で自分たちの生活にしか関心はないのだと知った。
しかし父上は貴族や宰相に何と言われようとも立場や階級に囚われず自分の信じる正義を貫き通した。私はその姿に私は憧れた。
「私は民のために生きた。お前も誰かのために生きろ」
そう言い残すと父上は病で亡くなった。
間もなく私は騎士団に入ることに決めた。
私は父上のように賢くはない。できるのは剣を振るうことだけだ。
誰のために生きればいいのかなんてまだ分からない。しかし苦しんでいる者を庇い権力に立ち向かった父上と同じように私は生きたい。
その一心で騎士団で鍛錬を積むと気づけば騎士団の副団長にまで上り詰めていた。
セデリア王国には敵国が存在する。
それは北方にあるゲイブランドという国だ。
ゲイブランドの住民は全て魔人で構成されており、ゲイブランドの王は魔人王と呼ばれていた。
ゲイブランド魔人王はあるときこのセデリア王国に灰魔の呪いをばら撒いた。
灰魔の呪いは飢餓状態に陥った生物が魔物化するという奇特な症状を有していた。
その対象は野生動物だけでなく異種族、人間にまで及んだ。
呪いによりセデリア国は多大な影響を受けることになる。
ある日、兵士たちが群衆を王都から締め出している現場に鉢合わせた。兵士に聞いてみるとこの締め出しはバルタス宰相が決めたことらしい。
「恐れながらバルタス様。民が王都の外に締め出されているのを見たのですが、あれはどのようなつもりなのでしょうか」
なんとか無理を言ってバルタス宰相に会って確認をした。
「世の中には知らなくてもいいこともある。お前は剣を振るうしか能がない騎士なのだから王都を守ることだけに集中しろ。それとも父親のように口だけの無能なのか?」
私の疑問にバルタスはなぜか父上を引き合いに出し馬鹿にした。なぜ私は正しいことを問うただけなのに侮辱されねばならない?
その場では唇を噛み気持ちを抑えたがその時の怒りは今でも消えていない。
不思議なことにこの出来事を思い出して剣を振るうと僅かながら剣から焔が出るようなった。それは感情に共鳴しているようで憎しみを感じた時や怒りを感じた時にその焔の勢いは強まった。
それにしても国王陛下はなぜバルタスのような者の意見を聞いているのだろう。まさか何か弱みでも握られているのだろうか。
どちらにしろこのような男が国王の近くにいたのではセデリアに未来はない。
これ以上あの男が私を侮辱することがあったらこの燃え盛る剣で斬ってやろう。
そう思いながら日々を過ごした。
ある日、毎年恒例の勇者召喚が行われた。
残念ながら私はこの儀式に良い印象はない。
この儀式で召喚される勇者は年端もいかない上にこの世界を知らない新参者だ。
勇者は召喚された直後に前世の経験や記憶をもとに魔法や剣技を付与され召喚される。その能力をスキルといった。
私はそれが気に食わなかった。
今まで何人もの人間が努力して培ってきた魔術や剣術をろくに学ばず、ぽっと出の異世界人のスキルとやらでこの世界を救えるとは到底思えなかったのだ。
ただでさえ呪術師、魔術師、僧侶、騎士等の職種間の揉め事や諍いがあり、王国では至るところに魔獣が発生している。その上ゲイプランドには魔人たちが待ち構えているのだ。
これを部外者が全て解決するのは至難の業だろう。
そしてあろうことか、今回の勇者召喚で招かれた一人は能力が低すぎて追放されたというではないか。これでは勇者と聞いてあきれる。
やはり異世界から召喚された無知で責任感のない者にこの国の未来は任せられないのだ。ある男に出会うまではそう思っていた。
最近、王都で奇妙な肉を売っている人物が現れた。しかもその男は先日追放された勇者候補ではないかといわれていた。
その男はカガ・ダイスケという名前らしい。
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