第6話 トマト缶無水カレー
昨日は真夜中にゴブリンに襲われてよく眠れなかった。
「おはようございますっ」
「・・・」
起床すると何事もなかったかのようにイリスは明るく挨拶をしてくる。脳裏に浮かんだのはダガーを持って返り血を浴びたイリスの姿。
このメイドは真夜中に起こったあの出来事に何も感じなかったのだろうか?そうだとすると相当肝が据わっている。
あの後、イリスはこの屋敷について詳しく教えてくれた。
ここは通称離れの屋敷。今まで国王の政敵や処分に困った犯罪者などが送られてくる場所だった。
見た目は何の変哲もない屋敷だが、魔獣の森が近くにあるせいで常に魔獣に襲われる危険性がある。噂ではこの周辺で何人もの消息不明者や死傷者が出ているという。
初日から何も知らずに住んでいたが想像していた以上に平穏な暮らしには向かない屋敷みたいだ。
こんなところで今後やっていけるだろうか。いつか魔獣に襲われて死んでしまったらどうしよう…。
いや、そんなことを考えても仕方がないか。あれだけイリスが強いのだからしばらくの間守ってもらおう。いずれこの問題は何か対策をするべきだな。
ともかく気を取り直して今日も一日にやるべきことを進める。魔獣の問題とは別の問題があった。
それは【業務用スーパー】の通貨であるGPの大半を使ってしまったことだ。
このまま使い込むとスキルが使えなくなってしまう。できるだけ早くGPを増やす方法を考えなくてはいけない。
スキルを使わずにこの世界の料理を食べてもいいのだが、【業務用スーパー】の食材でなるべく美味しい料理を作りたい。
そう考えてGPの稼ぎ方を本格的に調べることにした。
どこかにヒントはないものか。
【業務用スーパー】を色々といじっているとGPについてというページを発見した。
――――――――――――――――――――
GPについて
通貨を直接入金してGPを増やすことができます。
――――――――――――――――――――
なるほど。
通貨を入金すればサイト内のGPが増えて買い物が出来るというシステムか。
早速入金したいのだが持ち合わせの金はない。イリスは現金を持っているだろうか。
「イリス、今この国の金を持ってるか?」
「持っていますが、どうしたんですか?」
イリスに画面を見せて説明する。
「わぁ!魔法みたいで凄いですね」
「こんな感じで料理の食材を取り寄せるんだ」
【業務用スーパー】のサイトを見せるとイリスは表示されている食材や料理を食い入るように見る。
特にお菓子やスイーツの商品に視線がいってるような気がする。その様子を見ると年相応の少女だという実感が得られて何だか微笑ましい。
「すいません、私甘いものに目が無くて」
「このスキルで甘い物なんてたくさん買えるぞ」
そう言うと興味をそそられたのかイリスは身を乗り出してくる。
「それは本当ですか!」
「でも悪いな。今は理由があって甘い物を買う余裕が無いんだ」
「そうですか…」
話を戻してイリスから1枚の銀貨を貸してもらった。画面に差し出すとそれはきれいに飲み込まれ同時に表示されているポイントが1000GP増える。
なるほどな、こうやってポイントを増やすのか。
しかし、このスキルで買い物をするたびにイリスからお金をもらうわけにはいかない。どうにか自分で通貨を稼ぐ方法はないだろうか。
「考えてたら腹が減ってきたな。簡単に昼食を作るか」
「待ってました!」
昼食の準備を始めるとイリスは喜んだ。
スキルで取り寄せた食材や料理を気に入ったらしい。それを見て苦笑しながら献立を考える。
昨日の余った食材も使って何か作れるものは無いだろうか。
【業務用スーパー】を見て回ると、カレーが目に止まった。見てたら何だかカレーを食べたくなってきたな、そうしよう。
とりあえず付け合わせのスープ用の玉ねぎとカレー粉を買い足す。
――――――――――――――――――――
500g刻みタマネギ:140GP
200g業務用カレー:160GP
合計:300GP
残金:1080GP
――――――――――――――――――――
メインの料理は昨日余ったトマト缶があるのでそれを利用して無水カレーでも作ろうか。
無水カレーと言ってもそんなに難しいものではない。ただ単にトマト缶を鍋に入れてカレーを作るだけのズボラ料理。
普通ならカレー粉を水で溶かすが、今回は水を一切使わずにトマト缶のみで溶かす。それだけでカレーとトマトの味が際立って美味いのだ。
トマト缶とカレー粉を入れると他には何も入れずにいったん味見した。うん、これだけでいい感じだ。
無水カレーのポイントはカレー粉を徐々に入れるところにある。カレー粉が多すぎると濃い味付けになってしまうので避けたほうが無難だ。
沸騰させたお湯で刻みタマネギを解凍してそのままコンソメを入れる。これでオニオンコンソメスープの出来上がり。
カレーをつけて食べるのは昨日余ったポテトサラダでもいいしパンでもいい。カレーは万能なのでいずれにしても美味しく頂けるだろう。
イリスと二人で無水カレーを食べるとイリスはまたしても感動しているようだった。
「これもダイスケ様が住んでいた世界の料理なんですか?」
「そうだな。カレーは割と一般的な料理だ」
「ジャガイモやパンによく合いますね。とってもスパイシーです!」
イリスはカレーに夢中になっていて、パンとポテト交互につけて食べている。
本当は米を炊いてカレーライスにしたかったのだが時間とGPが足りなく仕方なく断念した。
いつかは米を気が済むまで食べたい。
「やっぱりダイスケ様の作った料理は美味しいです。王都でもこれだけ美味しいものは食べられませんよ」
「そうなのか?王都だったらもっと美味しい料理があるイメージだけどな」
ん?王都?ちょっとまてよ。
GPを楽に増やすアイデアを思い付いたかもしれない。ようするに自分のスキルを利用してこの国の通貨を稼げばいいのだ。
「イリス、良い考えを思いついたんだが聞いてくれないか」
それを打ち明けるとイリスは何故か苦い顔をした。どうやらこのスキルの事が誰かに知られるのが嫌らしい。
「ダイスケ様のスキルはすごいものなんですよ?悪い人たちに見つかったら大変です」
自分のスキルが誰かに利用されるなんて有り得ないと思ったがイリスの言うことも一理ある。
決して目立ったことはしない、危険を感じたらすぐ逃げる等の約束をするとイリスは渋々納得した。
俺は王都に行ってその考えを実行したのだが、思いのほか大勢の人間から注目されることになってしまった。
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