古本屋のお兄さんは時々異世界に行っているらしい
厘
向日葵
第1話 向日葵1
その古本屋は、賑やかな街の商店街を横道に入ってあまり人が通らないような裏道にひっそりとあった。
こんな場所でよく潰れないなと、誰もが思うだろう。他のお店は昔ながらの喫茶店や雑貨屋など道沿いに数軒しかなく、日曜日の昼間だというのに人通りも少ない。賑やかな商店街アーケードと比べて地味だ。
ただ寂れた感じは無く、その裏道を歩いていると古い桜の木や野草など道端に生えている。
今の時期咲く花、向日葵がプランターに植えられ花を咲かせていた。
私、鈴木あやね。高校一年。
幼馴染みのたくみと教室で、放課後に雑談している時に「良いこと教えてやろうか?」と突然話し出したのがこの裏道に来たきっかけだ。
たくみは真顔になり「秘密にするなら教えてやる」と偉そうに言ってきた。私はムッと苛立ち「何よ?」と答えた。するとたくみは私に近寄ってきた。
「誰にも言わないか?」
こう言うセリフは大抵ロクな話ではない。だけど、幼稚園から一緒の幼馴染みのたくみの顔が目の前に迫ってきて焦ってしまった。
「い、言わない。言わないから!」
目の前に見える幼馴染みのたくみの顔アップ。久しぶりに見た、たくみの顔はずいぶん男らしくなっていた。いたたまれなくて私はたくみから顔を逸らした。
「絶対だぞ?」
そう言うと気にも留めてないたくみは更に近寄り、私の耳元で話し出した。
「聞いた話だけど、『商店街の裏道にある古本屋のお兄さんは、時々異世界に行っているらしい』んだってよ?」
声変わりした、たくみの声が響き少し動揺してしまった。
「は?」
私は思わず変な声を出してしまった。だが聞き違いだろうか? 『異世界』と聞こえた様な?
「何か『異世界』とか聞こえたのは気のせい?」と私はたくみに聞いた。
前の席に座り、身を乗り出して耳元で話していた彼は椅子に座り直した。
「気のせいじゃ、ねえし」
今度は彼がムッとして横を向いた。座っていても彼の方が背が高いなと、ボーッと横顔を見ていた。
「俺、古本屋に行った帰りに裏道の花屋のじいさんに聞いたんだから」
私を睨みながら話す。
「へ、へぇ…」
花屋のお爺さんってもう高齢だったはず? まあ、幼馴染みを馬鹿にしたくはないので黙っている。
「あ、馬鹿にしてるな? 花屋のじいさんは昔、本を書いてて博識なんだぞ?」
そう言って私の頭を突いた。
「確かめて来たら?」
なんて挑発するように笑った。
そして次の日曜日。
家から商店街は歩いて行ける距離だし、お母さんに「商店街行くならお味噌買って来てー!」と頼まれてしまったからだし、たくみに言われて気になったからじゃ……ないはず。たぶん。
私はお店の前に立て掛けてある『あおやま古本屋』と書かれた木製の看板を確認して、扉を開けた。
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