第42話 Midnight
一体どれだけ、俺は彼女の名を呼んだのだろうか。
恐らく俺は今まで人生で最も多くの汗をかいたはずだ。夏の炎天下の体育の長距離走よりも、多分多いんじゃなかろうか。
リビングからマイの部屋へ移動して、相当な時間が経っているように思われた。
お互いに知識も乏しく、経験もない、ただ、繋がりたい、一つになりたいと言う気持ちだけで行われた。男女の営み。
ふと見ると、彼女の顔が、苦痛に歪んでいるように見えた。それが目に入った瞬間、熱に浮かされ、完全に思考が停止していたはずなのに、俺は我に返った。
「あっ、ごめ……。」
「大丈夫だから……、痛いけど、でも、頑張るから、だからやめないで。」
彼女は懇願してきたが、
「でも、傷つけてるみたいで。」
素直に思っていた。その直前まで、自らの欲望のままに彼女を求めていたことに気づいた事で、湧き上がる罪悪感。でも、彼女は言った。
「痛いことは覚悟してたよ。でも、それ以上に、アタシは陽人とずっと繋がりたいって思ってた。だから、どうか最後まで続けてほしい。怖いのは私も、一緒。傷つけたくないっていう、陽人の優しさ。受け止めるから。ね。」
ここまで、言われたら、やめることなんてできるわけがなかった。
やがて、俺たちはとてつもない快楽と言うものに包まれた。俺たちは少し大きめに互いの名を呼んだ。
その後、完全に意識が飛んでしまったようだった。
次に俺が見たのは、限界を超えて弛緩した互いの一糸まとわぬ姿の肉体だった。
脱力しているはずなのに手だけはしっかり握られていた。そして、俺は、童貞を喪失したのだということを実感した。
やがて、マイも意識が戻ったようだった。傍らにいる俺の姿を確認して、微笑んでから。
「しちゃったね。」
と、言った。彼女も、処女でなくなったことをかみしめているように見えた。そして彼女は続ける。
「アタシ達、大人になったのかなあ。」
「わからんなあ、何かが変わったような気もするし、変わってないような気もする。」
俺たちはこうすることで何かを変えたかったのだろうか。初めての営みは、かえって新しい悩みを生み出した。
「ねえ、アタシの事好き?」
マイが聞いてきた。
「ああ、もちろん好きだよ。」
もう、照れることも、戸惑うこともなく、言えた。
なぜなら、それが俺の本当の気持ちだと、気づけたからだ。
「アタシも、だーいすき。」
マイが身体を寄せていた。全裸なので、俺は、ドキドキが再燃しかけた。その後、彼女は、
「うーん、しあわせー。」
と言った。
「ああ、これが幸せってものなんだなあ。」
と俺は呟いた。
この後、俺たちは一緒にシャワーを浴びて汗などを流し、結局その後は二人で、彼女のベッドに入っていた。会話はなかった。相当疲れていたようだ。でも、手だけは繋いでいたと思う。こうして俺とマイの「初めて」は終わったのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます