1、〝悪役令嬢もの〟の悪役令嬢に転生してしまった。

「いやいやいや……そんなわけ……」


 

ちらっと、隣にいる従者の顔を見てみる。


……っ。

私が推しを見間違えるなんてこと……なんてこと……

さすがにないよね……?



「あっ……あの……」

 

「はい、何でしょう?」

 

「あの……ジルベール様でしょうか、?」

 

「そうですが、なにか?しかも、お嬢様が私に様をつけて呼ぶなんて……」


 

ジルベールは、私を見て目を見開いている。

あぁ〜、やっぱりジル様だ。



「すみません、鏡を持ってきてもらえますか。」


「お嬢様が私に敬語を……!?わ、わかりました。持ってきます。」



ジルベールは、慌てて鏡を取りに行った。



「どうぞ。」


「ありがとうございます。」


「少々混乱しているようなので、私はいったん退室しますね。」



鏡を見てみると、


あれ……?

金髪、碧眼は合っているけれど、きつい顔立ちじゃないし、縦ロールでもない……?

ということは、もしかしたらリシェルではないかも、!



「あぁっ!」



違う、やっぱりリシェルだ。だって小説の中のリシェルは、ほんとは絶世の美女で、さらさらストレートのロングヘアという「設定」だったから。



「どうしよう……」



この小説は、

 「悪役令嬢になった主人公が華麗に「死亡フラグ」を回避する」小説なのだ。

つまり、



「このままじゃ私、死んじゃうじゃん!!」



普通の高校生だった私に、死亡フラグを回避できる能力なんてあるはずがない。



「うん、逃げよう!」



今のまま暮らしていても、どうせ死んじゃうしね!それに、せっかく推しが私の従者になったんだから、楽しんだほうがいいに決まっている。



「推しと一緒に逃げて、生き延びよう!ただし、私を殺す攻略対象とは絶対に関わらない!!」

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