第22話 久しぶりの異世界

「こんにちはハヤトさん。お久しぶりですね」


 異世界へのゲートを通り抜けると、すぐ目の前にソニアが待っていた。


 ここはいつもの冒険者ギルドの前ではなく……街のどこか、それも商店街ではなく住宅街というか。

 デカい屋敷が点在していて、どう見ても金持ちか偉い人たちが住む場所だ。


「なんでこんな場所なのさ」


「すみません、今日は色々と忙しくて……自宅の前にゲートを開いたのです」


「自宅だと? もしかして後ろの?」


「はい、その通りです」


 ひええ、これは自宅なんてもんじゃねえよ。


 彼女の背後には高さ5メートル以上ありそうな鉄格子の門扉、更に奥には巨大な邸宅、というか屋敷がそびえ立っている。


 よく考えればソニアはこの王国の大臣の養女なので、これくらいのところに住んでいるのは寧ろ当然のことか。


「……そんなに珍しいですか? ハヤトさんの世界にも大きな建造物はいくつもあったではないですか」


「いや、あれは学校だったりマンションだったりビルだったりで、中には上から下まで多くの人が詰め込まれてるんだよ。この屋敷みたいに家族と使用人が住むだけのものとは全然違うから!」


「そうでしたか。それは失礼いたしました」


「いや、別にいいんだけどさ。とにかくギルドにいこうぜ、ここはオレには居心地が悪くて仕方がない」


「では参りましょう」


 それからオレたちは歩いて街中へ向かった。

 だけどよく考えると違和感が。


「オレは別に徒歩でいいんだけどさ。ソニアは馬車とか使わせてもらえないのか? 養女だから、とかで」


「……父上、つまり大臣ですが……実子とか養子とか関係なく他の兄弟とほぼ同じように接して頂いてます。そのような器量の小さい人ではありません」


 彼女は珍しく語気に力を込めて答えた。

 しまった、微妙な話をわざわざ自分から振ってしまった。


「ゴメン、無神経なこと言って。気を悪くしたなら謝る」


「そういうわけでは。それに騎士になるまでは、寧ろ馬車での移動が殆どでしたから。父上としても気を使っていたのだと思います」


「騎士になってからは徒歩移動が多くなったわけだ」


「時々馬に騎乗することもありますが大体は。兄たちも騎士ですが同じですよ」


「この件はよくわかった。ところでダンジョンはターゲットとか決まってるのか?」


「はい、とても厄介な魔物で……毒を砲弾の如く打ち込んでくるのです」


「なんだよそりゃ」


「おまけに毒は強酸性で、当たるだけでも重傷を負いかねないのです」


「本体はどんなヤツなんだよ」


「現状、接近できた冒険者はいないのですが……どうやら触手を多数持った軟体生物ではと推測されています」


 無茶苦茶手強そうだな。

 でも当たらなければどうということはない、ってやつじゃないのか?


 まあ、オレが呼ばれた理由はそういうことなんだろう。


 そうこうしているうちに冒険者ギルドの建物に到着した。


 そこで引き合わされたメンバーは。


「ハヤト、今日もよろしくな」

「やっほー。今回も頼りにしてるよー」


 タンク役のラファウとヒーラーのリラだ。

 この2人とはしょっちゅうパーティを組んでいるので、もはや顔馴染みだ。


「お久しぶりですね。よろしくお願いします」


 しばらく前に一緒に10階層の手前まで行った僧侶のライサさん。


 彼女からはとても切れ味鋭いナイフをもらってお世話になったので頭が上がらない。


「あら……小柄でなかなかカワイイ子じゃない。でもカラダは引き締まって、ワタシ好みのタイプかも」


 セリフだけだとセクシーなお姉さんぽいが、これを話しているのは2メートル近い筋骨隆々のオッサンである。


「ワタシ、聖職者のユゼフ。イザとなったらワタシが坊やを守ってあ・げ・る」


「はあ、それはどうも」


 この世界では聖職者は僧侶の上位職らしいが、何で同じタイプを2人連れて行くのかよくわからん。


「わたしは魔法使いのユリサ。へえ〜、キミが噂の神速君か〜。よろしくね」


 この人とは初めてだ。

 年はオレと同じくらいか……名前もだけどなんとなく友梨に近い雰囲気で、なんかクラスメイトみたいに錯覚しそうだ。


 そして……。


「おい。俺と会ったときは最上級にへりくだって挨拶しろっつたよな?」


 同じく魔法使いのレック。

 コイツとは以前に一緒に潜ったが、はっきり言ってオレとは仲が悪い。


「なんでそんなことしなきゃなんねーんだよ?」


「あぁ!?」


「そこのお二人! 揉め事を起こすのであれば、今すぐ報酬ゼロでパーティを解散しますので」


 不穏な空気を察したパーティリーダーのソニアから警告が入った。

 彼女は脅しだけでなく本当にやる女性なので無視はできない。


「ソニアちゃ〜ん、さっきのはじゃれ合いだから本気にしないでよ〜。……チッ、命拾いしたなクソガキ」


 あー鬱陶しい。


 それはともかく、メンバーは揃ったみたいだ。

 いつもより人数が多いが、それだけの強敵なのだろう。


 というわけでオレたちは早速ダンジョンに潜ったのだった。






<後書き>


先週はほとんど更新できず、続けて読んでくださっている読者様には申し訳ありませんでした。


それと遅くなりましたが、本小説のフォローと♡応援をいただいていることに大変感謝しております。

励みにして連載を続けております。


あと、今後の更新頻度ですが……誠に勝手ながら週1、2回程度の不定期連載とさせていただきます。

よろしくお願いします。

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