「天下無双」「ダンス」「布団」で自分を考える。
「天下無双」「ダンス」「布団」で自分を考える。
人はあやまちをおかす。たとえば、難しい内容の授業中、この現実から、脱出するため、ノートへ思いついたオリジナルキャラなどのイラストを描いてしまったりする。さらそのキャラクターの名前を決め、性格、特技などの設定なども箇条書きで記入してみる。最後の行に『天下無双を目指している』などと、心がおどる設定も追加してみる。やがて、授業は終わったとする。それから数日後、同じクラスの気になる相手から、この前の授業休んだから、ノートを貸して欲しいと頼まれたりする。それが、断るには、おしい相手だったとする。要望に応じることで、ちょっと、この人に気にいってもらえればいいな、などと思ってみたしまったりする。へへ、いいぜ、ひとつ貸しだぜ、と言ってノートをかす。受け取った相手はその場でノートは見ず、家もしくはカフェでノートを見る。そこで描いたキャラクターを見られる。設定も見られる。その設定がもし『天下無双を目指している』と書いたつもりだったのに、書き間違えていて『添加物夢想を目指している』と書いてしまっていたとしたら。
こいつは、なにを目指しているのだろう、と思われてもしかたがない。それでも、相手は、気遣い、気づいていないふりをしてノートをかえしに来る。だが、相手が気づかふりが恐ろしく下手だったとする。役者ではない人にノートを貸すと、そう危険性がある。しかもノートを返却する際、うーん、よけいなページは、みてないからさ、ぜんぜん、と目を反らして言ってきたとしら。
そう、かつて、現実から脱出しようとして描いたイラストによって、さらに現実から逃げたくなる。しかし、実家には一人部屋がない。そこで、小さな頃、恐い夢を見たとき、やっていたように、洋服ダンスの中へ逃げ隠れたとする。でも、洋服ダンスの中は、布団でぎゅうぎゅうだったりする。おい、誰だね、タンスの中に、布団を収納したのか。圧縮もせず、完全なる力技で入ってるし。布団は押入れにしまうだろ、ふつう。
ふつう。
ふつうって、なんだ。
ふつう。昨日と、同じ今日。同一に生産される、類似する時間の流れだったとして。しかし、その流れはもはや、ここに崩壊した。どんどこと、音を立てて崩れた、添加物よって。
そして、夢想する。添加物のことを。
しかし、目が覚める。そうか、あれは夢だったのか。なんだ、夢か。安堵して、畳に敷かれた布団から出る。だが、はっ、となる。うちは布団じゃない、二段ベッドだった。そう、布団ではない。そして、また、目が覚める。今回は布団で寝ていたのは夢だった。
いまは、教室の机につっぷしている自分がいる。
これもまさか、夢なのか。
でも、後日の同授業のテストの点数が悪かったので、授業を聞いていなかった現実だったとする。それで、やけになる。また授業を聞かずに、ノートにイラストを描いたりする、そんな日々。
そんな、日々は、自分の人生はなかったなあ。
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