妖精について仲間入りで考える。
妖精について仲間入りで考える。
ある日、妖精が現れたとする。森を歩いていると、妖精が現れるのに、おあつらえ向きな幻想的な花畑、または、まあ、こんな感じです的な眩い泉へ立ち寄ったとき、妖精が現れたとする。さて、このときに、なによりも重要なのは、妖精のサイズ感ではないか。想像するに、手のひらサイズの妖精が現れた場合、人はきっと、とりあえず、驚愕のみに集中できる。しかし、もしも熊のサイズの妖精、体長二メートルを越す、アメリカグマ規模の妖精が現れたとしたら。きっと、妖精として認識するまでに時間がかかる。まっさきに頭は、妖精が出たぁ、ではなく、何かやばいの出た、と判断するのではないか、そして、死のセンサーが発動するのではないか。ああ、終わった、こいつは俺の生命を摘む、ぷりと、摘むんだ、と思わないか。エンドゲーム開始の音がきこえてくる。ゆえに、妖精にとって、最も重要なのはサイズ感という疑惑がある。いいや、この世界には熊の大きさの妖精がいることだってあるのかもしれない。それでもやはり、いきなり熊くらいの大きさの妖精に登場されると、けっきょくは、ほぼ熊と同じ圧力なので、熊が登場したと同等の反応をされたとしても無理はない説がある。でも、まあ、慣れれば、大丈夫さ、と時間が解決する可能性は考慮できる。だが、現代人には時間がない。時間に追われ、時間と戦い、時間に負ける。
いっぽうで、サイズの問題ではなく、登場のしかたの問題ではないとも考えられり。だって、いきなり現れると、相手は心の準備ができない。そこで、たとえば、森の中を歩いているとき、ふと光あふれる花畑へたどり着いたとして、すぐに妖精は出出ないようにする、まず舞台袖で待機する。そして、ターゲットに対してリラックス効果が望める御香をたいて、かがせる。スモークもわるくないが、舞台装置用のスモークは電源が必要だし、森に電源を用意するのは難しいし、装置操作するためには専用のスタッフもいるので経費がかさむ。そこで御香である。ただし、いつも買う御香よりも、ひとまわり値段の高い贅沢な御香を買う。それをたく。いい香りがただよって来たら、ビー、と、ブザー音を鳴らす。それから、字幕を出す。妖精のふしぎなチカラを駆使して、空中になんとかして字幕を出す。そのときは、やわらかい書体が好ましい。字幕には『これから登場する妖精には、一部の強い刺激がありますので、ご了承ください。』と描く。さらに二段目の文章に『また、演出の都合上、なんとなく、あたりが暗くなったりします。』などと書いておくといい。その後、完全な著作権フリーなゆったりとした音楽を流す。
そして、妖精を登場させる。このとき、はじめは、手のひらサイズで登場するべし。笑顔で登場し、手始めに、天気の話や、今日はどの在来線に乗ってここまで来たか、などの会話をする。余裕があれば、相手の服装や、所持している小物を褒め、なくても関心があるふりもし、コンタクトをとりつつ、徐々に、こちらの身体を大きくしてゆく。むろん、急に熊みたいに大きくなってはいけない、新人は焦ってこれをやりがちだった。はやく売れなければと、あせってやってしまうことが多い。新人はマネージャーの指示に従おう。そして、やがて、会話もなくなった頃に、丁度、熊くらいのサイズを完成させることが望ましい。
で、これが、本当のわたしなんだ、と、ばかりに見せてやるといい、そのサイズ感を。
あと、最後に、相手との記念撮影には喜んで応じよう。事前にオリジナルの全身ポーズや、ハンドサインも考えて、用意しておこう。それと出口付近に、物販コーナーには設置しよう。物販の支払いは電子マネー専用にしておくと、おつり用の小銭を用意する必要がなくなって運営の負荷が軽減される。むろん、その場合は、前もって、電子マネー決済オンリーと告知しておこう。
さあ、これでもう、きみも明日から、人気妖精の仲間入りだ。
ぞんぶんに、輝いてしまえ。
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