第14話魔石の色と属性
ダンジョン攻略の観戦を終えてすっかり日の沈む夜に差し掛かる頃、家に着いた僕と父さんは、スクールから帰ったカリナ姉さんと母さんの作った晩御飯を食べていた。この世界に来て初めて魔物の姿を映像で見た僕は少し興奮して今日の出来事を話す。
「それで、魔導師のお姉さんが火の魔法を放った後、剣士のお兄さんが腕を狙って剣を振り上げたんだけど・・・・・・」
それからも食事中の会話のほとんどが今日見たダンジョン攻略の話で終わってしまった。
話したいたいことも存分に話した僕はまだテーブルにつきながらも食事の満腹感、会話の満足感、そして今日一日の疲労に急に襲われ瞼が重くなり始める。まだ小さい体だからか、眠くなるのが早くて困る。しかしうつらうつらする僕の眠気は、母さんのかけた次の一言で一蹴された。
「あら、もうお眠ね。じゃあステータスの魔石の作成は明日にしようかしら」
一気に目が覚めた。
「だ、ダメッ!今日する!」
突然飛び起きるように言葉をまくし立てる僕に、「あらあら」と母さんは口に両手をあてて笑っていた。
「それじゃあ、今から始めましょうか」
そんなアイナの言葉に食事を終え、まだテーブルに残っていた父さんとカリナ姉さんも「始めるのか?」「いよいよね!」とその場に残る意思を露わにする。
「といっても、昼間のギルドカードと同じように魔石に血を吸収させるだけなんだけどね」
そういいながら昼間にもらった指輪とステータスの魔石を用意する母さん。
「なんでギルドカードを作ったついでに作らなかったの?」
ギルドカードを作った時に親指の腹を針で刺して血を出した僕は不思議に思って母さんに質問する。
「それはね。これよ」
母さんは首にかけていた自分の首飾り型のステータスの魔石を見せる。
「うん。母さんのは綺麗な赤だよね」
普段から目にする機会があったため、母さんの魔石の色はよく知っている。
「ウィル、カリナ。あなた達の魔石も見せてあげて」
父さんとカリナ姉さんは自分の指に嵌めていた指輪型の魔石を僕に見せる。
「父さんは茶色、カリナ姉さんのは青・・・・・・いや緑?」
父さんの魔石の色ははっきり茶色だとわかるけど、カリナ姉さんの魔石の色は青か緑のどっちかわからないターコイズだ。
「通常、魔石の色は自分が契約している精霊の持つ属性と同じ色になるの。その方が色々便利だからね。属性の色は・・・・・・」
魔石の色 基本属性:色
火:赤 水:青 雷:黄
風:薄緑 土:茶 闇:紫
光:白 回復:緑 無属性:透明
最後に「風と回復の色の見分けは難しいけれど大体こんな感じよ」と母さんが教えてくれた。
「でも例外があるの」
今度はカリナ姉さんが話しを始める。
「普通精霊は1つの属性に特化するんだけど、そうじゃない精霊もいるの」
カリナ姉さんは自分の精霊であるフェアーリルを呼び出す。
「この子も例外の一つ。精霊の属性はその精霊の特性に大きく関わるんだけど、精霊の特性が強すぎるとその精霊の持つ属性が何の属性かわからなくなるの。ありがとう、フェアーリル」
カリナ姉さんの一言でフェアーリルは再び姿を消す。
「そしてそういう時はステータス魔石の色の対象が自動的に元々持っている使用者の魔力属性になる。私の元々持っていた魔力属性は水に風に回復だからその色が混ざってこの色の魔石になったの。そうよね、母さん?」
「ええ、そうよカリナ。よく勉強してるわね」
そしてこの時点で僕はなぜ家で魔石を作るのか、その理由に気づく。
「あ・・・精霊との契約できてなかったら・・・・・・」
「そういうこと。カリナが魔石を作った時は新人の受付の子が見たことない色に取り乱しちゃって、ちょっとした騒ぎになったのよ」
「ああ、そういえば今日の受付の子ってあの時の新人の子じゃなかったか」
父さんが何か思い出したようにどうやらあの受付のお姉さんは僕たち家族に縁があるらしい。
「ええ、あの子も経験を積んで大丈夫だとは思ったんだけど。念には念を入れなくちゃね」
それはそういう結論に落ち着くだろう。いってみれば僕は例外の中でも精霊契約ができていない例外なのだから。
「それじゃあそろそろ魔石に血をつけましょうか」
母さんが渡してくれる針を受け取る。
「り、リアム・・・・・・私が変わってあげるわ」
その様子を見てカリナ姉さんが自分が代わりに針を刺すと提案する。
「おいおい、それじゃあダメだろ」
笑いながら父さんはカリナ姉さんに「カリナの魔石ができちゃうだろ」と諭す。そしてそんな中、僕は針で指の腹を刺す。プクッと張力で丸くなっている血は当たり前だが赤い。そして ──
血のついた魔石が真っ黒に染まった。
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