第25話 作戦考案中
リーダーは姫サークルに知り合いいるって言ってたから、情報収集もしてくれた。
どうやらピエナちゃんは、侍らせてるメンツとズブズブの関係らしい。
STP付与してくれるお金持ちの大学生とか、社会人として働いててそこそこの地位にいるらしい人の愛人だとか、とにかくタツキに振られたあと、手当たり次第に良さそうな相手と懇ろになってたらしい。
で、PVPの大会出るためにサークルメンツ集めて回ったんだけど、可愛い愛人が復讐したい相手だからカレピッピたちも奮起してるらしい。相手には相手の正義があるものだ。
「魔法使いの姫装備はプライドあって外せないらしいから、魔法使いが持ち込める回復アイテムの数だけは確実にゾンビ戦法で時間浪費させてくる。
タツキがいようがいまいが関係ないな。うちのサークルメンツにも恥かかされたって思ってるんだとさ」
煽ったメンツは知らないふりをしてるけど、もはやうちのサークル自体をピエナちゃんは恨んでるらしい。
具体的な作戦会議もその後、何度か重ねたけど……補欠から正式メンツに入ったから、さあ大変。
普通のサークル戦でも補欠は補欠程度の動きなわけで。本来なら大盾で受け止める分をリーダーが頑張ってるから、タツキたちダメージソースには私がアイテムやスキルで支援強化しなきゃいけないんだけど、状況判断が忙しくて目が回った。
正直何が悪くて何が良かったかも分からないくらい必死で、反省会をみんながしてるから私も落ち込んでる場合じゃないって向かってく。
けど……改善点を求めても、みんな困り顔で言葉を濁した。
「まーミツハも補欠から上がりたてだし。
焦らずちょっとずつやってけば良いんじゃね?」
「バックパッカーなりのサポートは頑張れてる……と思うので。
慣れるまでは回数を重ねていくしかないかと……」
マゼンタさんもウエイさんも、私が下手プレイしたせいでダウンしたのに何も言ってくれない。
短気なドラゴンライダーさんがピリッとしてるのはいつも通りだけど、やっぱり私より大盾のドドさんいた方が和気藹々としてたから、流石に凹む。
でも、タツキだけは私のところに来て改善案を一覧で出してくれた。文字多くてスクロールが止まらないレベルだった。
「重要なことは上の方にまとめたけど、特にHP管理重視しよう。サポートが先にダウンしないように、五割以上の維持が必須。
マップと照らし合わせて相手の位置確認するのも重要だな。最後西から打たれたのに気づいて、慌てて逃げ出したのが見えた」
「う、うん、ごめん」
タツキ、前衛なのにわざわざ見てくれてたんだ。
他にも書き出されたメッセージを必死になって読んでたら、タツキが頭ポンポンしてきた。
「あとはドドの代わりだって思わずに、自分がレギュラーだって自信持つのが一番大事。
バックパッカーにはバックパッカーなりの良さがあるはずなのに生かしきれてない……って俺たちも考えてるから、負けてもミツハだけの責任じゃない。これも覚えておいて」
「タツキ……」
「ミツハが真剣なのはみんな分かってる。
『自分たちも正解がわからないのに言うのは可哀想だ』って思ってて、誰もが何も言えないだけ。
もちろん、俺は師匠だから遠慮せずに思ったこと言うけどな。
出来ること増えればみんなもっと頼りにしてくれるから、焦らずに一つずつ練習していこう」
いっぱしのプレイヤーになったつもりでも、PVPではペーペーだからタツキが教えてくれるのが本当にありがたい。
前よりもソフトになったのは良い上司計画の賜物かもしれないけれど、私だって頑張ろう、甘えてなんていられないって落ち込んだ気分も吹き飛んだから顔を上げられてた。
「ねえタツキ、ダウン前に多分スナイパーに打たれたんだけど、遮蔽物利用してても貫通って出来るの?
射線切ったって安心してたのに当たったのが気になって。
後で調べようとは思ったんだけど、本職だし教えて」
「ああ、スキル使ったら距離によっては打ち抜ける仕様になってる。
ただ強力な分だけ硬直時間長めに設定されてて相手もしばらく動けないから、そういう時は誰かにヘルプ出して……」
多人数対多人数なんてほとんど経験ないから、やること多くて覚えるの大変だった。
染み込ませるのはもっと大変だけど……それでも連携とって遊ぶのって補欠で見てるより全然楽しかった。
強制ログアウトで出ても、たくさん悔しい思いしても、まだやりたいってドキドキしてる。
せっかく教えてくれるんだから、もっと上手くなってやるって必死になってタツキの指導にも喰らいついた。
一生懸命やってると短気なドラゴンライダーさんも「自分にスキル掛ける時はこうして欲しい」って教えに来てくれた。
ウエイさんはエモート出したらSPポーション投げて、マゼンタさんは「スタンドアローン型だから放っておいてー」って希望も伝えてくれるようになった。
ネットの攻略情報だけじゃなくて、個人の希望もあるんだって必死に覚えた。
リーダーが作戦を考えてくれて、少しずつ練習して上手くなっていく。
サークルメンツ内でも練習メンバー組んで戦ってくれたけど、毎日練習するの大事だっていろんな組み合わせと当たりながら思った。
……ただ、ゾンビ戦法だけはどうにもならなかった。
EGは貴重なアイテムだから無闇矢鱈に使いたがる人がいないこともあって、サークルメンツでヒーラー増やして戦ったけど、倒し切るのに時間がかかってうまくいかない。
一回十分っていう制限時間はあるけど、多分ピエナちゃんに絡まれたら予選は勝ち抜けない。
リーダーの言う通り、プラスポイントにするためには特別な方法が必要になってくる。
盗賊のマゼンタさんも弓を片手に装備して、遠当てのスキルを取り直した。
「ピエナ速攻撃破とかどうなんすかリーダー。
ダウン中ならアイテム使用制限かかると思うんで、良いと思うんすけど」
「俺も考えたけど、隣にいるミラが厄介なんだよなー。
剣士のスキルポイント『全員集合』まで振ってて、ピエナに近づこうものなら火力集めて潰す作戦っぽい。
あとあいつらも被りアイテム持参してるんだとさ。姫が倒されてもカバー出来るように、当然使ってくる」
みんな大会に本気だから、いろんな意見が出た。
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