第14話(短) 白パンとカビパン
「しろい、ぱんが、たべたいの」
えいるは、にぃちゃに、いった。
まちで、みた。おおきくて、しろくて、やわらかそうな、ぱん。
ちいさな、おんなのこと、おかあさんが、それを、かってた。わらいながら、てを、つないで。うちに、かえってく。
だから、えいるも。しろい、ぱんが、あったら。
しあわせに、なれるのかな、って。
「ほら」
にぃちゃが、もってきてくれた。ちいさな、ぱん。しろくなくて、つぶれてて、すっぱい、においが、した。
「……おいしい。……ありがと、にぃちゃ」
にぃちゃ、けが、してた。にぃちゃも、おなか、へってるのに。ぱん、もって、くるのに、いっぱい、いっぱい、がんばって、くれたって、わかった。
だから。
あれが、せかいいちの、ぱん。うまれてから、いちばん、おいしかった、ぱん。
◇ ◇
「白いパン、うまかっただろ。あのうすい肉も、甘いのも、たっぷりのミルクもな」
「そだね、にぃちゃ」
「いっぱい食べたら、エイルは、きっと元気になる。カロリーと、コハクといっしょに街を出たら、おれも働いて、腹いっぱい食べさせてやる。白いパンだって、なんだって、世界一うまいものを……」
「もう、たべたよ」
「え?」
「……せかいいち、おいしいの。……にぃちゃが、もってきてくれた、ぱん」
「なんだよ、それ。あの、つぶれてカビたパンだろ。あんなの、ぜんぜん……」
「にぃちゃが、がんばって、もってきて、くれたから」
「うん」
「……えいるは、あれが、せかいいち」
えいるが、いったら、にぃちゃ、わらって、ないてた。
おおきな、こはくが、にぃちゃの、かお、おっきな、したで、なめる。
「……!」
「どしたの、こはく?」
こはく、ぐるるって、うなった。なにか、やなこと、あったみたいな、かお。
「なんだよ、この煙……⁉」
ひが、もえてる。おうちの、まわりで、いっぱい。
したに、おりた、にぃちゃが、とびら、たたいてる。
「あかないッ⁉」
そとから、 いやな、わらいごえ。
「逃がすわけねえだろ! お前ら、ぜったい許さねえからな!」
しってる、こえ。いやなこと、する、まちの、にんげんたち。おうちの、まわりに、いる。
ひが、いっぱい。おうちが、どんどん、もえてく。
けむりが、どんどん、はいってくる。あつくて、むねが、くるしい。
「苦しみながら焼け死ね、害獣どもが! あはははははははははははははは……!」
こはくが、ふくを、かじって、えいるを、せなかに、のせる。
“つかまって”って、こはくの、こえが、きこえた。
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