深夜0時の密室

@hiroesan

第1話

時計の針が「0」を指す瞬間、静まり返った部屋に小さな音が響いた。カチリ、と空気を切り裂くようなその音に、僕は背筋を伸ばす。

密室だ。

この部屋にいるのは僕一人。ドアも窓も鍵がかかっている。なのに、確かに聞こえたのだ。

どこからか足音のような音がーーそれも、自分のすぐ近くから。

恐る恐る振り返ると、そこには何もない。ただ暗闇と、ベッドに乱雑に置かれた荷物があるだけだ。けれど、何かが「いる」という感覚が離れない。

僕は意を決してスマホのライトを点け、部屋を照らしてみた。その光が、ある一点にたった瞬間、心臓が止まりそうになった。

床に、一滴の血が滲んでいる。

「なんだこれ......」

その時、背後から低い声が聞こえた。

「一一見つけた。」

振り向いた僕が見たものは、この部屋にいるはずのない、真っ黒な人影だった。

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