第30話 3- 7 邂逅 -新たな出会い-
彼女の名前は
『レイ……めっちゃポジティブやねん。だけど地雷系キャラとして人気になったもんで辛くってなぁ。レイのことをレイと呼ぶ癖と、似非関西弁だけは抜けへんねん。ちなみに生まれも育ちも埼玉やん』
「それで隷さんはなんでここに?」
『隷でええねん。レイも奏多って呼ぶやさかい。でな、何か変な模様の紙を見たと思ったらここにいて、変なおっさんが黒いの出したと思ったらこうなってたんや。レイのこと誰も気づけへんし困っとったところや』
もしかして……彼女もまたユッシに体を乗っ取られた……って、そういえば
『この人、さっきから黙ってるけど、どうしたん?』
『ああ、奏多はたまにこうなるのよ。きっといろいろと頭の中で考えているんだと思う』
「そうだ! ねえ隷、なんでその体のまま彷徨ってるのかわかる? 僕の時はサイに送ってやるって言われたけど」
『そうやな。そう言われたんやが、1日の猶予をやるから逃げてみろって言われたんや。レイ、めっちゃ方向音痴やねん』
そういうことか……。ユッシが隷に与えた猶予期間に倒されてしまった。それでこの姿のままここにいると……と、いうことはこの状態は僕たちのせい?
『ねえ隷ちゃん、これからどうするの?』
『まぁなんとかなるやろ。誰も気づいてくれへんから、ちぃとばかり不便やが、食べようと思えばその辺にあるもの食べられるし困らんやろ。これも運命や』
なんか罪悪感があるな。僕たちも不可抗力だから仕方ないけど……
『もし良かったら、わたしたちと一緒に来ない? きっと奏多が何とかしてくれるわ』
「良かったら、一緒に来ないか?」
零と言葉がかぶってしまった。
『ええんか。カップルに割り込んだら悪いと思って言えなかったんや』
『ち、違います!』「同級生です!」
変な風にハモってしまった。
『違うんか。そんなオーラが出てたやさかい。それなら遠慮なく間に入らせてもらうわ』
「それでひとつ聞きたいんだけど、さっき、変な模様の紙って言ってたよね? もしかして六芒星みたいなのじゃなかった?」
『あー、椚さんの部屋に有ったやつね』
一生懸命に思い出そうとしている隷。そして手をたたいた。
『そうやそうや、六芒星の不思議な模様だったわ。なんか見てると吸い込まれそうになるんや』
「椚の時と一緒か……。それってどこにあったの?」
『控室や。ドラマの撮影を待っとったんや。前からめまいがするなーって思ったんやが、これを見たら一気に眠くなってな。気づいたらここにいたんや』
零の時と同じ感じか。六芒星の紙が霊界と俗界を繋ぐカギになっている。そもそもなんでその紙がそこにあったのか……故意なのか偶然なのか……故意だとしたらどうやって手に入れ、なぜ手に入れることができたのか……。
『ほら奏多、考え事はここじゃなくてもできるでしょ。早く帰らないと夜になっちゃうよ』
「あ、そうだね。じゃあいったん帰ろうか」
僕たちはフィブス-ラに戻った。オレンジ色の道を歩けば獣が寄ってこない。”母さんの秘伝”によると、この道には特殊な技術で霊力が練りこまれており、獣や魔獣などの生き物を寄せつけない効果を持たせているようだ……いろいろと疑問は残るが、今はそれどころではない。
▶ ▷ ▷
「はー。なんか帰ってきたって感じだなぁ」
『ルネール村もフィブス-ラの街も故郷みたいなものね』
本当にそんな感じだ。慣れ親しんだ場所という感じがして心が落ち着く。
『ほぇ~ ごっつ凄いやんか。話しには聞いたけど、こんなところもあるんやなぁ』
すっごく分かる。僕と零も初めてこの街に来たときは同じ反応をしたものだ。多くの売店が並ぶ中央通り、そして……あ、ふたりともどこに行く!!
『こっちよ隷、ここの串焼きが美味しいのよ』
『勝手に食べて大丈夫なんか、レイ、お金持ってないねん』
『大丈夫よ大丈夫、霊となったわたしたちの特権よ。あっちでは減ってないからどんどん食べてね』
またやってる。ここを通るたびに好きなもん食べるんだもんな。僕なんかバイトもしてないしお小遣いももらってないから食べたことない……バイトするか……それともミヤビに行ってお金を借りるか……。
『奏多ー。美味しいよ!』
『ごっつ美味しいやん。あっちと違ってワイルドな味がするねんな』
『そうそう、これって魔獣ハンターが狩ってきた肉なんですって』
この盛り上がりは、女子が推しを語っているなテンションのようだ。好きなことを話す明るい声は元気をもらえる。
ミヤビの家に向かっていると、マモルとすれ違った。何かを考えているのかこちらに気づいた様子はない。
そういえば出がけにマモルに絡まれたんだったな。ニャーレとの戦いはどうなったんだろう……と、立ち止まった時だった。彼がこちらに気づいたのは。マモルは慌てだした。
「俺はお前に負けたわけじゃないからな、あの時はたまたま体調が悪かったんだ。運も実力のうちって言うが、俺は近年まれにみる悪運の日だったんだ」
息継ぎなしの早口で一方的に話し終えるとマモルは走ってどこかに行ってしまった。
『負けたみたいだね』
「そうだね。それにしてもニャーレ、特訓したって言ってたもんな。強くなったんだな」
『なんやさっきのやつ。すっごい負け惜しみを言っとったようだが』
『あのね──』
隷に零が事情を話してくれた。ふたりの霊が向かい合って話している姿にまだ慣れない。不思議な感覚を覚える。
『なんやなんや、青春やんか。男ってのは虚勢を張って叩かれて跳ね上がっていくんがカッコええんや』
こっちもまだ慣れない。テレビで見たことのある隷と目の前にいる隷のギャップが違いすぎる。
無事にルネール村で桜花をこちらに迎え入れることができた。姿が見えないのは心配だが、クロノスと一緒なら大丈夫だろう。僕も桜花やニャーレに負けないように頑張らないとな。
「その前に、霊糸を直してもらわないと」
こうしてルネール村での一波乱を終えて家に帰った。そして更に衝撃的なことをミヤビに告げられた。
「そろそろこの家を出た方がいい。霊界の社会事情なんかも知る意味で仕事をしながら学校に行くんだ。部屋はこちらで用意してある」
ミヤビからの自立宣告であった。
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