第14話 2- 3 基地 -秘密基地での友情-
教えておいてほしかった。霊界での戦いは霊力が基本であるということを。
「霊界はね、霊力が肉体を纏っているの。これは人でも獣でも同じよ、そして、その霊力を上回る霊力が乗った攻撃でなければ、ダメージは与えられないわ」
「僕がルネール村で獣を倒せたのは?」
どうやら、物にも僅かな霊力が纏われており、僕の攻撃に込められた勢いが僅かな霊力に上乗せされ、結果として獣の霊力を上回ったのだろう、とミヤビは説明してくれた。
「弱い個体しか倒せなかっただろ」
「……確かに、そうだとすれば霊力を強くすれば、もっと強くなれるのか」
「それは違う。村で生きるために戦いの術だけは学んでそれなりの強さを得た、とは言っても、せいぜい中等部のトップレベルだ」
こんなところで足踏みなんかしていられない。僕は……桜花も、椚も、助けることが出来ないちっぽけな存在なのか。
『奏多、ほらここに来る時に腕輪に文字を書いたじゃない。あれは使えないの?』
「そうだ! すっかり忘れていた。確かに岩に穴を開けた……これなら! ……ミヤビ、もう一度、あの人形と戦うことは出来ないかな」
ミヤビは、眉間に深く皺を寄せて、しばらく考え込んでいた。
「うーん、あれは学校の備品だからなぁ……まあ動かないやつで良ければ家にあるぞ」
そう言うと、ミヤビは奥の部屋に向かい、収納をゴソゴソと漁りだした。
「確かここに……、いやあっちだったか……、昔過ぎて覚えてないな。あ、そうだ」
大きな独り言を言いながら、しばらく探してくれた。そして……「あったー! これだこれだ」と叫んだ。出てきたのは、学校で見た
「すごい人形だね。なんか色々と装飾されてて……」
「まあ昔は教師だったからな、
人形に力を込めるように、ミヤビが勢いよくその腰に掌底を打ち込んだ。
「動かすためには公用の道具が必要なんだ。立ってるだけの木偶の坊なら、霊力を注入するだけだから、今回の試しには、ちょうどいいだろう」
ミヤビに「部屋で暴れられても困るからな」と案内されたのは、地下室だった。教師時代に、訓練場として、
「
ミヤビは、教えてはくれなかった。ただ「恩人だ」とだけ、寂しそうに呟いた……。
「それより試したいんだろ。その木偶は1から10まで数字が出せる。8は小等レベル、5が中等、3が高等、1や2は更に上だ。とりあえずやってみろ」
腕を胸の前に持ってきた。そして腕輪に刻んだ文字、”衝撃波”を念じた。
「よし!」
「さすが奏多! ふたりの結晶ね!」
壁際まで吹き飛んだ人形に、期待に胸を膨らませ目を向けた。胸の数字は②。
「すごいじゃないか、超高等レベルだぞ。クラス分けテストでそれが出たら、文句なしでクラスSだったな」
驚きの言葉とは裏腹に、どこか暗い顔をしているミヤビの表情が無性に気になった。
「何かまずかったですか?」
「いやな、お前が何をやったかはあえて聞かん。迷い込んだ俗界人の過去は、お互いに知らない方がいい……」
「まさか……ミヤビも……」
「知らない方がいいと言っただろ……まあいい。その攻撃は、うまく使わないと魔物と勘違いされる」
ミヤビは、淡々とした口調で教えてくれた。軌道が見えない攻撃は霊界の
「"母さんの秘伝"で通らないかな」
「そうだな。私には伝わるかもしれんが難しいだろう。それに過ぎたる力は身を亡ぼす。滅多なことで使わない方がいい。お前は、変に目立たない方がいいだろう」
確かにそうだ。僕は、学校でこの世界のことを知りつつ、今ある問題を解決していきたいと思っている。 それに……最近は、勉強する機会が少なくなって、少し物足りない。平和な学校生活で、様々なことを学びたいしな。
『霊界の言葉は、ある程度分かるようになったんでしょ?』
「とりあえず、日常生活に必要な読み書きが出来るくらいまでは……文字は違うが、音はなぜか一緒なんだよな」
本当に不思議でならない。いたるところに書いてある文字は、見たことがなかった文字列が並んでいる。しかし、普通に会話が通じる。
「独り言か? まぁ、確かに俗界人はそう思うだろう。詳しくは分からんが、個々の持つ言語の音情報を、霊界の空気が、霊界語に自動変換するという話だ。ルーナの本にも書いてあっただろう」
「”母さんの秘伝”に?」
ミヤビは悪戯っぽく大きな笑い声を上げた。
「それにしても”母さんの秘伝”とは面白い名前を付けたな。もしかしたら冗談っぽく伝わるかもしれないぞ」
そういうことなら、なんとなく納得した。霊界の空気が、言語を自動変換……本当に、不思議な世界だ。
『不思議じゃない、奏多? この世界は霊界人しかいないんでしょ? なら別に、自動変換なんてする必要ないし、逆に、霊界人以外を炙り出せると思うんだけど』
……確かに、零の言う通りだ。とは言っても、それを考えたところで、僕に答えなんて出るわけない。あとは”母さんの秘伝”頼み、か……。
《母さんの秘伝か……とてもひとりの魔人が書いたとは思えないわ》
今できることは、学校に行ってユッシの言っていた”第3エンマ”という言葉の意味を探ることだけ。それだけでも謎に少しは近づけるはずだ。”第3エンマ”という言葉を、ルネール村の人は誰も知らなかった。母さんやミヤビですら、まだその言葉の意味を知るには、お前には早い、と言っていた。あとは……桜花のことだ。こればかりは悔しいが、澪ちゃんからの連絡を待つしかない。
──翌日、学校に向かった。
登校するなり学校について一通りの説明を受けた。校則やルールなどは日本とそんなに変わらない。違うのは霊界には戦いがある、ということだ。お互いの同意があれば、決闘は可能だし、順位戦なんてものもあるらしい。
「これが君の身分証になる」
手渡されたのは、スマホサイズのタブレット……? 半分に折りたたむことができるので、携帯するには便利な代物だ。スライドやタップで学則や、簡単な個人情報まで確認できる。
「1年生って4クラスまでなんだ。てっきり5クラスあるのかと思ってた」
「君はクラス5だったね。うちは、5組、4組、3組、S組と分かれているんだ。クラスSは、
どや顔で話す校長先生。クラスSへの期待が、ひしひしと伝わってくる。
「まあ君はクラス5だから、そんなに深く考えなくてもいいよ。せめて来年は、クラス4になれるように努力しなさい……じゃあマチコ先生、彼を頼むよ」
この面倒くさそうな顔をしている女性が担任のマチコ先生のようだ。彼女に連れられるまま、僕は教室へと向かった。
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