第9話 メイドさんと土曜日の朝寝坊
「ご、ご主人様!申し訳ございません、寝坊を!あ、昨日の片付けまで……!」
バタバタと起きてきたパジャマ姿のメイドさんが騒ぎ出したのは朝の9時。
土曜朝でこの時間なら早い方だと思うが……俺も彼女が来るまでは昼過ぎまで寝ているなんてザラにあったしな。
じゃがいもを潰す手を止めてキッチンからリビングへ。
「おはようメイドさん。今日休みだから寝坊も何も無いよ」
「それでもご主人様より後に起きるのはちょっとメイドとして許せないというか……」
頭のてっぺんのアホ毛もぴょこぴょこと不満げに揺れている。
「まぁたまにはそういう日があってもいいんじゃない?」
「しかもご主人様、朝ごはんまで作ってるし……私が来るまでは昼まで寝て朝ごはんなんて食べてなかったくせに……」
「おい毎日人を煽らんと生きていけんのか」
デイリーノルマでもあるんじゃないか。
「なんにせすぐに支度しますね!」
そう言い残すと彼女はぴゅっと自室へと引っ込んで行った。あー……こうなると話聞かないんだよなぁ。
さて、彼女がメイドにフォルムチェンジしている間にポテトサラダだけでも作ってしまおう。
薄く切ったキュウリを先程潰したじゃがいもに混ぜ、カニカマを加えて胡椒とマヨネーズを投入、後は混ぜるだけ。
学生の頃はこれ作ってたなぁ……社会人になった今でもたまに食べたくなるのだ。
懐かしさに浸っていると、メイドさんが目の前に現れる。
「はぁはぁ……おまたせいたしました!」
「改めておはよう、メイドさん」
「おはようございます、ご主人様。朝ごはんの準備をおまかせしてしまい申し訳ございませんでした」
「久々に料理して息抜きにもなってよかったよ。あ、インスタントだけどコーンポタージュいる?」
「……いただいても?」
「もちろん」
粉を入れたマグカップに沸かしておいたお湯を注ぐ。とぽとぽと落ちる透明なお湯もすぐに綺麗なもったりとした黄色に変わる。
ゆっくりできる朝は温かいものを飲みたい、そう思えるのも生活リズムが整ったからに他ならない。
朝食のメニューはポテトサラダにロールパン、目玉焼きにコーンポタージュだ。我ながらよくやったな……丁寧なくらしってこんな感じなんだろうか。
「メイドさ〜んお皿運ぶの手伝って〜」
「はーい!言ってくだされば私が全部……!」
「だから今日はいいって。せっかく一緒に住んでるんだし休日くらい楽しよう」
「そう言っていただけると……ありがとうございます、とっても美味しそうです」
「昔よく作ってたんだよね、お口に合えばいいけど」
誰かに自分の料理を食べてもらう機会ってないよなぁ。今更ながら緊張してきた。
何はともあれ朝ごはんだ。いつものように俺たちは向かいに座ると手を合わせた。
「「いただきます!」」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます