生放送

沼津平成はテツこりと相談中です。

第1話 生放送

「液晶画面の奥で、自分を誰かが覗いているのだ」


 そう思いながら聖夜さやは口を開け、声を発している。

 初の生放送。ついさっき聞こえた『現場の羽島さ〜ん』という気の抜けたような声。

 聖夜はその声が聞こえ終わるより先に、現場の状況をつたえ始めた。

 

『今私たちが見ているのは八分前の太陽なのだ。』という雑学があるように、今聖夜が聞いた『羽島さ〜ん』という声は数秒前に宮田アナが発した声なのである。

 

「……町は正月ということで賑わいに溢れていました。現場にお返しします!」


 さっきまで液晶画面に浮かんでいたはずの赤いテロップが消えて、「ういカット!」という声。

 それが終わり、聖夜はため息をつく。そのため息には、さっきまであったいくばくかの緊張は消えていた。安堵のせいだけじゃない。ある意味、演技だったのだ、と聖夜は思った。

 本番はこれからだ——。

 そう言わんばかりに、聖夜は笑みを浮かべた。

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