レンズ越しの幻

第1話


「渚は何組?」



美保は緊張の面もちで話しかけた。


隣りにいる渚はざわめく周囲とは対照的に、極めて落ち着いた表情で前を見据えている。

僅かに目を見開いて、つま先立ちになって前方にある頭から顔を出した。


「えっと……3組?」


「馬鹿。2組。私と同じ組みでしょ」


2人は並んで張り出されたクラス表を見ていた。


新しい春。

新しいクラス。

新しいスタート。


同じ中学だった渚と美保は、2年目にしてようやく同じクラスになった。


「本当近眼過ぎてひくわぁ」


やっと自分達のクラスの場所を確認すると、喧騒から離れる様に2人は新しい教室に向かった。


渚は美保を見やった。

その明るい髪が窓からの光に透かされて発光しているように輝いている。


偏差値もあまり高くない八田高校。

1年前の入学式の時、やっぱりと言うべきか風体の悪い奴らをたくさん見かけた。

中学からの友人が美保しかいない渚は大人びた雰囲気から「緊張してなさそうじゃん」とその当時言われたが、実際は違い緊張に凝り固まって頭痛すらしていた。


新しい環境には何時になっても慣れない。

友人が別のクラスになれば尚更の事だ。

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