手のひらの世界

第1話

客に乞(こ)われて28インチのハイビジョンテレビを買ったのは昨日の事。



家電量販店で見た時はまあまあ小さめで手頃なサイズだと思って購入したけれど、職場に入れたらどうした事か。

梱包を解いて設置すると、量販店でのイメージは呆気なく打ち崩された。


十五畳ほどの殺伐とした場所にこれでもかと存在感を示されてタクは思わずうなだれた。



ただでさえ物が多くて窮屈な職場が更に息苦しく感じてくる。



タクはモルタル打ちの上に三畳ほど敷いた畳みに胡坐を掻いて、テレビを真っ直ぐ見つめた。



『午前五時ごろ東京港区の路上で……』



しかも画面を流れる情報はどうでもいい物。



「関係ねえな」



タクは煙草に火をつけるとゴム手袋をはめた。

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